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何歳になっても成長できる!
行動技術による自分の「伸ばし方」

vol.9

自分の弱点を探り出す「行動分解」のすすめ。

行動を箇条書きしてどこに問題があるのかを探る

この連載で何度も書いてきたように、営業成績が上がらないとか、勉強をしてもなかなか知識が身に付かないというのは、「やり方」に問題があるケースが多いものです。

どんなに時間をかけて自己研鑽や勉強を重ねても、「間違ったやり方」では、効率よく力が身に付くはずはありません。言い換えれば、自分のやり方を客観的に見つめ直して、どこに問題があるのかを突き止めることが、能力を効率よく伸ばすための早道となるわけです。

行動科学マネジメントでは、自分のやり方を客観的に見つめ直す方法として、「行動分解」という方法を重要視しています。

仕事や勉強における“一連の行動”を一つひとつ分解して、どこに問題があるのかを探るのです。

例えば、私たちは「ペットボトルの水を飲む」ことを一つの行動だと思っていますが、行動分解してみると、以下のように、小さな行動の積み重ねによってペットボトルの水を飲んでいることが分かります。

  1. ペットボトルを片手でつかむ
  2. もう一方の手をフタの部分に近づける
  3. フタをつかむ
  4. フタをひねる
  5. フタを開ける
  6. ペットボトルを口に近づける
  7. 飲み口を唇にあてる
  8. ペットボトルのお尻を持ち上げる
  9. 水を口の中に流し込む
  10. 水を飲み込む

同じように、仕事や勉強も“一連の行動”によって成り立っています。それらの動きを一つひとつ箇条書きにしてみて、どこに問題があるのかを探り出してみるのです。

「ペットボトルの水を飲む」は一つの行動ではない! 自分の問題点を探り出す行動分解とは!?

見つけ出した弱点を克服すれば、すべてがうまく回り出すことも

「営業成績が思うように上がらない」と悩んでいるのであれば、営業活動のプロセスを次のように分解してみてはどうでしょうか。

  1. 見込み客のリストアップ
  2. アポイントの電話を入れる
  3. 最初の訪問
  4. リピート訪問
  5. クロージング
  6. 成約後のアフターフォロー

このように行動を分解すると、個々の行動における問題点を、よりミクロに分析できるようになります。

例えば、見込み客をリストアップする時点でターゲットを見誤っているのではないか。アポイントの電話を入れるときに、言葉足らずで相手の心をしっかりつかめていないのではないか。最初の訪問からいきなり商品やサービスの話をするので、相手に興ざめされてしまうのではないか……といった自分の弱点が見えてくるわけです。

小さな行動の積み重ねによって成立しているものを“一つの行動”として大雑把にとらえてしまうと、どこに弱点が潜んでいるのか見えなくなるものです。見つけ出した弱点を克服するだけで、一連の行動のすべてがうまく回り出すこともあるので、ぜひ、試してみてください。

自分にとって正しい行動かどうかは、数値をもとに科学的に判定する

ところで、どこに弱点があるのかを発見できたとしても、それをどう克服したらいいのかと悩んでしまう人もいるはずです。

手っ取り早いのは、入門書などを読んで「上手なやり方」のヒントを探ることでしょう。営業成績を上げたいというのであれば、ひとまずその道のプロが書いた入門書を10冊ほど購入して、そこに書かれている内容の中から「自分に合っている」と思う行動をいろいろ試してみるのがいいと思います。

もちろん、その本に書かれているやり方が、必ずしも「自分に合っている」とは限りません。いろいろ試す中で、どれが自分にフィットしているのかを探ってみるのです。

ただし、「なんとなく合っている」とか「ラクにこなせる」といった感覚的な判断で行動を選択することはお勧めできません。その行動によって、どれだけ成果が上がったのかということを数値でしっかりと計測し、科学的に効果を判定することが大切です。

営業であれば、行動の変化によって、どれだけ成績が上がったのかということが如実に数字に表れますし、勉強でも、模擬試験などの成績という結果が「自分にとって正しい行動だったのかどうか?」を証明してくれるものです。

1か月たっても成果が上がらない場合は、次のやり方を試し、それを繰り返すことで自分に合った「正しい行動」を見つけてみましょう。

“伸ばし方”のポイント

小さな行動の積み重ねで成り立っているものは、一つひとつの行動に分解して弱点を浮き彫りにする

PROFILE

石田 淳いしだ・じゅん
株式会社ウィルPMインターナショナル代表取締役社長兼最高経営責任者。社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事。アメリカの行動分析学会ABAI会員。日本行動分析学会会員。日本ペンクラブ会員。日経BP主催『課長塾』講師。米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立。執筆活動や講演・セミナーを精力的に行う。

記事公開:2020年7月