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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.16 自社の強みを活かすために、
市場を細分化してターゲットを特定する

市場細分化は、より効果的な事業成果を得る手法

市場の成熟化、消費者ニーズの多様化によって、市場環境はますます複雑化の度合いを高めています。そのような状況下、単に「若い女性向け」といった製品・プロモーションでは、売上面のヒットは望めなくなってきました。今後は、どのような製品であれ、より明確な顧客ターゲット層を設定する必要があります。
製品を市場に投入するのに先がけて、どのような顧客層にアピールするかを分析し、ターゲットとなる顧客層を絞り込むには、マーケットセグメンテーション(市場細分化)と呼ばれるフレームワークが有効です。
これは例えば、「若い女性」ではなく、「都市部に住む、20代の、活動的な、独身の、女性」というように、より具体的な顧客層(セグメント)を設定することです。これにより、よりターゲットに届きやすいマーケティングが可能になります。企業が有する「人・モノ・金」のリソースには限りがありますから、対象を絞り込んでリソースを集中的に投下することで、より効果的な成果を挙げられるはずです。

※フレームワーク…経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネスの局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

セグメンテーションの基準

セグメンテーションの4つの尺度とは…

たとえ同年代の顧客層であっても、職業や学歴、出身地域などに違いがあれば反応は異なります。そのため、製品の市場投入に際しては丁寧な細分化が重要なカギとなります。より明確なターゲット層を設定するセグメンテーションの尺度には、次の4つが一般的なものとして挙げられます。

「人口統計的区分」
年齢、性別、収入、家族構成、学歴、職業、人種などの要素で分類します。生活に密着した身近な製品と連動する区分とされています。

「地理的区分」
国、地域、地域人口密度、気候、政策などの要素で分類します。とくに、小売・飲食・不動産といった業界では重要な指標となります。

「心理的区分」
性格、ライフスタイル、趣味などの要素で分類します。消費者の好みや価値観が多様化・細分化するにつれ、この尺度の重要度は高まっています。

「行動的区分」
購買層、購買頻度、広告反応度、価格反応度、使用頻度などの要素で分類します。POSシステムの機能向上やインターネット通販の増加に伴って、この尺度による分析は日ごとに進化しています。

セグメンテーションは新たな市場の開拓にもつながる

市場の細分化は、自社の特性や強みを魅力的に感じてくれる層を探す場合や、従来までの顧客層を再点検したい場合に有効なフレームワークです。さらには、市場の拡張や、これまでになかった市場の開拓にも有効な手法といえます。
例えば、火を使わず、煙や強いニオイを発しない喫煙具。2015年から2016年にかけてヒット商品となり、その存在が世間に広く認知されました。これは禁煙をすすめる法整備、つまり政策という「地理的区分」に加え、周囲に配慮する喫煙者の気持ちという「心理的区分」の尺度が考慮された結果、市場が拡張した例です。
また、ノンアルコールビールも、「アルコールを飲まない」または「飲みたくても飲めない」状況に身を置くライフスタイルという「心理的区分」に着眼したところから、ノンアルコールビール市場という新しいマーケットを創出するに至った商品といえるでしょう。
自社の強みを最大限に活かし、優位性を十二分に発揮できる顧客層を見つけ出すには、こうした一般的な尺度だけでなく、さらに多様な尺度による細分化が必要です。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース・ティービー共同創業者兼取締役副社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービーを共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外で執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2018年9月