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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.3 ハインリッヒの法則を応用して
クレームの背景を図解する。

ハインリッヒの法則とは何か?

医療現場や工場の壁には、必ずといって良いほど「ヒヤリ・ハット啓発」ポスターが張られています。小さな事故を減らして、大きな事故を未然に防ごうとするこの取り組みはハインリッヒの法則※1に基づくものです。
「1件の重大災害(死亡・重傷)が発生する背景には、29件の軽傷事故、さらに300件の怪我にまで至らなかった事故がある」という法則を、労働安全に関わる人であれば、ご存じの方も多いでしょう。
今回はハインリッヒの法則を応用して、重大なトラブルや、顧客の潜在的な不満をあぶり出すフレームワーク※2をご紹介します。

※1 アメリカの技師、ハーバード・ウィリアム・ハインリッヒ(1886~1962)が発表した労働安全の統計分析の中で登場し、この名がついた。1、29 、300の数字を取って「1:29:300の法則」とも呼ばれる。

※2 経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネスの局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

■ハインリッヒの法則を顧客のクレーム構造に当てはめる

1件のクレームから背後に潜むトラブルや不満を類推する

ハインリッヒの法則を、顧客から寄せられたクレームに当てはめると、上の図ができあがります。商品やサービスに対する重大なトラブルが1件あるとすれば、そこから29件のクレームが発生し、さらに背後には300件の顧客の不満が存在していると考えられるのです。
例えば「製品が使用中に故障した」というクレームがあったとしましょう。詳しいヒアリングの結果、想定外の使用方法で故障していたとしても、そこで終わらせてはいけません。もしかしたら、製品の耐久性が想定より低いという重大なトラブルが原因かもしれないのです。
また同時に、似た不満を抱える顧客の存在が考えられます。「小売店が不良品率の高さに不満を持っている」「運搬業者が必要以上に荷の扱いに気を遣わされている」といった不満が類推されるでしょう。
重大なトラブルを早期発見すべきことは言わずもがなで、加えて顧客の潜在的な不満を解消することも企業の大きなミッション。不満を感じた顧客は、その不満を平均9〜10人に伝えるという統計結果もあります※3。SNSが発達し、顧客の声が拡大しやすくなった現代において、表に現れにくい不満の発見と解決は、顧客サポートのキーポイントです。

※3 出典:ダイヤモンド社『サービス・マネジメント』(カール・アルブレヒト、ロン・ゼンケ共著)

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース・ティービー共同創業者兼取締役副社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービーを共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外で執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2017年3月