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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.33 ぼんやりしていた原因と結果の関係性を見える化し、
問題の解決のきっかけを探す。

一つの結果を生むのは一つの原因とはかぎらない

ビジネスにおける課題解決の手法の一つに「特性要因図」というものがあります。ここでいう「特性」とは、現時点で生じている「(ビジネスの)結果」、ひいては「解決したい課題」のことであり、「要因」は、「その結果をもたらすのに影響を与える要素」を指します。

特性要因図は、結果がどのようにしてもたらされたかを図式化したもので、東京大学の石川馨教授が考案しました。もともとは製造業の品質管理に用いられ、製造業では「QC活動における七つ道具の一つ」といわれています。この手法は、製造業だけでなく、あらゆるビジネスの結果と原因の関係性を表すのにも有効です。

あなたのビジネスにおける課題を想像してみてください。例えば、「自社製品の品質にばらつきが生じる」という課題があったとします。その要因となっているのは「製造設備の老朽化や不具合」かもしれないし、「オペレーターの経験不足」や「材料のばらつき」かもしれません。そして、それらすべてということも、可能性としては十分に考えられるでしょう。

一般的に、一つの結果を生み出す原因は、決して一つではないケースがほとんどといえます。いわば、さまざまな要因が複合的に作用して一つの結果につながっているのです。

これらの関係性を可視化した特性要因図は、その形が魚の骨に似ているところから「フィッシュボーンチャート」とも呼ばれます。

フィッシュボーンチャートを作成する4段階

1【結果(解決したい課題)】
ビジネスにおける、解決したい課題を決定します。チャートでは、事業プロセスの時間軸が「背骨」としてあり、「結果」がその先に、魚の頭のようにつながっているイメージです。
2【すぐに思いつく課題の要因】
1で挙げた課題に対する主な要因を書き出します。現時点で表面化している、つまりすぐに思いつくような大きな要因を挙げるのがポイント。チャートでは、この要因が「大骨」のように「背骨」につながっているイメージです。
3【主な要因の元となるサブ要因】
2で挙げた課題要因をつくる要因をさらに挙げます。要因の細分化、深掘りといった作業で、課題の解決策が具体的に思い浮かぶ段階まで落とし込むのが望ましいです。チャートでは、要因の要因となる、この「サブ要因」が「小骨」として「大骨」につながっているイメージです。
4【解決に導く要因の洗い出し】
2と3で挙げた要因のなかから、課題解決に強く影響すると考えられる要因を検討し洗い出していきます。色分けなどによって、それぞれの影響レベルが一目で識別できるようにすると、図の精度を高められます。

以上をもとに次の図を見てみましょう。

フィッシュボーンチャートの基本構造と具体例

仮説の検証こそ課題解決の最重要工程

フィッシュボーンチャートを用いるメリットは、複雑にからみ合った要因もモレやダブりなく階層構造で整理できること。これまでぼんやりと認識していた、あるいは頭の中でばらばらに散らばっていた事柄が整頓され、今まで意識していなかった要因にもたどりつくことができます。

また、課題と要因の関係性を可視化することで、チーム間、組織間で解決の糸口となる要因まで共有できる利点もあります。通常、はっきりと見えている「結果」に対して、要因や解決法に関しては、人によって捉え方が異なる場合が少なくないもの。課題までは共有できてもなかなか要因、解決法までは共有が難しいので、このメリットは大きいといえます。

しかし、このチャートを用いるうえで注意すべきなのが、作成したチャートに書かれた要因は「仮説」の段階である、という点です。課題に対する実際の改善活動や対策を通じて、仮説の検証を必ず行ってください。

要因が多く挙げられる場合は、すべてを関係づけようとしないで、まずは影響度が高いと考えられるものを絞り込んで検証を行い、対策の効果がなければ、次の要因の検証を行う、といった具合に進めてみるのが、フィッシュボーンチャートの上手な運用のコツといえるでしょう。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービー(現ショーケース)を共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2020年12月