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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.21 競争で優位に立つために
4つの視点から課題と目標をあぶり出す。

評価と改善を進めるために必要な4つの視点

成熟産業を始めとする各業界で市場競争がますます激化していくなか、企業として勝ち残っていくには、継続的に競争力を発揮しながら遂げる成長と発展、企業自体の使命とコア・バリューを示すことが不可欠です。そのためには、あらためて自社の状況分析と戦略策定を経て、成功に必要な要因を定義して明確化しなければなりません。

そこで必要になってくるのが、「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」の4つの視点から戦略を立て、実行の度合いを評価するフレームワーク。それが今回ご紹介するバランスト・スコアカード(BSC)です。

BSCは、ハーバードビジネススクール教授のロバート・S・キャプランとコンサルタント会社社長のデビッド・ノートンによって、新たな業績評価システムとして1992年に発表されました。

一般的に、企業の評価では、売上高や利益率などの財務指標ばかりに目が行きがちですが、BSCは以下の4つの視点を用いて会社や事業部門をより総合的に評価・改善していく点に有用性があります。

●財務= 株主に対してどのように行動するか
●顧客= 顧客に対してどのように行動するか
●業務プロセス= どのような業務プロセスが必要か
●学習と成長= 組織・従業員をどのように成長させるか

※ フレームワーク・・・経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネス局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

計測可能な5つの指標に落とし込み、戦略と行動を明確化

4つの視点から課題や目標への具体的な道筋を導き出し、それが達成されたかをチェックして実情を評価・改善していくために、さらに以下の5つの指標を設定します。

■戦略目標(KGI=Key Goal Indicator:必要不可欠な重要目標達成指標)
■重要成功要因(CSF=Critical Success Factor:戦略目標を成功させるための要因)
■重要評価指標(KPI=Key Performance Indicator:達成度評価の指標)
■ターゲット(目標達成数値)
■アクションプラン(数値目標を達成するための具体的行動)

4つの視点から各項目を決定して表にまとめたものがBSCです。以下がその具体例で、それぞれの視点での戦略目標が、数値化された目標を達成するための具体的な行動に落とし込んであるため、目標と達成度が明確化されるのが最大の特色といえます。

■売上の拡大を狙ったバランスト・スコアカードの例

自社内にどのようなアクションが必要か整理するのがポイント

BSCの特徴として重要なのが、4つの視点(表の縦軸)が下の段になるほど先行指標になっている点です。これは、財務の視点による目標はあくまでも結果であり、売上拡大を目指すには、先行する顧客の視点や業務プロセスの視点、学習と成長の視点での目標達成が不可欠であることを意味しています。

そのため、BSCの導入効果として、
「部門別の目標だけでなく個人レベルでの目標設定ができた」
「社員各自の意識変革とモチベーション向上が促された」
「収益性に直結する営業部門以外のコスト削減や業務効率化につながった」
「必要なスキルが明確化して研修プログラムが改善できた」

といったケースが期待できます。

また、BSCは、企業理念や成長戦略を個々のアクションプランに落とし込んで、体系的・定量的に管理できるマネジメントシステムであることから、外部環境の変化が限定的あるいは予測可能で、トップダウンの意志決定で活動を展開する事業に向いているとされます。アメリカの石油大手や日本の電力会社などがBSCの導入によって大きな成果を挙げています。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2019年5月