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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.20 適正な価格を導き出すために
4つの価格を用いる「PSM分析」。

価格と顧客心理の関係性を視覚化する

自社商品の価格設定は、事業展開における最重要課題であると同時に、マーケティング戦略上、もっとも難しい問題のひとつです。それは自社の利益をしっかりと確保しつつ、顧客に数多く買ってもらえる金額にする必要があるからです。

高く売りたい企業側の都合と、リーズナブルな価格を求める顧客の心理をともに満たす適正価格を探るために有効とされるのが、今回ご紹介するフレームワーク、PSM分析(Price Sensitivity Measurement = 価格感度分析)です。

手法としてはまず、想定顧客に対してアンケートで、以下4問の質問を行います。

Q1. この商品がいくらから「高い」と感じ始めますか?
Q2. この商品がいくらから「安い」と感じ始めますか?
Q3. この商品がいくらから「高すぎて買えない」と感じ始めますか?
Q4. この商品がいくらから「安すぎて品質に問題があるかも」と感じ始めますか?

次に、価格に関する回答データの累計から価格ごとにパーセンテージを割り出して、グラフにします。すると、Q1とQ3が右上がり、Q2とQ4が右下がりとなる、下に示したようなグラフができます。

※ フレームワーク・・・経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネス局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

グラフの4交点が論理的に価格設定を進めるカギ

グラフには、原則として4つの交点ができます。これがPSM分析によって見えてくる4つの価格です。

① 上限価格[これ以上高いと誰も買わない]
利益率が高くなるので企業にとっては都合がよい一方で、買い手にとってはぎりぎりの価格。商品にプレミアム価値がある場合や競合他社がいない場合には、この価格設定が成立する可能性があります。

② 妥協価格[これくらいならしょうがない]
買い手が納得できる上限価格であり、トップシェアを狙う商品の場合、この価格を基準にします。

③ 理想価格[これくらいであってほしい]
買い手にとっての理想価格ですので、販売数が見込める価格ですが、製造コストなどの点で企業として採算がとれるかどうかの判断が重要となります。

④ 下限価格[これ以上安いと信用できない]
ディスカウント店や特売品などでつけられる価格であり、これ以下だと買い手が不安を感じる価格。収益性はかなり低いので、薄利多売をしやすい低価格帯商品に適しているといえます。

アンケート調査によるPSM分析(価格感度分析)

PSM分析は応用可能だが万能ではない! あくまでも参考指標に

商品の価格設定にPSM分析を用いる際、想定顧客の性別・年齢といった属性別、自社ブランドで展開している商品別にデータを集め、それぞれにグラフ化してみると、よりこまやかな価格戦略が可能になるでしょう。

また、PSM分析は価格設定だけでなく、距離、時間、サイズなど数値化できるものにも応用できる利点があります。例えば、建売住宅物件の駅からの最適な距離。駅から近くて移動には便利でも、騒音、建物の密集度などの点で顧客は不安を覚えます。そのほかに、ある商圏に展開すべき適正な店舗数の割り出しなどにも用いることができるでしょう。

ただし、PSM分析の結果は、あくまでも参考指標と考えるべきです。実際の価格設定段階においては、競合との価格比較、商品自体の需要と供給のバランスなども考慮に入れて総合的に判断する必要があります。

デフレや暗い景気見通しなどの要因により、消費者心理は必ずしもポジティブであるとはかぎりません。大事なのは、顧客が実感している価値と価格の適正度をきちんと精査した上で価格を設定するということです。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース・ティービー代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービーを共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2019年3月