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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.26 製品の“寿命”を見極めて
収益の最大化を目指す。

あらゆる製品に存在する「製品寿命」の4段階

嗜好の多様化が進んだ現在、製品を市場に投入する企業は、従来のようにひとつの製品を長期間にわたって大量に作り続けるビジネスモデルから、多品種少量生産へと移行しています。それによって、製品のライフサイクルの短期化も進行。つまり、消費者に受け入れられる製品を世の中に送り出して収益を上げるには、常に適切な製品を、適切な時期に、適切なコストで市場に投入することが、これまで以上に重要です。
どのような分野の製品であっても、その「寿命」はあります。製品が市場に登場してから役割を終えて姿を消すまでの需要の寿命を示したプロセスを「PLC(Product Life Cycle:プロダクトライフサイクル)」と呼びます。製品のPLCを把握することは、消費者への適切なアプローチ、販売の機会損失や大量在庫の問題への対策といった意味で、マーケティング戦略立案に有効です。そこで今回は、自社の製品がどの位置にいるかを見極め、対策を練る際に有用なPLCをご紹介します。

PLCは、製品の寿命を以下の4段階のステージに分けて考えるもので、市場成長率や資金需要が段階ごとに変化します。

【第1ステージ】 認知が重要となる「導入期」
製品が市場に登場して、消費者に認知されるステージ。認知度を高めるために、流通業者に製品を取り扱ってもらうべく働きかける、試供品を店頭で配布したりキャンペーンを行ったりというプロモーション活動を展開するなどの動きが重要。
【第2ステージ】 売上が成長し競合が出てくる「成長期」
消費者に認知されて、売上が伸びるステージ。成功を確認して、市場に参入してくる他社も現れる。後発を迎え撃つために、営業力の強化を図り、生産設備や戦略を見直すなどの対策が必要となる時期。
【第3ステージ】 売上の伸びが鈍化し競争が激化する「成熟期」
需要が落ち着き売上の伸びが鈍化してゆくステージ。新規参入企業は少ないが、価格競争などシェアの奪い合いがどんどん激化する時期。
【第4ステージ】 市場からの撤退も視野に入る「衰退期」
市場が縮小傾向となり、売上が低下するステージ。製品寿命の「晩年」で、市場からの撤退や新分野への参入を検討しなければならない時期。

なお、「導入期」と「衰退期」の間の期間を、「成長期」「成熟期」「飽和期」に3分割して、5段階で捉えるPLCの考え方もあります。

PLCにおける売上と利益の関係

製品の寿命と売上、利益の変化は、下図のように表せます。製品のマーケティング戦略を立案するにあたって、どこに収益のピークをもっていくかを策定するのに活用できます。

具体的には、図に示した各段階の特性を踏まえて、

  • 導入期では「製品の新規性を訴えて需要の開拓に注力」
  • 成長期では「製品の多様化によって市場の拡大を図る」
  • 成熟期では「新製品投入や新用途で市場再構成に挑戦」
  • 衰退期では「生産性の確保に努める」

といった戦略などが有効と考えられます。

PLCとマーケティングの戦略
PLCとマーケティング戦略を図で整理する場合は、横軸を時間列とし、縦軸に売上や利益、市場占有率などを記載するのが一般的。期間は大きく4つに分けてまとめて区切る。

効果的な指標だが、型は必ずしもひとつではない

PLCの考え方は、どのような業界分野でも適用できるとされ、製品企画段階で長期的戦略を構築する際や、製品の売上の変化や市場での動きに対応する際に活用するのに適しています。 またPLCは、ひとつの製品ではなく、製品が投入される各業界そのものにもあてはめて考えることができます。例えば、自動車やテレビといった業界は、現在の製品普及率から見て、今後の著しい市場拡大がほぼ見込めない「成熟期」(あるいは「飽和期」)にある、といえるのです。
そして、あらゆる分野に適用できる一方で、典型的な製品需要の分類になるため、一般的なもの以外の型が出てくるのもPLCの特徴です。例としては、猛然とブームになって記録的な売上を叩き出しながら、かなり短期間でブームが終わる「一発屋型」、ファッションのように一定のサイクルで人気が再燃して寿命が続く「サイクル型」、爆発的な人気にはならないもののいわゆる「定番品」と呼ばれて製品寿命が長くなる「持続型」などのタイプがそれにあたります。製品自体の特性や市場の動向を考慮に入れて、どのタイプのPLCかを判断するのがよいでしょう。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2019年12月