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何歳になっても成長できる!
行動技術による自分の「伸ばし方」

vol.4

楽しくなる仕組みを作ると「もっと続けたい」と思えるようになる。

なぜ人はゲームに夢中になるのか?

街を歩いていると、電車や喫茶店の中でスマートフォンを夢中で操作している人をよく見かけます。SNSやゲームを楽しんでいる人たちです。私自身はまったくゲームをやらないので、その楽しさを体験していませんが、なぜ人がゲームに夢中になるのかについては、行動科学の観点から説明できます。

人気の高いスマホゲームの多くは、「何かを集める」とか「何かをするとポイントがたまる」仕組みになっています。なぜなら、人間は「集める」「ためる」といった行為に夢中になりやすい心理を持っているからです。

あるゲーム開発会社の方から聞いた話ですが、どんなに面白いゲームでも、一定のステージをクリアすると、飽きてしまって離脱する人が増えるそうです。開発会社は、長年のリサーチによって「どのあたりのステージで離脱しそうか?」というポイントをあらかじめ把握しているため、そのステージが終了すると無料でボーナスポイントが提供されるといった仕掛けを用意するのです。思わぬボーナスポイントを手にすることで、「もう少しやってみたい」という気持ちが高まり、離脱を減らすことができるのだそうです。

飽きっぽい人でも続けられる!? スマホゲームに学ぶ、つい夢中になってしまう仕掛け作り

自分にごほうびを与えると行動が持続しやすくなる

この「集める」「ためる」という行為に夢中になりやすい人間心理を応用すると、「何をやっても中途半端で終わってしまう」と悩んでいる人でも、勉強や自己研鑽を長続きさせられるようになるかもしれません。

TOEICの勉強であれば、覚えた英単語の数や、こなした練習問題の数などをグラフ化してみるのもひとつの方法です。これらの数は、勉強をすればするほど増えていくので、グラフはどんどん右肩上がりになります。「ここまでやったんだ」という成果が“見える化”するわけです。
右肩上がりのグラフを見ていると、ゲームでポイントをためるのと同じように、思わず楽しくなってきます。その結果、「もっとグラフを伸ばそう」という気持ちが高まって、勉強や自己研鑽が長続きしやすくなるのです。

もちろん、覚えた英単語の数や、こなした練習問題の数が増えたからといって、TOEICで高得点が取れるという保証はありません。つまり、最終的なゴールにたどり着けるとは限らないわけですが、少なくともゴールに向かって「勉強を続ける」という行動そのものは持続できます。途中で放り出してしまっては元も子もありません。いかに「行動を持続させる仕掛け」を作るかが重要なのです。持続さえできれば、結果は必ず後からついてくるはずです。

スマホゲームの仕掛けを応用して、一定のポイントがたまったら、物理的なごほうびを自分に与えるという方法もあります。例えば、「1日5分間、3つの英単語を覚えて、100を超えたら好きな映画を見に行ける」といったルールを設定します。ごほうびは、映画でも食事でも、自分がワクワクするものなら何でもかまいません。
行動科学では、ある行動を増やす働きかけをすることを「行動強化」といいます。自分にごほうびを与えることは、行動強化のひとつです。

上司による承認が行動をさらに長続きさせる

部下や後輩を指導する立場の人であれば、営業活動や自己研鑽などを継続させたいときにグラフ化を利用してみるといいでしょう。そのときに大切なのは、必ず結果が右肩上がりになる「累積グラフ」を使用することです。

営業活動であれば、アポイント件数、交換した名刺の数、セミナーやイベントに誘導できたお客さまの数などをグラフ化していきます。その際、グラフを週次や月次で区切っていったんゼロに戻すのではなく、どんどん累積していくのです。その結果、グラフは目に見えて右肩上がりとなり、部下や後輩は視覚的に達成感を得られるようになります。

ここで重要なのは、グラフが一定のレベルを超えたところで、きちんとほめてあげることです。「行動の見える化」(グラフ化)と「承認」がセットになると、部下や後輩たちは、ますます「もっと続けてみよう」と思うようになります。ちなみに、部下や後輩をほめるときには、成果を上げたときにすぐにほめるのが効果的です。時間が経ってから「あのときはよくやった」と言われても、人間はあまりうれしさを感じません。逆に、成果が上がった時点でタイムリーにほめると、「もっと続けてみよう」という気持ちがますます強くなります。行動科学では、これを「即時強化」と呼んでいます。

自分で自分の行動を継続させるときにも、グラフなどを作って成果を“見える化”するのが有効です。簡単なやり方としては、カレンダーに行動記録を付ける方法もあります。 1日1日の予定どおりに勉強や自己研鑽が終わったら、カレンダーに丸を付けたり、シールを貼ったりするのです。丸やシールがどんどん増えることで達成感が得られ、「もっと増やしてみたい」という気持ちが高まります。
あまりにも単純だと思うかもしれませんが、想像以上の効果があるので、ぜひ試してみてください。

“伸ばし方”のポイント

行動の成果をグラフ化すると、
「もっと伸ばしたい」と思って長続きしやすくなる

PROFILE

石田 淳いしだ・じゅん
株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者。社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事。アメリカの行動分析学会ABAI会員。日本行動分析学会会員。日本ペンクラブ会員。日経BP主催『課長塾』講師。米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立。執筆活動や講演・セミナーを精力的に行う。

記事公開:2019年11月