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仕事がうまくいく「話し方」のコツ

ビジネスシーンで役立つ話し方のコツをケース別にご紹介します。

vol.15 部下や取引先から一目置かれる
リーダーにふさわしい言葉遣いとは?

相手に応じた適切な言葉遣いは、重要なビジネススキル

TVのワイドショーなどを見ていて、コメンテーターの言葉遣いに違和感を覚えたことはありませんか? 言葉遣いは、服装などの身なりと同様に、話し手の人となりをよく表します。どんなに話の内容が良くても、話し手の立場や状況に応じた言葉遣いができなければ、それだけで話の効果が下がってしまいます。もちろん職場でも、立場や年齢、相手に応じた言葉遣いを求められます。それができなければ、自分の評価を下げることにもなりかねません。そこで今回は、部下や取引先などにビジネスの場で一目置かれる言葉遣いについて解説します。

言葉遣いが表すのは、話し手の品位と教養です。敬語を適切によどみなく使いこなすことができれば上品な人だと思われ、話の中で慣用句などを的確に挟めば知的な印象を与えることができます。管理職にふさわしい言葉遣いをすることは、職場の雰囲気にも良い影響を与え、ひいては仕事の成果にもつながります。また、社外の人と話をするときにも、相手に信頼感を与え、部下を伴っている場合は手本を示すことにもなります。上司や部下、取引先など、相手に応じた適切な言葉遣いは、重要なビジネススキルの1つといえるでしょう。

相手に見下される恐れがある間違った敬語

適切な言葉遣いを考える上で、まず難しいのが敬語です。敬語には、尊敬語、謙譲語、丁寧語、美化語があり、相手を慮る文化が背景となった、日本語の特徴といえる言い回しです。日頃から常に意識しておかなければ、自然に使いこなせるようにはなりません。自然に敬語を話すことができれば相手に品位を感じさせる一方で、間違った使い方をすると見下されかねないもろ刃の剣と言えます。とはいえ、ビジネスの会話では、避けて通れないのも敬語。大企業の経営者などビジネスで成功を収めた人の話し方を聞くと、やはり自然な敬語を使っています。

敬語で話すときには、誤った使い方をしないようにまず気を付けたいところ。中でもよく耳にする完全な間違いが二重敬語です。例えば「おっしゃられる」は「おっしゃる」がもっとも敬意の高い尊敬表現であるにもかかわらず、さらに「~られる」という尊敬表現を加えています。これは二重敬語で本来誤りです。「部長がおっしゃいますことは、~」と表現します。同様に、「おいでになられました」は「おいでになりました」が正しいです。「拝読させていただきます」は、「拝読」という言葉が謙譲表現であるにもかかわらず、さらに「させていただく」という「させてもらう」の謙譲語を付けるのは誤り。この場合「拝読します」または「読ませていただきます」が正しい言い方になります。

慣用表現の間違った使い方は致命的な場合も

間違った敬語以外にも、現実には多くの人が使っている耳障りな表現はたくさんあります。例えば「こちらが新製品になってございます」。丁寧な言い方に聞こえると思って使うのかもしれませんが、この「なって」には何の意味もありません。「こちらが新製品でございます」で十分です。さらに言えば「こちらが新製品です」でも、立派な丁寧語であり、まったく失礼ではありません。他によくある例として「FAXのほうをお送りします」の「~のほう」も意味がない、耳障りな言い回しです。近年よく使われるようになった「ほぼほぼ」という言い方も「ほぼ」だけで構いません。これらの意味がない表現は、使っている人は柔らかい言い方になると思っているのかもしれませんが、言葉遣いに敏感な人には不快に聞こえる恐れがあります。

耳障りな表現の他に注意しなければいけないのが、慣用句などを本来の意味と違う使い方をすることです。中にはまったく逆の意味で使っている場合もあり、これは致命的です。例えば「役不足」という言葉は、自分の力量よりも役が軽い場合に使います。昇格を打診されたときに「私は~には役不足」などと言ってしまうと、自分にはもっと上の役職がふさわしいということになります。謙遜するのであれば、「力不足」を使うべきです。また、先ほどから出ている「耳障り」という表現は、聞くと気に障るという意味です。そのため「耳障りが良い」という表現はありません。他にも慣用表現は、間違って使われていることがあります。中には本来とは異なる意味での使い方が普及して、新たな意味が加わったものもあります。慣用表現に関しては、辞書や辞典などで一度正しい使い方を確認しておくと良いでしょう。

リーダーが避けたい言葉遣い

日頃から意識することで10年後は大きな差に

平成以後、ベンチャー企業をはじめとして、上司と部下の関係が近い風通しの良い社風を掲げる会社が増えました。それ自体は決して悪いことではありません。しかし、その意味を履き違えて、上司が部下に友達口調で話していることがあります。たとえ職場内であっても、一定の節度は必要。管理職が学生のような言葉遣いをしていては、関係が近くなっても、敬意をもたれることはないでしょう。やはり年や立場相応の言葉遣いがあり、それを使ったとしても部下が壁を感じることはないはずです。逆に「やっぱそれってヤバいよ」というような話し方では、甘く見られてしまう恐れも。

また、「ガイドライン」や「フォローアップ」といったカタカナ語も、一昔前に比べると格段に多くなりました。こうしたカタカナ語は今後も増え続けるでしょう。新しいカタカナ語を聞いたときは、一度該当する日本語を確認してください。「なんとなく分かる」というあやふやな感覚のままでいると、間違った使い方をして恥をかいてしまうかもしれません。さらに会社によっては、あまり一般的ではないカタカナ語が社内では普通に使われていることがあります。そうした言葉を社外の人に使うと、話が伝わらないだけでなく、相手によっては英語かぶれのいけ好かない人間だと思われてしまうので要注意です。

適切な言葉遣いは、一朝一夕では身に付きません。日頃から意識して話をすることで5年後、10年後に大きな差になって現れてきます。言葉遣いを含めて、話力に特効薬はないのです。ですから常に話力を磨き続けていくことが、部下や取引先から一目置かれることにつながるのです。

PROFILE

永田 豊志
秋田 義一あきた・よしかず
一般社団法人話力総合研究所理事長。話し方、聴き方、ビジネスコミュニケーション、人間関係等に関する研修や講演を担当。また、話力インストラクターの教育指導にあたる。国士舘大学理工学部講師(非常勤)、産業能率大学マネジメントスクール講師。霞が関ナレッジスクェアアドバイザリメンバ。公益社団法人 日本技術士会 防災支援委員会 委員 兼 千葉県支部幹事。千葉県東葛テクノプラザ技術相談員などを歴任。

記事公開:2019年6月