常に相手をよく観察して真の性格を見極める
部下や後輩に同じ内容の話をしたにもかかわらず、一方はしぶしぶ、一方は快く承諾。そんな経験はありませんか?
実は同じ内容を伝えるときでも、相手の性格に合わせて話し方を変えることで、より自分の考えが伝わりやすくなります。そこで、今回は話し方のテクニックの一つとして、聞き手の性格に応じた話し方について解説します。
聞き手の性格に応じた話し方をするためには、まずその性格を知る必要があります。しかし十人十色というように、人の性格は実にさまざま。加えて仕事と私生活で、性格が変わる人もいます。仕事では快活でよく話す人が、私生活では物静かという話を耳にすることがあります。職場では大胆な振る舞いの人でも、他人に弱みを見せないために虚勢を張っているだけで、実は繊細な性格ということもあります。性格に応じた話し方をする場合は、あくまで相手の真の性格を意識しなければいけません。
とはいえ、私生活でも親しい場合を除いて、部下や後輩の真の性格を知るのは、とても難しいことです。まずは、仕事上での表面的な性格に合わせて話すことから始めましょう。ただし、それはあくまで表面的な性格です。相手との付き合いが長くなるにつれて、その言動を注意深く観察していれば、少しずつ真の性格が見えてくるはずです。自分の中で認識している相手の性格は、付き合いの長さに応じて、常に更新することを心掛けてください。付き合いが短いにもかかわらず、表面的な性格を基に「この人はこういう性格だから、こういう話し方をしよう」などと決めてしまうと、知らない間に相手に大きなストレスを与えることになりかねないので注意しましょう。
「性格」を意識することで、より真意が伝わりやすくなる
仕事を進めやすい「社交型」と準備が必要な「非社交型」
仕事に関わる性格を考えたときに、大きく分けるとまず社交型と非社交型があります。社交型は、陽気で常識的、協調性がある一方で、熟慮していない場合もあり、自立心が乏しいため他人への依存が強い傾向があります。良好な関係を築きやすく、議論がまとまりやすいので、仕事は進めやすいでしょう。率直な言い方でも許容されやすく、関係が深まるにつれて気軽に話しても問題ありません。ただし、あまり考えずに話を聞いていることがあり、自分の考えが十分に伝わっていない可能性があるので気を付けてください。
一方、非社交型は、自立心が強く、物言いがストレートで、人の好き嫌いが明確である場合が多くなります。そのため、時間をかけて人間関係を構築する必要があり、不用意に踏み込んだ発言をすると気分を害してしまう恐れもあります。相手の自尊心に十分配慮して、言葉遣いにも気を付けながら話をすることを心掛けてください。関係を築く過程で相手の興味や趣味、信条などを把握して、それをうまく話に取り入れると良いでしょう。話をするときには、十分に準備をして臨んだ方が良い結果を得やすくなります。
簡潔明瞭な話を好む「論理型」とキーワードが重要な「直感型」
仕事に関わる性格では、論理型か直感型かという点でも大別できます。論理型は、物事を順序立てて考え、話すときも聞くときも内容を整理する傾向が強くなります。感情的な表現を好まないため、話をするときは事実に基づいた内容になるように意識してください。曖昧な表現も嫌うので、避けましょう。論理型の中には、議論することで物事がより良い方向へ進むと考える人がいます。そのため、話の詰めが甘いと追及してきたり、こちらの意見に反論してきたりすることもあります。論理型と話をするときは、議論にならないように目的を意識して手短にまとめ、よく分かっていないことは話さないようにしましょう。
直感型は、感受性が強く、自分に正直な人です。良くも悪くも感情の振れ幅が大きく、感情が表情に出やすいので分かりやすい反面、感情のスイッチが入るポイントが分かりづらく、ある一言をきっかけに突然怒り出すこともあります。直感型には、人それぞれに反応する話題やキーワードがあります。相手をよく観察して、その話題やキーワードを事前にできるだけは把握しておきましょう。論理よりも感情が優先され、好きか嫌いかという基準で判断される場合もあります。話の中に相手が好むキーワードを差し込むことで、良い結果を得やすくなるはずです。
相手の今の性格を把握するために人間関係を維持する
上記以外の性格では、几帳面で誠実な一方、頑固な「生真面目型」や、アピール力やリーダシップがある反面、わがままで自尊心が強い「自己顕示型」などもあります。生真面目型は、言葉遣いや態度、表情に加えて、服装やマナーなどにも気を付けてください。生真面目型の人は、自分の中に厳格なルールを持っており、他人であってもそこから逸脱することを認めません。良好な関係を築いたとしても、油断は禁物です。自己顕示型は、相手の自尊心をくすぐるように話すことを心掛けましょう。ただし、お世辞を並べ立てるのではなく、伝えたいことはしっかりと筋が通った論理で話すようにしてください。
少し変わったところでは、好き嫌いや興味の有無、聞く・聞かないなどがはっきりした「デジタル型」というものもあります。このタイプは、言葉を額面どおりに受け取り、その裏にある真意を読み取ろうとしない傾向があります。言葉の選択に配慮し、どういう意図でその言葉を使っているのかを説明しながら、じっくりと話すようにしましょう。
今回は、仕事に関わる性格を、7つのタイプに分けて取り上げました。しかし、この7タイプの1つだけにぴったりと当てはまるという人は、まずいません。人の性格は、この中の2つ以上が合わさっていることがほとんどです。また、仕事上の性格に関していえば、同じ人でも立場や年齢などによって変わっていく場合もあります。ビジネスの場では、常に相手の現在の性格を把握できるように人間関係を維持しつつ、それに応じた話し方をすることが求められているのです。