報酬に振り回されてない? 目標の選定は自分の意思で
前回までは、ダラダラと過ごしているムダな時間の改善方法を紹介しました。ムダな時間は過ごしていないとしても、ただただタスクに追われて1日が終わっているという人も多いかもしれません。充実感や幸福度を高めるには、自分で時間の使い方を決めることが重要です。その際に鍵となるのが、目標設定。目の前のタスクを「ただこなす」のではなく、「目標を設定して取り組む」ことで、自身の成長につながる有意義な時間を過ごせるでしょう。また、高い成果につながりやすいとも言えます。今回はそんな上手な時間の使い方を実現させる目標の設定方法を紹介します。
私たちの行動を引き起こすモチベーションには「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の2種類があります。
前者の内発的動機付けとは、興味・関心、好奇心など自分の内面から生まれる動機です。アメリカの心理学者のマーティン・セリグマンは、この内発的動機付けが重要であると説いています。なぜなら私たちが自ら楽しみ、意欲を持って取り組むことで、創造力や理解力が高まり、困難に直面しても簡単に諦めにくくなるからです。
一方、後者は仕事でのノルマ、すなわち報酬や罰など外的要因によって生まれる動機です。仕事において評価や報酬は、行動の目的が明確になるので、動機付けしやすいという特徴があります。しかし、それらは時としてやる気を削いでしまうことになりかねません。というのも、目的が「報酬のため」となってしまうと、ただタスクをこなすだけになり、楽しみや意義を感じづらくなってしまうからです。
この点、自分の興味・関心から意欲が生まれる内発的動機付けは、外発的動機付けよりもモチベーションを維持しやすく、高いパフォーマンスを得やすいと言えるでしょう。
そのためには、「自分の意思で目標を選んでいる」と感じられることが大切です。アメリカの社会心理学者ハイディ・グラント・ハルバーソンが体育の授業を受ける学生を対象に行った研究によると、教師によって授業の目標を設定された学生に比べ、複数の目標の中から自分に合ったものを選べるようにした学生の方が、運動に楽しさを感じ、学校以外でも積極的に運動しようとしていたのです。「自分で目標を選んでいる」と感じながら取り組む学生ほど、モチベーションが高い傾向にあることが明らかになりました。
このように、強いられた目標ではなく、自分の意思で選択した行動(内発的動機付け)こそが、自身の成長につながる高いモチベーションを生み出す鍵となるのです。