うまく話すためには徹底的に準備する
自信満々で会議やプレゼンに臨んだにもかかわらず、自分の考えが相手にうまく伝わらなかったり、緊張で十分に伝えきれなかったりしてガッカリした経験は、誰でも一度はあるはず。重要度が高い場面ほど、こうした事態は避けたいところ。今回は、自分の意図を正確に伝える話し方と、緊張でうまく話せなくなる要因について解説します。
会議やプレゼンに際しては、資料の準備をして臨むのと同様に、話をするためにも徹底的な準備が必要です。話の効果は聞き手が決めます。自分はうまく話したつもりでも、聞き手にうまく伝わらなければ何も話していないのと同じです。聞き手にしっかりと理解してもらうためには、相手のことを把握した上で、作戦を立てて話をしないとうまく伝わりません。
話の要点を理解してもらうための準備の第一歩は、聞き手を分析すること。人数や役職はもちろん、性格や興味など、聞き手に関して可能な限り情報を集めます。その結果を基に、相手が聞きたがっていることを予想します。相手の聞きたいことと自分が伝えたいことを上手に織り交ぜて、話す項目と順番を決めておくことが大切です。
相手が話についてきているか確認する
入念な準備をしたときに陥りがちなのが、話すことに夢中になり過ぎて、相手を置き去りにしてしまうことです。一方的に話しているだけでは、要点は伝わりません。話をしながら、聞き手の反応や表情を見て、話についてきているか確認するようにしましょう。時には質問を投げかけたり、受けたりすることも効果的です。
また、伝えたいことが複数あるときに、「~~で、~~で、~~で、~~です」というように、並べて一気に話をする人がいます。これでは、聞き手は話の要点が何なのか理解できません。肝心なことを話すときには、できるだけ短い文章にするというテクニックが有効。最も伝えたい話は、短い文で、気持ち程度に声量を大きくしたり、声のトーンを変えたりして変化をつけると、聞き手の印象により強く残ります。
話には「報告」や「説明」「指示・依頼」「説得」といった機能があります。目的に応じ機能を使い分けなければ、せっかく話をしても聞き手には伝わりません。例えば、駅のホームでは、「電車が参ります。白線の内側までお下がりください」というアナウンスが流れます。これは「報告」と「指示」の機能を使い、乗客に安全を確保する行為をとるよう促しています。ところが「貴方と電車の間には一定の距離が必要です」というアナウンスが流れたらどうでしょう。聞いた人は何をすればよいのか分かりませんよね。このアナウンスには「指示」の機能がなく、「説明」の機能が使われてしまっているのです。このように目的に合わせた機能を組み合わせて話すことで、話の要点、意図を効果的に相手に伝えることができるようになります。
話の最中も常に伝えたいことを意識する
どれだけ準備をしても、予定通りに話が進むとは限りません。相手にも話したいことがあるかもしれませんし、脱線することもあります。話には流れも大切です。伝えたいことを優先するあまり、流れを無理やり断ち切ってしまうと、相手からの印象が悪くなり逆効果です。流れに逆らわないように、話の要点を伝えるためには、話をしながら常に伝えたい項目を強く意識しておくことが重要です。訓練が必要ですが、身に付けることができれば、話の流れが別の方向に向かっても頃合を見計らって本題に戻せるようになります。
また、話の内容をまとめると、より相手に伝わりやすくなります。話をまとめる機会は3回。まず、話をするための準備の段階です。続いて話の最中と最後。ちなみに人が本当に集中して話を聞くことができるのは15分程度。1つの項目につき15分以内でまとめるようにしましょう。
そして、解散した後で話の内容を文章に起こし、まとめておくことも大切です。後日、メールや資料を送る際に役に立ちますし、次に同じ相手と話をするときの参考になります。何より、こうした努力をすると、まとめる力がついてくるのです。
■ 緊張で話せなくなる3つの要因
緊張でうまく話せなくなる要因は3つ
緊張でうまく話せなくなるケースには、内容的要因、心理的・生理的要因、方法的要因の3つがあります。どの要因が大きく影響するかは人によって異なりますが、基本的にはこの3つすべてが関係します。
まず、内容的要因とは、話せる内容を十分持っていない場合のことです。どんなに話がうまい人でも、自分が知らないことについて話をすることはできません。知っている内容に自信がないときや準備不足の場合に起こる緊張も、内容的な要因だといえます。
次に心理的・生理的要因としては、話の成果に過剰な期待を抱いている場合や、聞き手に対して劣等感を抱いている場合などがあります。徹底的に準備したことで「このプレゼンは絶対にうまくいくはずだ」と力が入り過ぎてしまったときや、会社の重役を相手に話をしなければいけないときは、緊張しやすくなります。また、伝えたい内容を忘れてはいけないという思いが強過ぎても、緊張する原因になるでしょう。
最後に、方法的要因といえるのが、話し方に自信がないときや、効果的な話し方を知らない場合です。これらの要因の中で、どれが最も自分に影響しているのかを考えて、対策を講じるとよいでしょう。
ただし、人間である以上、全く緊張しなくなるということは不可能です。緊張するということは、感性が優れているということ。そして、感性は話にとってとても大切な要素のひとつなのです。緊張しながらも一生懸命話している姿が、かえって人の心を打つこともあります。「話の味は人の味」です。話を通して、貴方の人間性が相手に伝わるのです。日頃から自分を磨き続けることが、話し上手になるための最大のトレーニングといえるでしょう。