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仕事がうまくいく「話し方」のコツ

ビジネスシーンで役立つ話し方のコツをケース別にご紹介します。

vol.5 次のチャンスを失わないために、
断り方で気をつけたいポイントは?

人間関係を壊さないで断る第一の鉄則は、「聞く」こと

長く仕事をしていると、納期や予算などの関係で、どうしても断らなければいけない依頼や案件に必ず遭遇します。上司や大切な取引先の依頼を断って、気まずい思いをしたことのある人もいるはずです。相手との関係を壊さずに断ることは、ビジネスマンにとって重要なスキルのひとつ。逆に、上手に断ることができれば、相手の信頼を得ることも不可能ではありません。そこで今回は、未来のビジネスチャンスを手放さないために注意すべき、断り方のポイントを紹介します。

誰かに何かを依頼されるということは、単純にその関係だけをみると、自分の方が有利な立場です。だからこそ、断る場合は細心の注意を払わないと、依頼主の反感を買うことになりかねません。その相手が上司やお客様であれば、なおさら慎重になる必要があります。最初に気をつけなければいけないのは、断ろうとしている依頼であっても、相手の話をしっかりと聞くこと。仮に手が一杯で、新しい依頼を引き受ける余裕がなかったとしても、まずは何とかして引き受けようとする姿勢を見せましょう。

断るときの考え方は「逆説得」

断るつもりの依頼の話をよく聞くというのは、時間の無駄だと思われるかもしれません。しかし、今後の相手との関係を視野に入れた場合、ただ「できません」「やりません」というのではなく、どうして断るのかその理由を丁寧に説明して、相手に納得してもらった方が得策です。そのために、相手の話をしっかりと聞いておく必要があるのです。

そして、断るときに使う“話の機能”は「説得」です。相手の話をしっかりと聞きつつ、説得ポイントを探しましょう。私たちが断るときとっさに挙げる理由は、「忙しいから」「利益が出ないから」など、自分本位なものになりがちです。しかし、それをそのまま伝えるだけでは相手は納得してくれません。そこで、例えば相手がクオリティを最優先にしている場合は、「納期までに満足してもらえる仕上がりにならない」といったように、こちらに依頼することが相手にとって最善ではないということを具体的にわかりやすく伝え、相手が自発的に諦めるように逆に説得するのです。

クッション言葉を使って、明確にNOを示す

一般的に、人は他人の話を自分の都合が良いように解釈する傾向があります。相手が断る理由に納得した場合でも、「依頼を引き受けない」ということは、明確に伝えておかなければいけません。中途半端に言葉を濁すと、後のトラブルの種になってしまいます。ただし、断りの意思を示す前に、必ず「大変申し訳ないのですが~」「こちらも残念なのですが~」「今回に限っては~」など、クッションになる言葉を入れるようにしましょう。

やはり依頼を断られるというのは、誰でも良い気持ちにはならないもの。ですがクッション言葉を入れることで、面白くないという相手の感情を和らげることができます。

■依頼の上手な断り方

良い代案を出すことが、断って信頼される鍵

ここまで説明したことは、断り方としては可も不可もない、最低限クリアしておきたいレベルです。さらに上のレベル、依頼を断っても信頼を得るための鍵は、代案や新しいアイデアを出すこと。それが相手にとって良いものであるほど、貴方の信頼を高めることになります。もし相手に時間的ゆとりがあるならば、「よく検討したい」と伝えていったん持ち帰るのも、ひとつの手です。相手もその場で断られるより、感情面でも納得しやすくなるはずです。そして持ち帰った場合は、相手を納得させる理由だけでなく、満足させるような代案やアイデアも考えるようにしましょう。

ただし、相手が依頼をしてくるとき、その状況は様々です。時間に余裕がない依頼なら、できるだけ早く断った方が相手のためになります。また、依頼された内容を全て引き受けるのではなく、部分的に引き受けることができるかもしれません。一言で「断る」といっても、0とは限らないのです。
上手な断り方を選び取るには、相手の状況や性格など様々な要素を検討して、総合的に判断することが大切。日ごろから協力的な姿勢で相手と接し、断る際の言動を間違えなければ、一度や二度断ったとしても信頼関係が壊れたりすることはありません。そして、断る場面だけに限らず、常に相手の話をよく聞き、できるだけ多くコミュニケーションをとろうとする意識が、仕事をうまく進める潤滑油になるのです。

PROFILE

永田 豊志
秋田 義一あきた・よしかず
一般社団法人話力総合研究所理事長。話し方、聴き方、ビジネスコミュニケーション、人間関係等に関する研修や講演を担当。また、話力インストラクターの教育指導にあたる。国士舘大学理工学部講師(非常勤)、産業能率大学マネジメントスクール講師。霞が関ナレッジスクェアアドバイザリメンバ。公益社団法人 日本技術士会 防災支援委員会 委員 兼 千葉県支部幹事。千葉県東葛テクノプラザ技術相談員などを歴任。

記事公開:2018年2月