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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.15 今さら聞けないSNS時代の
プロモーション戦略を図解化。

アメリカ2大IT企業の戦争がついに始まった!?

SNSによる口コミや、企業のオウンドメディアなど、インターネットを介した情報発信は、これまで互いに情報を共有・拡散することで成長してきました。しかし2017年末頃から、この流れに変化の兆しが現れています。Googleが同社の動画サービスYouTubeの閲覧を、Amazon製の一部ハードウエアで制限したのです。
Googleサイドは「Amazonが、クロームキャストやグーグルホームなどのGoogle製品の販売を制限している」との声明を出し、その対抗措置であることを匂わせています。その背景には、両者の競合分野が増えてきており、両者が牽制し合う水面下の争いがあるのではないかといわれています。
いよいよGoogleとAmazonが動画配信の分野で、シェアの奪い合いを始めたというわけです。もしかしたら近い将来、YouTubeにプロモーション動画をアップしても、それがAmazonの全ハードウエアで閲覧できないといった事態が起こるのかもしれません。
そうなると、インターネットを利用してプロモーションを行いたい側は、より戦略的なプロモーションをする必要が出てきます。どのプラットフォームを狙っていくのか、あるいは、商品によっては新聞やテレビへの広報活動を強めるべきなのか……。今回はより複雑になることが予想される状況に備えて、「プロモーションミックス」という基本的なプロモーションの考え方を図解します。

発展するSNS時代の「プロモーションミックス」

5つの手法を組み合わせて商品を知ってもらう

プロモーションには大きく分けて5つの手法があります。これらを組み合わせることをプロモーションミックスといい、費用対効果を考えながら配合するのが、プロモーションを成功させる秘訣です。そしてSNS時代に入って、5つの手法の発展型が現れるようになりました。詳しくみてみましょう。

1. 広告
テレビCMなど、メディアを通じて不特定多数に向けて行う、一方的な有料プロモーションです。テレビやラジオといった電波を使ったものの他には、新聞、雑誌、チラシなどの紙に印刷されたもの、そしてネット広告も含みます。ネット広告には、バナー広告、検索連動広告、アフィリエイトなど、さまざまな種類があります。

2. 販売促進
サンプル品の配布、ロゴや商品情報入りのグッズの配布、一定期間内に特別な価値を提供するキャンペーンなどのことです。一方的なプロモーションという意味では広告と同じですが、広告と違って販売促進は、特定の興味・関心を持つターゲットに対して行われます。Sales Promotionの頭文字をとって「SP」と呼ばれることもあります。SNS時代に入ってからは、「あるジャンルの有名ブロガーに新商品をレビューしてもらう」といったインフルエンサーを利用する方法も行われるようになりました。

3. 人的販売
昔ながらの対面セールスのことです。営業担当者や販売員が、実際に顧客と相対しながら商品説明を行います。確実に情報が伝わります。顧客からの質問にその場で回答する双方向プロモーションであることも特徴です。

4. 広報活動(パブリシティ)
テレビや雑誌などのパブリックなメディアを使って、宣伝ではなく、広報をするという形の、一方的なプロモーション手法のことです。報道やコンテンツ内で商品が紹介されることになります。一般的に無料であるものの、ペイドパブリシティといって、費用を負担して、取材してもらう有料の方法もあります。近年はステルスマーケティングが問題になり、ウェブ記事などではタイトルに「PR」と付け、有償広告であることを知らせるようになっています。また、自社でオウンドメディアを持ち、そこでプロモーションを行うコンテンツマーケティングは、もはや当たり前の手法になってきています。

5. 口コミ
口コミを活用しようとする販売促進は「バズマーケティング」と呼ばれています。SNSにより情報が瞬く間に拡大・拡散する現代では、無視できなくなった手段です。しかしながら企業がコントロールすることは難しく、浅薄なバズ狙いがしばしば「炎上」を引き起こしています。まさに強力なもろ刃の剣といってよいでしょう。扱いには細心の注意が必要です。

プロモーションミックスの進め方

プロモーションを進めるにあたっては、目標と予算を具体的な数値として設定してください。そのためには、目標を「売り上げ」「シェア」「ブランド認知度」など、計測可能なものにする必要があります。
予算は総額で設定しつつ、顧客1人当たりの獲得単価(CPA)をにらみながら、効果的なプロモーションを考え、5つの手法を組み合わせます。商品や業界によって、組み合わせ、効果の高い手段は変わるので、PDCAをきちんと回していきましょう。
SNS時代に突入してからは、特に「広報活動(パブリシティ)」が注目されてきました。具体的にはオウンドメディアを立ち上げ、それがSNSで拡散されることを狙いながら、やがてテレビなどの大メディアに取り上げられることを狙う戦略が定石とされています。
しかしながら前述のGoogleとAmazonの縄張り争いや、「SNS疲れ」などの言葉が登場している様相をみると、インターネットの情報拡散力が、面白ければ無条件に情報が拡散した以前よりも、弱まってきているのではないかと思えます。すると相対的に、他の4つの手法の価値が高まりますから、例えばネットの対極にある「人的販売」に注力する戦略をたてるのも面白いかもしれません。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース・ティービー共同創業者兼取締役副社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービーを共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外で執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2018年8月