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何歳になっても成長できる!
行動技術による自分の「伸ばし方」

vol.8

本番で実力を発揮できない人は
平常心を身につけるトレーニングを!

実力を発揮できるように心の準備も進めておく

勉強や自己研さんをしっかりと重ねているのに、いざ本番となると、場の雰囲気や相手の表情にのまれて、本来の実力を発揮できなくなるという人がいます。

試験会場でいざ解答用紙に向かったら、頭が真っ白になり、答えが一つも思い浮かばなくなってしまったとか、大事なプレゼンテーションのために周到な準備を行ってきたのに、参加者からじっと見つめられておじけづいてしまい、説明がしどろもどろになってしまったといった経験をお持ちの方は、少なからずいらっしゃるはずです。

あるいは、商品やサービスの魅力は一生懸命勉強しているのに、お客さまを目の前にすると思ったように落ち着いて説明できず、営業成績が上がらないと悩んでいる方もいらっしゃることでしょう。

どんなに実力をつけても、本番できちんと発揮できないのでは意味がありません。仕事や勉強の成果を上げるためには、心の準備も進めておくことが大切です。

ここぞという場面で力を出し切れない……。平常心を身につけるための秘訣とは!?

平常心は訓練しないと身につかない

行動科学に基づく心理療法の一つに、「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」というものがあります。分かりやすく言うと、「自分の感情を平常心に近くする療法」です。

本番で実力を発揮できないのは、「間違えたらどうしよう」「失敗したらどうしよう」といった不安や恐怖心が高まってしまうからです。人間には個人差があるので、どんな状況でも常に平常心を保って実力を発揮できる人もいますが、そうでない人は、不安定になった感情を平常心に近づける訓練をしなければ、仕事や勉強の成果を上げることは難しくなります。

日常的にできる簡単な訓練の一つとして、私がお勧めしているのは、以下のような方法です。

  1. 右手首に20本ほどの輪ゴムをはめておく。
  2. 不安や恐怖を感じたら、輪ゴムを1本外して左手首にはめる。これを1日続ける。
  3. 1日が終わったら、左手首に輪ゴムが何本はまっているかを数え、毎日記録する。

これは、自分が普段の生活のなかで、どれだけ不安や恐怖を感じているのかを“見える化”するための作業です。

言うまでもなく、左手首にはめかえた輪ゴムの本数が多い人ほど、平常心を保ちにくい心理状態であることが分かります。これを1本ずつでも減らしていくことが、どんな状況でも平常心を保てるような状態にしていく訓練になるのです。

不安や恐怖を感じたら、輪ゴムをはめかえると同時に、仕事や勉強の手をいったん止めて、深呼吸をしたり、好きな音楽をちょっとだけ聴いたりしてみましょう。

一般に不安や恐怖といったマイナスの感情は、それほど長続きはしません。普通なら30秒もあれば消えてしまうものです。深呼吸などのちょっとした気分転換をすれば、よりスムーズに平常心に戻れるはずです。

これを毎日繰り返して、左手首にはめかえた輪ゴムの本数がどれだけ減っていくかを計測します。10本だったものが、5本、3本……と目に見えて減っていくようであれば、しめたものです。

体を鍛えるのと同じように、心の鍛錬も一朝一夕にはできません。本番で平常心を保てるようにするためには、普段からの訓練が不可欠なのです。

セルフマネジメントができる人は仕事でも高く評価される

「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」は、不安や恐怖心だけでなく、怒りやイライラといった感情を抑えるためにも有効です。

何かにつけ怒りを感じる人や、ささいなことでもついイライラしてしまう人は、部下や後輩などを怒鳴り散らしたり、お客さまに不快な印象を与えたりしてしまうことがあるので、どんなに仕事ができても、評価が下がってしまう可能性があります。

先ほど紹介した輪ゴムによる訓練は、怒りやイライラを抑えて平常心に戻すことにも応用できますので、ぜひ試してみてください。

“伸ばし方”のポイント

実力を発揮して成果を上げるためには
平常心を保てるようにすることも大切
日ごろから少しずつ訓練を

PROFILE

石田 淳いしだ・じゅん
株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者。社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事。アメリカの行動分析学会ABAI会員。日本行動分析学会会員。日本ペンクラブ会員。日経BP主催『課長塾』講師。米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立。執筆活動や講演・セミナーを精力的に行う。

記事公開:2020年5月