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何歳になっても成長できる!
行動技術による自分の「伸ばし方」

vol.2

小さな取り組みからスタートすると「三日坊主」は解消できる!

いきなり高めのハードルを設定するのは禁物

「何かにチャレンジしても、いつも長続きしない」という悩みを抱えている人は多いものです。前回は、その解決策として目標を明確に定め、そこにたどり着くまでの時間をきちんと計測してから行動することを提案しました。

まずは、「英語が上達したい」といった漠然とした願望ではなく、「2年以内にTOEIC800点以上を取る」といった具体的な目標を掲げること。そして、そこに至るまでの日数をブレークダウンして、「1日30分ずつ勉強する」「テキストを毎日10ページずつ終わらせる」といった“小さな目標”を設定し、着実にクリアしていくことが大切です。

ところが、実際に始めてみると、最初の1日、2日で早くも息切れしてしまい、3日目ごろには「これじゃ続かない」と、あっさりギブアップしてしまう人も少なくありません。

文字通りの“三日坊主”ですが、どうして長続きしなくなってしまうのでしょうか?

考えられる原因のひとつは、“1日当たりの目標”のハードルが高すぎることです。

たとえば、受験勉強以来、机に向かって勉強することから遠ざかっていた人が、いきなり「1日30ページずつテキストをこなす」という日課に挑んだとしても、頭や身体、そして何よりも気持ちが、思うようについていかないのではないでしょうか?

行動科学の研究では、「そもそも人間は、急激な行動の変化にはついていけない生き物である」ということが明らかになっています。

“1日当たりの目標”を設定するにしても、頭や身体が慣れるまでは無理のないレベルにとどめ、慣れるに従って少しずつハードルを上げていくことが大切なのです。

ハードル高すぎない!? 無理なく続けるためのちょっとしたコツ

まったく走ったことがないのに半年でフルマラソンを完走

私個人の体験をお話ししましょう。ある雑誌の企画にかかわったことをきっかけに、45歳でフルマラソンに挑戦することになりました。学校を卒業して以来、走ることから遠ざかっていたのですが、半年後に42.195キロを完走するという目標を掲げたのです。

もちろん最初のうちは、まったく「走れる身体」ではありませんでした。そこで1カ月目は、とにかく「歩く」ことに専念しました。週に2回、朝晩10分ずつ散歩をすることから始めたのです。

そこから少しずつ走る時間を増やし、距離を長くしていくことで徐々に身体を慣らし、4カ月目にはハーフマラソン、6カ月目には目標のフルマラソンが走れるようになりました。

このように「小さな目標」から始めて、徐々にレベルを上げていくことが、勉強や自己研鑽を長続きさせ、目標を達成するための秘訣なのです。

ちなみにこの秘訣は、会社で部下や後輩を指導する管理職の方々も、覚えておいて損はないと思います。部下を早く一人前にするために、最初から難易度の高い仕事や過大なノルマを与える管理職の方もいらっしゃいますが、すべての部下がついていけるわけではありません。

仕事の負荷への耐性を見極めたうえで、あまり無理をさせないほうがいいと思った部下には、なるべく小さな仕事やクリアしやすい目標を与え、「成功体験」を味わってもらいながら、少しずつレベルを上げていったほうがいいでしょう。

これは、近年多くの企業が悩んでいる高い離職率を下げ、社員一人ひとりのパフォーマンスを上げるためにも有効な方法です。

このように、私が提唱する行動科学マネジメントは、個々の人材の成長を促すだけでなく、その名のとおり人材を上手にマネジメントして、ビジネスを成功させることに役立ちます。

3カ月間続けると行動は習慣化する

行動科学の研究では、「人間は同じ行動を3カ月間続けると、習慣化する確率が高い」ということも明らかになっています。

初動でつまずくことなく、勉強や自己研鑽を3カ月間続けることができれば、その後も長続きする可能性が高いということです。

言い換えれば、最初の3カ月間をいかに乗り越えられるかが、勉強や仕事の最終目標を達成するために重要なカギとなります。この期間は、極力無理のない範囲で“1日の目標”を設定し、長続きさせることに専念したほうがいいでしょう。

また、成果が少しずつ上がってくると、「やればできるんだ」という達成感や自己肯定感が高まり、「もっとやりたい」と思うようになります。「何かをしなければならない」(Have to)という強迫観念からではなく、「何かをしたい」(Want to)という欲求から行動することが、目標に到達するための大きな力となるのです。

次回は、「Have to」を「Want to」に変えるヒントについて、より詳しく解説します。

“伸ばし方”のポイント

「三日坊主」にならないように
最初の3カ月間のハードルは
なるべく下げる

PROFILE

石田 淳いしだ・じゅん
株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者。社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事。アメリカの行動分析学会ABAI会員。日本行動分析学会会員。日本ペンクラブ会員。日経BP主催『課長塾』講師。米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立。執筆活動や講演・セミナーを精力的に行う。

記事公開:2019年8月