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仕事がうまくいく「話し方」のコツ

ビジネスシーンで役立つ話し方のコツをケース別にご紹介します。

vol.13 年上の部下と平成世代の部下を指導する
現代の上司に求められる話し方とは?

年上の部下には“人生の先輩”と捉えて接することが大切

より良い職場を求めての転職が一般的になった現在、自分より年上の部下が中途採用で入社してくることも珍しくはなくなりました。しかし、お互いにある程度心構えをしているとはいえ、実際に一緒に働くとなると、年上の部下は接し方が難しい場合があります。一方、平成生まれの世代が部下になった場合は、昭和生まれの世代とは価値観が異なるため、対応に苦労することも。いつの時代も部下を指導するのは難しいことですが、現代の管理職には昭和世代の年上と平成世代の両方を部下として、上手にマネジメントすることが求められます。そこで今回は、それぞれの部下と話をするときに、意識しておきたいポイントについて解説します。

まず年上の部下と話すときは、“相手の自尊心を守る”ということを“強く”意識する必要があります。これはvol.11の効果的な部下の叱り方でも挙げましたが、年上の部下と話すときは、叱るときに限らずそのことを常に心掛けるようにしてください。自分では特に偉そうにしたつもりがなくても、ちょっとした言葉遣いが相手の反感を買ってしまうこともあります。部下であっても、あくまで“人生の先輩”に対する態度で接するようにしましょう。

年上の部下に気持ちよく働いてもらうためには言い方を工夫する

年上であっても部下である以上、指示や忠告はもちろん、状況によっては注意をしなければなりません。このとき気をつけたいのが、言い方です。何か仕事を指示する場合、単に「~をやってください」だけでは、相手が反発心を抱く可能性があります。「○○さんのキャリアを考えると恐縮ですが、この仕事を手伝っていただけませんか?」といったように、少し表現を工夫することで相手の自尊心をくすぐり、気持ちよく働いてくれるでしょう。

また、人は経験豊富になると、報告を怠る傾向があります。進捗状況などの報告が欲しいときに、率直に「あの仕事はどうなっています?」と聞いてしまうと、「私のことを信用していないのか」などと怒り出すかもしれません。この場合は、タイミングを見計らって「この前お願いした仕事で、何か問題があれば遠慮なく教えてください」と相手を気遣う聞き方をすれば、何らかの報告があるはずです。もし既に終わっていたとしても「終わったら、報告してください」ではなく、「もう終わっていましたか。さすがですね」と言い方を変えれば、相手は悪い気はしないでしょう。「さすが」は、本来は目上の人に使う言葉ではありませんが、相手の力を認めているという前提で使う表現でもあります。多用は禁物ですが、状況に応じて適切に使えば、年上の部下の自尊心が満たされます。

「“可愛げがある上司”だから応援したい」という気持ちにさせるのが理想

「いくら年上とはいえ、部下にそこまで気を使って話をする必要があるのだろうか?」という気持ちはもっともです。しかし、部下が十分に働いてくれなければ、結局は上司である自分が苦労することになり、管理職としての評価にも影響します。そこで、年上の部下に対しては、上司という立場を上下関係ではなく、部下を監督する役割として捉えるようにしましょう。部下にまで言い方に気を使うのは大変ですが、それで部下がしっかりと働いてくれれば、監督者としての責任を果たせます。また、上司を役割だと考えれば、たとえ人生の先輩であっても、忠告や注意などが必要な場合にはしっかりと言えるはず。もちろん部下を人生の先輩と意識し過ぎて上司の役割を果たせなければ、甘く見られてしまうので注意してください。

一方で、いつまでも部下に気を使って話をしているのは、ただでさえ多くの仕事を抱えている上司にとって大きな負担。そこで年上の部下を持ったときは、できるだけ早い時期に良好な関係を築くようにしましょう。もちろん相手の性格を考慮しながら接していく必要はありますが、自ら働きかければ、相手も心を開いてくれるはず。一度良好な関係を築いてしまえば、些細な言葉遣いにまで注意しなくてもよくなります。相手は、上司が年下ということを必ず意識しています。そのため、自分は上司ではなく人生の後輩として年上の部下を頼りにしているという態度を示せば、「可愛げがある上司だから、応援してやろう」という気持ちになってくれるでしょう。

平成世代の部下には丁寧に説明して十分にフォローする姿勢が必要

平成世代は、会社の将来を担う大切な戦力として育てなければいけません。この世代は、叱られることに慣れていないため、やる気を失わないように、基本的には褒めて伸ばす必要があります。ところが、メールやSNSの進化により、他人と直接会話する機会が少なかったため、直接的なコミュニケーションを苦手にする傾向があり、褒めてもあまり反応を示しません。逆に叱られても淡々としているので、気にしていないのかと思っていたら、実はストレスを感じていて、ある日突然退職ということもありえます。

昭和世代にとって、平成世代は他人への関心が薄く、感情表現も乏しく感じられることがありますが、実際はしっかりと他人を見ており、話もよく聞いています。平成世代の部下を育てるためには、ただチャンスを与えるだけでなく、仕事の内容や目的などを丁寧に説明した上で、何か困っているように見えたら声をかけるなど十分にフォローするようにしましょう。また、丁寧に説明しても、言葉の意味自体を理解していないこともあるので、正確に理解しているか確認することも重要です。これも上司にとって大きな負担になりますが、平成世代の部下に対して「しっかり面倒を見る」という姿勢を示すことが、大きな意味を持ちます。

世代間の言葉のギャップ

世代によって、同じ言葉でもイメージするものは異なります。
言葉の意味を正しく理解しているかをしっかり確認しましょう。

若い頃に上司から大した説明もなく「やれ」と命令され、教えてもらおうとしても「ここは学校じゃない。自分で考えろ」と言われ、失敗すると厳しく叱責された昭和世代は、歯がゆい思いをするかもしれません。それでも、部下を育てるという強い信念を持ち、さまざまなタイプの部下をマネジメントすることは自分にとって良い経験になると信じて、寛容と忍耐で部下と話をすることが現代の上司に求められているのです。もちろん今も昔も、放っておいても自力で成長していく人はいます。その他の人をどう育てるかが、上司としての腕の見せどころと言えるのではないでしょうか。

PROFILE

永田 豊志
秋田 義一あきた・よしかず
一般社団法人話力総合研究所理事長。話し方、聴き方、ビジネスコミュニケーション、人間関係等に関する研修や講演を担当。また、話力インストラクターの教育指導にあたる。国士舘大学理工学部講師(非常勤)、産業能率大学マネジメントスクール講師。霞が関ナレッジスクェアアドバイザリメンバ。公益社団法人 日本技術士会 防災支援委員会 委員 兼 千葉県支部幹事。千葉県東葛テクノプラザ技術相談員などを歴任。

記事公開:2019年3月