本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のOS、ブラウザーにアップデートしてください。

図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.28 要望や意見をマトリックスで整理し
対応の優先順位をあぶり出す。

2軸を設定したマトリックスに
各項目を配置していく

ビジネスシーンでは日常的に、顧客からの要望や現場担当者からの意見・提案が発生します。当然、事業を円滑に進めていくには、これらを放置せず、対応していくことが重要です。しかし、複数が同時に生じた場合は、人材や予算といったリソースを考えつつ優先順位をつけなければなりません。

今回ご紹介するのは、複数の要望や意見に対して、一定の基準をもとに優先順位をつける基本のフレームワーク※「ペイオフマトリックス」です。無駄なく優先順位をつけることで最高のパフォーマンスを発揮しましょう。
ペイオフマトリックスでは、まず重要となる2軸を設定します。縦軸に「成果」(「広告効果」「顧客満足度」「顧客数」などでもよい)、横軸に「難易度」(「コスト」「必要期間」などでもよい)を設定するのが一般的です。軸を設定したら、要望や意見を両基準で判断して表(マトリックス)に配置していきます。

※ フレームワーク・・・経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネス局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

ペイオフマトリックスでわける4つの領域

(1)「成果・高」×「難易度・易」の領域
実行による効果が高く、難易度も低めで取り組みやすいので、この領域を最優先して実行に移します。
(2)「成果・高」×「難易度・難」の領域
(3)「成果・低」×「難易度・易」の領域
(4)「成果・低」×「難易度・難」の領域

優先順位を考える上では、(2)のような、時間がかかっても効果のあるものや、要望があるものを優先するか、(3)のような、容易にできるものから実行して完了数を増やすかは、市場の状況や企業ポリシーなどを考慮に入れて決定します。

実行時の効果がそれほど期待できず、実行時に手間やコストがかかるものは、優先順位が低くなります。しかし、顧客満足度や収益性を高めるためには、無視していいわけではありません。後回しにしたとしても、実行の時期やコストを抑える方法などを検討してみるといいでしょう。

ペイオフマトリックスの例(旧製品のテコ入れアイデア)

しかし、ここで注意しなければならないのが、縦軸の「成果」、横軸の「難易度」の大小・高低は、主観的になりがちということです。ペイオフマトリックスを作成する際は、想定でもかまわないので、顧客のうちの何割程度が希望しているのか、実現に要する日数が何日なのか、といった具合に、できるかぎり数値換算しましょう。そうすることで、より適切な配置が可能になります。

アイデア会議やブレスト後の評価にも有効

ホワイトボードを用いてペイオフマトリックスを作成する際は、要望や意見を付箋に書き込んで貼っていくやり方をお勧めします。色の異なる付箋を用意し、要望の内容に応じて、「不具合への対応はピンク」、「改善要望は黄色」、「新機能追加要望は緑」といった具合に分けると、マトリックスに配置したときに、どのようなタイプの要望があるのか把握しやすくなります。

また、ペイオフマトリックスは、アイデア会議やブレーン・ストーミングで出されたアイデアを評価し実行の優先順位を決める手段としても使えます。ただし、アイデア会議やブレストとペイオフマトリックスの作業を同時に行うと、評価基準の高いアイデアに固執して自由な発想が遮断されてしまい、アイデアが画一化するおそれがあるので注意して活用しましょう。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2020年3月