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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.30 ビジネス要素の相互関係を
図式化して課題解決に役立てる。

影響し合う各要素の関係を可視化し、事業運営上の判断をスムーズにする

ビジネスにおける意志決定の場面で、経営者、あるいは各事業等の担当者は、自分たちのビジネスサイクルのどの部分に力を注ぐべきか、判断を求められます。その時肝心なのは、自分たちのビジネスを俯瞰して全体像を把握すること。あらゆるビジネスは、さまざまな要素が関係し影響し合って成り立っているため、各要素の関係性を正確に把握していないと、正しい意志決定はできません。

ビジネスで影響し合う多様な要素の関係を図式化して考えるためのフレームワークに「インフルエンス・ダイアグラム」があります。インフルエンス・ダイアグラムを描くうえで欠かせないのが、ビジネスにおける各要素。インフルエンス・ダイアグラムではこれを「ノード」と呼び、ノードは以下の3種類に分類できます。

[意志決定ノード]
経営者や各事業等の担当者がコントロールできる要素。需要に応じた生産設備の規模や生産量などがこれにあたる。
[不確定ノード]
経営者や各事業等の担当者が直接コントロールできない要素。市場規模や販売量など。
[価値ノード]
ゴールになる要素。利益や顧客満足などの評価指標を表す。

インフルエンス・ダイアグラムを活用する際には、目指すべきゴールとなる価値ノードから書き、下の図の①→②→③のように、下から順に価値ノードに影響をおよぼすノードを書き加え、ノードの影響関係を矢印で表しながら書いていきます。お金や利益の流れで矢印を書くのではなく、「直接影響を与えるもの」という矢印を書くのがポイント。

ノードは大まかなものだけでシンプルに書くほうがわかりやすくなります。必要に応じて細かいノードを加えていくとよいでしょう。こうして図式化することにより、不確定ノードでコントロールできないものを変えようと時間を使ってしまったり、意思決定ノードで改善すべきことをなおざりにしてしまったりという判断ミスを防ぐことができるのです。

※ フレームワーク・・・経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネス局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

一般的な製造業のインフルエンス・ダイアグラムの例
不確定ノードは丸、意志決定ノードは四角、価値ノードは六角形かひし形を使って書き分けることで、ひと目で分類がわかりやすくなります。

課題の根本原因を探るインフルエンス・ダイアグラム

インフルエンス・ダイアグラムは、影響し合うノードの関係性から、何を考慮して何を判断すべきかを明確にするために役立ちますが、ビジネスにおける課題解決にも有効です。

例えば、商品へのクレームが多発した時、「納品前のチェックに不備があった」といった直接的な原因はあるわけですが、実はその原因にも「受注時に設定された納期が短すぎる」というような原因があり、さらに「原因の原因」をたどっていくと、問題全体を覆っている本質的な課題をあぶり出すことができるのです。そこから導き出された根本原因を集中的に改善することで、課題全体が解決へと導かれるでしょう。

インフルエンス・ダイアグラムはこのほかに、マーケティング戦略を立てる際のシナリオ設計時の思考ツール等にも応用可能です。関係者間の意識やイメージの共有にもなるので、事態が複雑化してきたさまざまな局面で使いやすいでしょう。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2020年6月