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実践! ビジネスボイトレ講座


仕事の成果につながる、「いい声」を手に入れる方法を紹介します。

vol.05 声のこもりを解消!
美しく響く発声のためのトレーニングとは。

対面でのコミュニケーションに、聞き取りやすい声は必須

オンライン会議ツールを使った営業活動が当たり前になり、お客さまと対面する機会はめっきり減りました。それでも、手に取ってもらわなければ魅力が伝わりにくい商品について説明するときや、重要な商談のクロージングなど、お客さまと面と向かって話さなければならない機会もあります。

そんな数少ない対面でのコミュニケーションの場で、自分の思いや、製品・サービスの魅力を強く訴えかけるためには、はっきりとした、聞き取りやすい声を発するのが望ましいことは言うまでもありません。

ところが、口をあまり大きく開けずに話す習慣がついてしまっている人の場合、どうしても言葉がゴニョゴニョとして、声が小さくなってしまうことが多いようです。どんなに魅力的な製品・サービスの説明でも、何を言っているのか聞き取りにくいと、相手が聞く気を失ってしまい、せっかくの商談が台無しになってしまうかもしれません。

あまり口を開けず、ゴニョゴニョ話してしまう人が増えているのは、パソコンやオンライン会議ツールの性能が向上していることも原因の一つではないでしょうか。

最近のパソコンはマイクの性能が高いので、ボソボソした声でもきちんと声を拾ってくれます。オンライン会議ツールも、声をしっかり伝えてくれるようになっているので、はっきりとした声を出さなくても、言っていることは相手の耳に届きます。

しかし、対面のコミュニケーションではそうはいきません。聞き取りにくい声でしゃべることは、自分に対する相手の印象や、営業成績にも大きく影響しかねないのですから、はっきりとした声で会話ができるようにトレーニングをしてみましょう。

意外とできていないかも? 母音を活用して、口をしっかり開ける

はっきりとした声を出すためのポイントは、とにかく口を大きく開くことです。おちょぼ口のように、口の開きが小さいと、どうしてもボソボソとした声になってしまいます。

口をしっかり大きく開いて話せるようになるためには、母音の発声をトレーニングするのが効果的です。

ご存じのとおり、日本語は「あ・い・う・え・お」の母音と、子音が組み合わさってできています。五十音とは言いますが、あ行以外は「子音+母音」の組み合わせです。つまり、五十音を声に出したときの口の形も、「あ・い・う・え・お」の5種類になるわけです。

例えば、「い」と声に出したときと、「り」と声に出したときの口の形は同じです。

そのため、五十音のどの音を出すにしても、「あ・い・う・え・お」の母音の口の開きがきちんとできていることが大切なのです。

口を大きく開いて母音を発声できるようになれば、あらゆる言葉をはっきりと発することができるようになります。

母音をはっきりと発声するトレーニングは、次のように行います。

  1. 鏡を見ながら、まずニコッと笑う。
  2. その顔のまま、歯と歯の間を軽く開けて、「い」と発声する。
  3. そこから口を少し縦に開き、「え」と発声する。
  4. 口を大きく縦に開き、「あ」と発声する。
  5. 口をすぼめ気味にして、「お」と発声する。
  6. 口をしっかりすぼめて、「う」と発声する。

「あ・い・う・え・お」ではなく、口の開き方が近い順に「い・え・あ・お・う」と発声するのがポイントです。それぞれ3秒ずつ発声し、これを5セット繰り返します。

最初にニコッと笑うのは、口角が上がり、声が少し高くなる効果があるからです。

母音の口の形のイメージ

このトレーニングをする際は、必ず鏡を見ながら、口の開き具合をチェックしてみてください。自分では大きく開いているつもりでも、意外と開いていないことが多いものです。

慣れてきたら、「き・け・か・こ・く」「し・せ・さ・そ・す」と、「あ」から「な」行までの5行分を行ってみましょう。余裕があれば、全行試してみるのもいいですね。

こもらない声を手に入れる! 「マーライオン発声」とは?

もう一つ、声がよく通るようになるための発声法を紹介します。シンガポールの観光名物、マーライオン像(上半身がライオン、下半身が魚の姿をした架空の生物)にヒントを得た「マーライオン発声」です。

これは、声をのどだけでなく、体全体で響かせるようにするための発声法です。人間の体には、咽頭、口腔、鼻腔など、声が共鳴する多くの空洞があります。頭蓋骨そのものも声を共鳴させる大きな空洞です。

これらの空洞に声を響かせることで、こもらず、よく通る声を出せるようになります。

具体的なトレーニング方法は次のとおりです。

  1. まっすぐに立ち、左手はおなかの上に置く。
  2. 右手で、「空気がおなかから出て、気管を通り、頭に響いて口からまっすぐに出ていく流れ」(マーライオンが口から水を吐く様子)を表現しながら(下図参照)、「マ――――!」と2秒かけて明るく声を出す。

これを5回繰り返してみてください。

こもらない声を出すトレーニング方法

このトレーニングは、五十音の中でも鼻音(鼻に響かせることで声になる音)で行うことがポイントです。鼻音には「な行」や「ま行」がありますが、特に「ま行」は音を出すときに両唇を一旦閉じてから開くため、口の筋肉も使います。長引くマスク生活で顔や口周りの筋肉を使わないことが増えているので、意図的に口周りの筋肉を刺激することができるほか、滑舌の練習にもなります。

なお、鼻に響く感覚が分かりやすいのは、「ま」と「あ」です。試しに鼻をつまみ、それぞれ声を出してみてください。「ま」は鼻に響き、「あ」は響いていないことを感じられるでしょう。

何回か練習するうちに、頭に響かせながら声を出す感覚がつかめるようになるはずです。通りのよい声を手に入れるために、ぜひ試してみてください。

「いい声」になるためのコツ

大きく口を開いて
「い・え・あ・お・う」
マーライオンになったつもりで
声を出すとこもった声が
よく響くようになる

PROFILE

秋竹 朋子
秋竹 朋子あきたけ・ともこ
ビジネスボイストレーニングスクール「ビジヴォ」代表。東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。ビジヴォの代表として、「声」「話し方」に問題を抱えるビジネスパーソンの指導を実施。音楽家・声楽家ならではの聴力と技術を駆使した、日本初「超絶対音感」によるボイストレーニングが話題を呼び、TVほかマスコミ出演も多数。東京を拠点に全国各地で企業研修やセミナーを行う。著書に『1分間声トレ』『ビジネスがうまくいく発声法』など。

記事公開:2022年11月