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日々を充実させる!タイムマネジメントの技術

24時間を上手に使って、仕事もプライベートも充実させるコツを紹介します。
vol.3

その時間の使い方、
自分の意思で決めていますか?
鍵となる目標設定のコツとは。

報酬に振り回されてない? 目標の選定は自分の意思で

前回までは、ダラダラと過ごしているムダな時間の改善方法を紹介しました。ムダな時間は過ごしていないとしても、ただただタスクに追われて1日が終わっているという人も多いかもしれません。充実感や幸福度を高めるには、自分で時間の使い方を決めることが重要です。その際に鍵となるのが、目標設定。目の前のタスクを「ただこなす」のではなく、「目標を設定して取り組む」ことで、自身の成長につながる有意義な時間を過ごせるでしょう。また、高い成果につながりやすいとも言えます。今回はそんな上手な時間の使い方を実現させる目標の設定方法を紹介します。

私たちの行動を引き起こすモチベーションには「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の2種類があります。

前者の内発的動機付けとは、興味・関心、好奇心など自分の内面から生まれる動機です。アメリカの心理学者のマーティン・セリグマンは、この内発的動機付けが重要であると説いています。なぜなら私たちが自ら楽しみ、意欲を持って取り組むことで、創造力や理解力が高まり、困難に直面しても簡単に諦めにくくなるからです。

一方、後者は仕事でのノルマ、すなわち報酬や罰など外的要因によって生まれる動機です。仕事において評価や報酬は、行動の目的が明確になるので、動機付けしやすいという特徴があります。しかし、それらは時としてやる気を削いでしまうことになりかねません。というのも、目的が「報酬のため」となってしまうと、ただタスクをこなすだけになり、楽しみや意義を感じづらくなってしまうからです。

この点、自分の興味・関心から意欲が生まれる内発的動機付けは、外発的動機付けよりもモチベーションを維持しやすく、高いパフォーマンスを得やすいと言えるでしょう。

そのためには、「自分の意思で目標を選んでいる」と感じられることが大切です。アメリカの社会心理学者ハイディ・グラント・ハルバーソンが体育の授業を受ける学生を対象に行った研究によると、教師によって授業の目標を設定された学生に比べ、複数の目標の中から自分に合ったものを選べるようにした学生の方が、運動に楽しさを感じ、学校以外でも積極的に運動しようとしていたのです。「自分で目標を選んでいる」と感じながら取り組む学生ほど、モチベーションが高い傾向にあることが明らかになりました。

このように、強いられた目標ではなく、自分の意思で選択した行動(内発的動機付け)こそが、自身の成長につながる高いモチベーションを生み出す鍵となるのです。

ハードルは低めに? 「やればできる」をモチベーションに

内発的動機付けによって行動するには、自分で目標を設定する必要があります。もちろん会社などで与えられる目標も貴重なモチベーションの一つにはなりますが、自分が本当に達成したいゴールも個別に設定しましょう。対象は仕事でもプライベートでも構いません。「こうなりたい」と自らが望む理想があれば、多少困難があってもやり遂げることができるはずです。

目標を設定する際に気をつけたいのが、達成までのハードルです。高みを目指すことは悪いことではありません。しかし、あまりにも実現が難しい場合、なかなかモチベーションが上がらないのも事実です。例えば日ごろから「何をやってもうまくいかない」と感じている人と、「私はやればできる!」と考えられる人。後者の方が目標を達成しやすいと言えるでしょう。なぜなら、前者の考え方ではゴールにたどり着くまでに諦めてしまう傾向が強いのに対し、「できる」と感じることはモチベーションにつながるからです。このような自信の源となるのは成功体験です。最初から大きすぎる目標を立てるのではなく、「努力すれば達成できる」という範囲内で、具体的なゴールを設定し、成功体験を積み上げることが大切です。

1週間ごとの「行動目標」と日々の振り返りが成長の鍵

自分で掲げたゴールに近づくために、まずは小さな目標を1週間ごとに設定してみましょう。仕事やプライベート、勉強などジャンルは何でも構いません。「毎週3回○○をする」など長期的な目標ではなく、「来週は3回○○する」と、とりあえず翌週の目標を立てることで、決意が揺らぎにくくなり、実行しやすくなるでしょう。

目標を立てるときのポイントは次の2つです。

・「結果目標」ではなく「行動目標」を立てる
・目標設定を日々振り返る

まず、「結果目標」ではなく「行動目標」を立てるようにしましょう。例えば「契約を○件結ぶ」といった結果をゴールに定める(結果目標)のではなく、「アポイントメントの電話を○件かける」など、結果につながる行動にフォーカス(行動目標)します。結果をゴールにしてしまうと、努力しても達成できないことが多く、モチベーションを失いやすくなります。しかし、契約(結果)は結べなくても電話をかける(行動)など、ゴールに至るまでに「どうすればいいのか」「どうしたいのか」といった行動を目標にすれば、自分の意思次第で達成することができます。うまくいけば新たなモチベーションにつながるでしょう。もし達成できなかったとしても、何がその原因かを判断しやすく、時間の使い方を見直すいい機会となるはずです。

■ 「結果目標」と「行動目標」の違い

さらに目標を立てたら、毎日見返してください。そのためにも目標は目につくよう、カレンダーや手帳などに記すことをおすすめします。目標達成の積み重ねが成功体験となり、やる気が湧いてくるはずです。「今週は○○ができた」と成功を実感できれば、翌週へのモチベーションになります。週末に振り返り、あまりに容易に目標を達成できた場合や、逆に達成が難しかった場合は、翌週の目標設定に生かしてみましょう。

また、一つ目標を達成したからと言って、次の目標でハードルを上げすぎるのはNG。追い込みすぎると、目標を達成できなかった時に一気に何もかもやる気を失ってしまうリスクがあります。心理学で「どうにでもなれ効果」と呼ばれるもので、一つのことに失敗すると他のことも投げやりになってしまう現象です。これに陥ってしまうと、自分の意思では逃れられません。あくまでも行動目標は「適度なハードルで、1週間単位」が基本。もし達成できなくても「来週こそは達成しよう」と思えるように長期的な視点で捉えることが重要です。

自分が本当に達成したいゴールに向けて、適切に目標を設定できれば、モチベーションを高く維持でき、時間も今までより効率的に使えるようになるはずです。

充実した時間を過ごすためのポイント

自分の意思でゴールを設定することが重要。
週に一度、「やればできる」目標を考え、日々見直そう。

PROFILE

池田 貴将
池田 貴将いけだ・たかまさ
株式会社オープンプラットフォーム代表取締役。リーダーシップ・行動心理学の研究者。大学在学中にアメリカへ行き、コーチング・目標達成・モチベーション理論を学び、起業。科学的根拠に基づいた独自メソッドを開発。著名人を含む、年間1万人以上がセミナーに参加し、高い評価を受ける。著書に『タイムマネジメント大全 24時間すべてを自分のために使う』(大和書房)、『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』(サンクチュアリ出版)、他多数。

記事公開:2023年1月