指示はまず相手に「理解させる」こと
会社勤めが長くなれば、後輩が増えますし、昇格して立場が上がれば部下の数が増えることもあるでしょう。このように立場が変われば、指示を出す機会は多くなるはずです。そして、指示を出したのに後輩や部下がやってくれなかった……。そんな経験をした人も多いでしょう。そこで今回は、指示を出すときに、気を付けたいポイントを紹介します。
後輩や部下が指示通りに動いてくれない場合、まだ力不足のためにできなかったということはあります。しかし、実はそもそも指示の内容自体を、「理解していなかった」ということもあるのです。人は誰でも自分を基準にして、話をしてしまいがちです。「その程度のことは言わなくてもわかるはず」と思って指示を出したことはありませんか?
自分の経験や知識を前提にして指示をすると、後輩や部下にはその前提が無いため、指示の内容を十分に理解できないのです。
指示を出すときにまず大切なのは、“言うこと”ではなく“理解させること”です。そのために心掛けなければいけないのが「聞き手の心の法則に従って話すこと」。つまり、相手が理解しやすいように指示=説明することです。
理解しやすくする鍵は「話の順序」
説明するときに相手が理解しやすくなるかどうかの鍵は、話す内容の順序です。しっかりと順序だてられた話は、相手に余計な誤解や混乱をさせることはありません。下記で、話の順序を決めるときに、特に重要なものを5つ挙げます。
まず「時間」の順序です。これは単純に時系列に沿って話すことです。話の順序としては平凡ですが、シンプルなためわかりやすく話すための代表的な方法の1つ。何か作業を指示するときなどに「午前中は~、午後から~、夕方からは~をしてほしい」と言えば、1日に行ってほしい業務を簡単に伝えることができます。
次が「空間」の順序。相手が頭の中にイメージを描きやすくなるだけでなく、効率的に指示をしたいときに有効です。例えば、Aの部屋にある書類とBの部屋にある文具、Aの部屋にある食べ物とBの部屋にある食器を持ってきてほしいとします。この場合「Aの部屋から書類と食べ物を、Bの部屋から文具と食器を持ってきてほしい」と言った方が、簡単に伝えることができる上に、相手も理解しやすくなるのです。
続いて「因果関係」の順序です。原因と結果の関係は、直接結びつくためわかりやすい図式になります。何かトラブルが起こったときに「ここでミスをしたから、他にも影響が出ないように手を打っておこう」と伝えれば、相手も納得しやすいはずです。原因と結果のどちらを先に話しても構いませんが、先に話すと決めた内容の中に、もう一方の内容が混ざらないように注意してください。混ざってしまうと相手は混乱してしまいます。原因や結果が複数ある場合でも、それぞれきっちりと分けて話すようにしてください。
4番目が「カテゴリーごと」の順序です。A社、B社、C社という3社の取引先について話をする場合、仮に重複する内容があったとしても1社ごとに話をした方が、相手にはわかりやすくなります。2つ以上のカテゴリーにまたがった話をするのであれば、相応の理由があり、そうした方が相手にとってわかりやすくなるときだけにしておきましょう。
そして最後が「重要度(優先度)」の順序です。ビジネスの会話では、重要度が高いものから話すのは基本。最初に重要なことを話すのは、単にいち早く知らせるというだけでなく、相手の興味をひき付けることができるからです。長く仕事をしていれば自然に身に付いているはずが、後輩や部下といった自分より下の立場の人に話をするときに、うっかりこの基本を忘れてしまうことがあるので気を付けてください。
相手が理解しやすい「話の順序」
事前に話す順序を決めておく
上記に挙げた5つの話の順序には、重要度の差はありません。相手や状況、話す内容に応じてこれらを組み合わせることで、話す順序を決めます。指示を出すときは、思いつきで話すのは厳禁。どのような組み合わせで話せば相手が理解しやすくなるか、事前に相手の立場になって考えてみるとよいでしょう。
下の立場の人は、上の立場の人が話すことに「理解できません」とはなかなか言いづらいもの。自分は指示した(言った)つもりでも、相手がその内容をしっかりと理解できていなければ、指示したことにはなりません。その結果、仕事がうまくいかないとお互いに不幸です。指示の難易度=仕事の重要度が高くなるにつれて、部下や後輩にはよりしっかりと理解してもらうことが不可欠。自分が伝えたいことを、後輩や部下が十分に理解した上で動いてもらうことが、仕事を成功に導く最初の一歩になるのです。