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仕事がうまくいく「話し方」のコツ

ビジネスシーンで役立つ話し方のコツをケース別にご紹介します。

vol.14 大きなチャンスを逃さない
「周囲を巻き込む話し方」とは?

大勢の人を巻き込むためには、「聞き手を分析して方針を立てる」

IT企業のカリスマ経営者のプレゼンテーションを見て「自分もあんなふうに人を惹きつける話し方ができたらなぁ……」と思ったことはありませんか? 準備万端で会議やプレゼンテーションに臨んだにもかかわらず、思ったほど反応が良くなかった……。そんな経験は誰もが一度はあるはず。提案する内容が良いにもかかわらず、話し方によって熱意が相手に伝わらず、成果に結び付かないこともあります。大きなチャンスを逃さないために、人を巻き込む話し方のポイントを紹介します。

人を巻き込む話し方には、「説得力がある内容」と、「力強い表現」という2つが鍵になります。一方で、これまで何度か紹介したように、話の効果は相手が決めます。同じ話し方をしても、聞き手によって受け取り方は変わってきます。そのため会議やプレゼンテーションのように大勢の人を相手に話をする場合は、まず聴衆全員の立場や年齢、目的などをできる限り分析することが重要です。その上で、自分が話そうとしている内容は、どの層を巻き込みたいのかを把握して、その層に最も響く話し方を心掛ける必要があります。もし、立場や年齢などにかかわらず、できるだけ多くの人を巻き込みたいのであれば、聴衆の最大公約数が受け入れやすい話し方をしましょう。ただし、そのときは各個人に対する影響力は弱くなります。狙いを絞って深く切り込むのか、的を広げて平均化した内容にするのかといった方針を立てることも、大勢の人を相手に話をするときのポイントと言えるでしょう。

話の説得力を高めるのは、「具体性」「自分の理解」「メリハリ」

話の内容に説得力を持たせるためには、次の3つの点に注意してください。まず、「具体的にすること」です。自分の経験や、誰もが納得できるような例を挙げると、相手は話を理解しやすくなります。また、大勢を相手にするとはいえ、せっかく同じ空間で対面しているのですから、話=聴覚だけでなく、視覚に訴えることも効果的。資料を配布したり、プレゼンテーションソフトで大画面を使ったりして、写真や図表を使用して話をすると、説得力が高まります。さらに、話の論理性を確保することや、著名人の言葉や報道などを引用することによっても、聞き手の心を刺激することができます。

2つ目のポイントは、「自分自身が十分に理解、納得していること」です。自分がよく分かっていないことやあまり信じていないことを話すと、それは必ず相手に伝わります。自分が十分に理解できているかどうかを確かめる方法として、一度文章にしてみるのがおすすめです。理解できていないことは文章にできませんし、出来上がったものを読むと、話の中で伝わりにくい部分を客観的に把握することができます。文章にしながら、より伝わりやすいように表現などを工夫すると、実際に話すときの説得力が増します。そうして作った文章は、当日配布する資料にも流用できるので一石二鳥です。

第3のポイントは、「メリハリをつけること」です。伝えたいことをあれこれ詰め込み過ぎると、単に情報の羅列になってしまい、何が本当に大切なのか聴衆は分からなくなってしまいます。あえてさらっと聞き流せるような話を入れて谷間を作ることで、本当に伝えたい内容を引き立てることができます。場合によっては、相手が話を飲み込みやすくなるように一呼吸間を空けたり、「ここが一番大切な部分です」などと前置きしたりしてもよいでしょう。

力強い話し方に必要なのは、意気込みを示すこととさまざまな強調表現

話の内容に説得力を持たせることができたら、その効果をより高めるのが「力強い表現」です。力強い表現にするためには、まず語勢を強くすることです。「必ず~」「間違いなく~」などと断定すると、話に迫力が出ます。もちろんビジネスには、何らかのリスクが付きものですが、言い切ることで覚悟と決意が伝わります。また、聞き手は、自信の表れと受け取り、納得しやすくなるでしょう。意気込みの強さを示すことは、そのまま力強い表現につながります。特にリーダーには、語勢が強い話し方がとても重要です。そうした話し方が苦手という人は、「リーダーの役割を演じる」という心構えを持つとよいでしょう。演出や演技も、話の効果を上げるポイントの1つになるのです。

特に強調したい部分に関しては、さまざまな表現方法があります。中でも「全体化の現象」「日付無視の現象」「二値的評価の現象」を逆手にとって意識的に使うことは、この場合有効です。全体化の現象と日付無視の現象とは、一部例外があったとしてもそれには目をつぶり、「みんなが~」「いつも~」などと表現することです。二値的評価の現象とは、任意の物事を二項対立の状況に置き換える方法です。例えば、「この計画は●●の点で失敗するかもしれないが、もう一方の計画なら●●をクリアしており、成功する可能性が高い」などという表現が該当します。ただし、これらの方法は、行き過ぎると誇張表現になり、誤解を与えかねませんので気をつけてください。

これらの他にも、強調したい内容は短い文で話す、あえて同じ内容を繰り返す、印象に残るキーワードを用意する、といった方法もあります。強調したい部分は、ほんの少し声を大きくするだけでも、話の内容と同様にメリハリがついて、聞き手を刺激するはずです。これらを巧みに使い分けることで、聞き手を惹きつける力強い話し方になります。

■ 説得力を高める強調表現の例

根回しは話の効果を上げるテクニックの1つ。過剰な演出はNG

人を巻き込むということに関しては、もう1つ大きなポイントがあります。それは、「影響力がある人を味方にする」ということです。社内での会議やプレゼンテーションの場合、聴衆の中で影響力が強い人から事前に了承を得ておくと、その他の聴衆からも賛同を得やすくなるはずです。話し方とは少しそれますが、これも話の効果を高めるテクニックと言えるでしょう。

演出や演技は、話の効果を上げるポイントになると前述しましたが、大勢の人を相手に話すときは、あまり型破りなことは避けた方が賢明です。型破りということは、必ず賛否両論を生みます。聴衆の中に反対意見を持つ人が多かったり、影響力がある人が強力に反対したりすると、思い通りに事が運ばなくなることもあります。冒頭のカリスマ経営者のプレゼンテーションに関しても、ステージ上を歩き回りながら話をするスタイルは今では珍しいことではなくなりましたが、当初は違和感を持った人が少なくなかったはず。あくまでビジネスということを前提に、聴衆の層などを考慮した上で、話の効果が最大限に上がるように心掛ければ、熱意が伝わりより多くの人を巻き込むことができるのです。

PROFILE

永田 豊志
秋田 義一あきた・よしかず
一般社団法人話力総合研究所理事長。話し方、聴き方、ビジネスコミュニケーション、人間関係等に関する研修や講演を担当。また、話力インストラクターの教育指導にあたる。国士舘大学理工学部講師(非常勤)、産業能率大学マネジメントスクール講師。霞が関ナレッジスクェアアドバイザリメンバ。公益社団法人 日本技術士会 防災支援委員会 委員 兼 千葉県支部幹事。千葉県東葛テクノプラザ技術相談員などを歴任。

記事公開:2019年4月