「とりあえず、全体的に改善しよう」
それって本当に効果的?
会社の各部門が目標を設定して定期的な改善報告を行い、努力を続けているのにもかかわらず、会社の業績がいっこうに上向かない……。このような状況に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。そういったケースは実のところ、さまざまなビジネスシーンで頻繁に起こっています。
しかしなぜ、そのような事態が起きてしまうのでしょうか。
その答えとなる一つのキーワードに、「TOC」なる生産管理のフレームワーク※があります。TOCとは「Theory of Constraints」のことで、「制約条件の理論」という意味です。
この制約条件とは「ボトルネック」ともいい、「全体に影響を及ぼすレベルの問題要因」を指しています。ビジネスにおける、原材料の段階から、商品やサービスが消費者に届くまでの一連の流れ(サプライチェーン)のなかで、業務の進行を制限してしまう要素が、制約条件です。
TOCを考案したのは、イスラエルの物理学者であるエリヤフ・ゴールドラット博士です。自ら生産スケジュールソフトの販売を手がけた人物で、いわば生産管理のプロフェッショナル。『ザ・ゴール』というビジネス小説でその考え方をまとめています。この小説は、日本でも約100万部のヒットを記録しました。
この理論が主眼をおいているのが、工場の生産スケジューリングが生産能力の最も低い工程、つまりボトルネック(制約条件)に合っているということ。よって、ボトルネックとなっている部分を特定して改善することが重要であり、そうすればプロセス全体のアウトプットの改善につながる、としているのです。それ以外の改善は、時間や経費のロスにつながる、とさえ説いています。つまり、従来のQC活動のような総花的な改善を目指すより、制約条件に対して優先的、重点的に改善に取り組む活動こそが効果的だと指摘しているのです。
この考え方は、着想元であるサプライチェーンの改善だけではなく、さまざまなビジネスプロセスに応用できます。
※フレームワークとは、経営戦略や業務改善など、さまざまなビジネス局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。