デジタルカメラや複写機など、
「光学」を駆使したモノ作りは日本の得意分野のひとつ。
そこで欠かせないアイテムが、色や画像を機器がしっかり
認識しているかを評価する富士フイルムの「テストチャート」です。
写真に対する長年の追究で培った銀塩写真技術が生み出す
業界屈指の精密性や均一性は、今、大きな注目を集めています。
What's this?
アナログ写真技術が
車の未来を切り拓く。
光学機器の製造現場で欠かせない
アイテム、「テストチャート」。
「テストチャート」。初めて聞く人も多いのではないでしょうか。デジタルカメラや複写機をはじめ、画像を読み取り、再現する光学機器の開発・製造過程で、性能や品質のムラを事前にチェックするために使われる分析・検証ツールのひとつです。
デジタルカメラの品質チェックであれば、カメラでテストチャートを撮影して現像したものを、実物のテストチャートと比較します。もしカメラの品質に異常があれば、テストチャートとは異なる再現となります。テストチャートで測れるものは、カラーの他に、色のグラデーション、つまり「階調」と、読み取れる画像の細かさ、つまり「解像力」の3つ。目視だけでは区別が難しいような微妙な色の違いは、色をデジタルで数値化し、それによって比較することも可能です。
■ 「テストチャート」に関する詳しい情報はこちら
■富士フイルムが製造するテストチャートのイメージサンプル
一枚のテストチャートには、
写真製造技術の多くのノウハウが。
「テストチャート」と呼ばれる製品は、富士フイルム以外にも複数のメーカーが製造しています。それらの中でも、富士フイルムのテストチャートの圧倒的に優れている点がクオリティー。その理由は、他のテストチャートの多くがオフセット印刷によって製造されているのに対し、富士フイルムはアナログ写真技術を用いて製造しているからです。
オフセット印刷は、「青・赤・黄・黒」の非常に小さなドット(網点と言います)によって色を再現しています。大量に印刷するには優れているのですが、本来の色を4色に分解して再現するために、実物の色とは若干違ってしまいます。また、網点のサイズよりも小さい画像や線を再現することもできません。
一方で富士フイルムのテストチャートは、ナノレベルの微細な銀粒子や色素で画像を形成するために、超高精細。非常に滑らかな階調もしっかり再現できます。だから、印刷機で製造したテストチャートよりも、はるかに正確な品質評価が可能になるのです。
「だったら、他のメーカーも写真と同じ原理で作れば良いのでは?」。
いいえ、ことはそう簡単ではありません。
例えば、一見何の変哲も無いように見えるグレー1色のカラーチャート。富士フイルム製品の技術的な特長は、ただひたすら均質にグレーだ、ということ。
つまりムラがまったく無いのです。これを実現するには、印画紙の製品精度だけでなく、感光させる際の光の当てぐあいをはじめ、長年培った写真製造技術を結集し、さらに写真現像のプロが微妙な調整を加えなければ不可能です。その上、同じ品質のチャートを繰り返し製造することなど、他のメーカーでは非常に困難。
言ってみれば、富士フイルムのテストチャートは究極の匠の技から生み出された製品なのです。そのレベルは国内の画像技術の研究者が集う「日本画像学会」が頒布するテストチャートに採用されるほど。つまり、画像のプロからもお墨付きをいただいているのです。
一方、小ロットの製造が苦手な印刷と違って、お客さまごとにオリジナルのテストチャートを製造しやすいのも富士フイルムの強みです。写真技術を用いれば、テストの内容に合わせて最適なサイズや仕上がりを、速く、リーズナブルに提案することが可能。まさに、加速する多品種・小ロット時代にマッチした製造プロセスなのです。
デジタル機器が進化するほど、
脚光を浴びる富士フイルムのテストチャート。
このように、アナログ写真のプロによる職人芸から生まれるテストチャートですが、意外なことに最も評価されているのは、デジタルカメラをはじめとする最先端のデジタル産業です。どこよりも均質できめ細かく、滑らかな富士フイルムのテストチャートは、ハイクオリティーな複写機やスマートフォン用カメラ、顕微鏡など、最先端のデジタル機器の製造現場で活躍しているのです。
そして近年需要が高まっているのが、車載用カメラ業界です。今後デジタル化が進むと予想される自動車には、一説によると1台に10以上のカメラが搭載されるとも言われています。ほんのわずかなカメラの不具合が大事故につながる恐れもあり、そのすべてに高いクオリティーが求められているのです。
その他にも防犯カメラなど、富士フイルムのテストチャートは安全な生活を支えるデジタルデバイスの製造に欠かせないアイテムとなっています。アナログ技術だから実現できた富士フイルムのテストチャートは、デジタル技術が進化すればするほど、ますます存在価値を高め、注目を集めることでしょう。
【取材協力/富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 イメージテック事業部 松下太輔・松本正士・野嶋潤子】
記事公開:2017年7月
情報は公開時点のものです