富士フイルムでは、個人や物品などの情報を認識・管理する
ICT製品やソリューションを提供しています。
一つはこれまでのWhat's this?でもご紹介した
CIMSAに代表される「IC・IDカードソリューション」。
そして二つ目が無線通信を軸にした「RFIDソリューション」です。
今回は、その中でも「-196℃」という
極寒の世界で用いられる、究極の製品をご紹介します。
What's this?
-196℃の世界でも生き続ける!
ICマルチジャケット®が
バイオバンキングに
イノベーションをもたらす。
無線で情報を瞬時にやり取り。
あなたの身近にも、RFID。
RFIDとは、Radio Frequency IDentification の略で、ICチップに記録された情報を、無線通信によって読み書きする技術です。皆さんに最も身近なRFIDといえば、Suicaに代表される鉄道用ICカード。読み取り部にピッとカードをかざした瞬間、無線によって乗車・降車履歴などの情報が瞬時に送信されています。カードを定期入れの内側に入れた状態でも情報がやり取りできるのも、無線ならではの特徴。バーコードを光学的に読み取るバーコードシステムでは、こう簡単には検札できません。また、バーコードと異なるRFIDのもう一つの特徴は、複数の情報を一括で処理できるということ。この機能を利用し、最近ではアパレルショップでのセルフレジなどにも活用されています。大型のボックスに購入した商品のタグを入れると、その情報を無線で読み取り、あっという間に商品数や合計金額が表示されるのです。業務の効率化だけでなく、盗難防止などにも使われています。
障害物があっても無線だから読み取れる。複数の情報を一括で処理できる――RFIDならではの二つの特徴を活かし、富士フイルムは幅広い業界に製品を提供しています。その中でも2016年に発表し、業界に大きな驚きを与えたのが、医療現場で細胞や病原体などの検体サンプルを管理するシステム「R-ISM®(アール・イズム)」でした。
■ 富士フイルムの「RFIDソリューション」に関する情報はこちらから
アナログ管理に危機感を抱く
医療従事者に希望を。
再生医療に代表されるように、今日の医療技術は急速に発展しています。これに伴い、医療機関が取り扱うサンプルの量も増加の一途をたどり続けてきました。こうした状況に危機感を募らせていたのが、サンプルを取り扱う現場のスタッフの方々でした。というのも、医療技術は進化しているのに、サンプルを取り扱うガイドラインは従来のまま、つまり、ほとんどの場面で人力による管理を行っていたのです。手書きのラベルを貼ったものを二人のスタッフがダブルチェックしたり、表計算ソフトで自前のデータベースを作成し、スタッフが手入力で管理したり……。どの医療機関も細心の注意はしていたものの、サンプル量が増えれば管理に時間がかかり、かつミスを犯す確率も増えてしまいます。これに対してまず登場したのが接触型のバーコードを用いたソリューションでした。しかしながら、サンプルは凍結保存されるためチューブに霜が付いてしまい、接触型のバーコードリーダでは情報を読み取ることができません。また、一つひとつバーコードで読み取るうちに、チューブの温度が上昇してしまうリスクもあります。 これを一挙に解決したのが、富士フイルムの「R-ISM®」でした。ICタグが取り付けられたICマルチジャケット®をサンプルが入ったチューブに装着し、市販品のフリーズボックスに複数個セットして冷凍装置に保存。取り出してから専用のICタグリーダの上に置けば、瞬時に情報を読み取り、サンプル管理ソフトウェア上に情報が表示されるのです。 システムを構成するのは、①ICマルチジャケット®、②ICタグリーダ、そして③サンプル管理ソフトウェアのたった三つ。必要最低限のPC環境さえあれば導入はとても簡単、ソフトウェア内の項目のカスタマイズもスタッフが容易に行うことができます。こうして、RFID の特徴を活かしたR-ISM®により、医療現場では、「いつ、誰が、どこに」サンプルを保管したかが、正確に、素早く管理できるようになりました。2016年に発表されたR-ISM®は、国内の医療機関や製薬会社などに導入されており、「作業の確実性と効率が大きく改善された」という声を多くいただいています。
-196℃に耐えられる
富士フイルムのICマルチジャケット®
細胞や病原体などのサンプルは凍結保存されている、ということは先ほどお伝えしましたが、その温度がどれくらいなのか想像がつきますか? サンプルが保管されている一般的な空間は、なんと-196℃。あらゆるものが凍り付く世界です。そんな過酷な状況でも富士フイルムのICマルチジャケット®は、凍結したままICタグリーダに情報を送信できるのです。さらに、ICマルチジャケット®は、サンプル入りチューブから外れないよう凍結後の収縮分を計算に入れてデザインされ、そして、万が一ICタグが壊れた際にもデータのひも付けができるように、ジャケットにタグの番号も刻印されるなど安全への配慮が徹底されています。
これらが実現できたのは、富士フイルムがこれまで挑戦し続けてきた再生医療の知見があったからこそ。そう、R-ISM®はICタグや無線通信のテクノロジーだけでなく、事業部を超えた「チーム富士フイルム」の賜物だったのです。
あらゆる生命活動を休止させる低温の世界で、今日も――。R-ISM®のICマルチジャケット®は、いつの日か使命を果たすため、冷凍装置の中でじっとその時を待っているのです。
■ 「R-ISM®」に関する情報はこちらから
【取材協力/富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 イメージテック事業部】
記事公開:2017年9月
情報は公開時点のものです