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図解で思考整理(実践編)

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.23 「とりあえずチャート化」のクセを付けて
 データ整理で手を止めない!

悩んでいる暇があったら表計算ソフトを起動

一度にいくつもの資料を読むと、データを頭の中でまとめるのは予想以上に時間がかかります。うなっているうちに、ふと時計を見ると終業時間まで残り15分、などということも……。黙考は悪ではないものの、袋小路に入り込んでしまうのは避けるべきです。思考が行き詰まりそうになったらチャート作りに手を動かして、よどみはじめた頭の中を少しずつクリアにしましょう。

チャート作りは「思考の見える化」と言っても過言ではありません。作りながらあやふやな要素が形になり、素早く正確な状況把握や新しい視点からのアイデア立案ができることもあります。今回はフレームワークで使われる最も基本的なチャートと、チャート作りの考え方をご紹介します。合言葉は「とりあえずチャート化、まずはマトリックス」。

※フレームワーク・・・経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネス局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

すべてのチャートの原材料、マトリックスを作る

「マトリックス」の例
見やすくするポイント
・むやみに色や罫線を使いすぎずシンプルに
・行数や列数が多い場合は、1行おきに色を付ける
・特徴的な数字は太字にしたり色を付けたりして目立たせる

マトリックスとは数学の行列のことを指しますが、上記のようなデータを縦横の2軸で表した表組みのことも意味します。横の並びは「行(row)」、縦の並びは「列(column)」です。一般的な表計算ソフトで、「まずマトリックスを作り、そこからグラフツールでチャートを作る」という段階を踏むことからもわかるように、マトリックスはデータを整理するチャートの基本形と言えます。

マトリックスの作成過程では「タイトルを何にするか」「縦軸と横軸に何を当てるか」を具体的に考えることになります。データ整理で何から手を付けていいかわからなくなったら、マトリックス作りを糸口にすると、思考がまとまりやすいでしょう。「手が止まったらまずはマトリックス」をクセにしてみてください。完成したら数値を見て、各項目の最大値、最小値などを太字にしたり色を付けたりして、目立たせることを忘れずに。そこから思わぬ事実が浮かあがびることがあります。

目的に合わせたチャートへアウトプット
チャートは工夫次第でよりわかりやすくなる

マトリックスが完成したら、より見やすい別のチャートを作成しても良いでしょう。特に利用頻度が高いのは以下の3つ。1つ目は量の差を長さで比較する「縦棒グラフ(コラムチャート)」と「横棒グラフ(バーチャート)」。2つ目は全体の構成割合がわかりやすい「円グラフ(パイチャート)」。3つ目は時系列をつかむのに適した「折れ線グラフ(ラインチャート)」です。

チャート内のポイントとなる箇所を強調したり、場合によってはチャートを合体させたりすると、よりデータが読み解きやすくなります。なお、事前に作りたいチャートが決まっている場合は、それに合わせてマトリックスを作るようにしましょう。

縦棒グラフ(コラムチャート)
左が積み上げ縦棒グラフ(スタックドコラムチャート)。内訳を比較する際に有効。項目同士を点線で結ぶとより比較しやすい。右が集合縦棒グラフ(グループコラムチャート)。売上高、利益の推移などがわかりやすく表現できる。項目間に適度な隙間を作ると見やすくなる。
円グラフ(パイチャート)
円グラフ(パイチャート)は左のように一部を円から切り離すことで、全体の比率などがわかりやすくなる。また、右のようにドーナツ型のパイチャートに画像ソフトなどで少し手を加えると、比率と規模が一目で把握できるようになる。
縦棒グラフ(コラムチャート)と折れ線グラフ(ラインチャート)の組み合わせ
折れ線グラフ(ラインチャート)は他のチャートと組み合わせやすく、特に縦棒グラフ(コラムチャート)との親和性が高い。売上高と前年同月比伸び率などをこの形にすると、よりわかりやすくなる。

チャートに演出を加えよう
「滝グラフ(ウォーターフォールチャート)」

滝グラフ(ウォーターフォールチャート)
滝グラフ(ウォーターフォールチャート)であれば、例えば販売数の内訳に加え、未達成の量がどれくらいあるかを視覚的にわかりやすくできる。

滝グラフ(ウォーターフォールチャート)は、縦棒を項目ごとにバラして横にずらし、階段のように並べたチャートです。全体の量と、その内訳を対比させられるのが特徴になっています。これにより内訳を個別にクローズアップしながらチャートの解説がしやすく、重要な数字や内訳項目、内訳を積み重ねた結果を、相手に強く印象付けるプレゼンテーションができます。ここぞという時に使ってみてください。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2019年7月