国境や港湾、鉄道、道路や河川などの
社会インフラの多様なシーンで、
事故や犯罪の防止に貢献する
遠距離監視用システムが稼働しています。
そこに求められるのは、より遠くからよりクリアで
視認性の高い画像を得るためのレンズです。
今回は、富士フイルム独自の光学防振機能を
搭載したフルHD対応レンズの実力を
ほんのちょっぴりご紹介します。
What's this?
桁違いの距離まで見える!
すべての技術は、
国家レベルの
安全・安心のために。
遠距離監視のニーズに応えるため
高倍率、高解像、長焦点を実現
富士フイルムは長年、放送用テレビカメラのレンズ開発を行ってきました。現在ではスポーツ中継やロケ、スタジオ撮影まで、幅広い現場に向けてラインナップを提供しています。一方、ここで蓄積したズームや高画質対応などの技術を生かして、1980年代前半より開発を進めてきたもうひとつの分野があります。それが、人々が安全に暮らすために欠かせない存在である遠距離監視用レンズです。
監視カメラといえば、街路や建物の中にある防犯カメラが身近ですが、実は私たちが日常的に目にすることのない場所においても、重要な役割を果たしています。たとえば、交通インフラの状態監視から、河川やダムなどの防災監視、国境や港湾に侵入する不審者、不審船の監視など、多岐にわたります。このように、公共の安全を守るために必要な高倍率・高解像・長焦点のニーズに応えるハイエンドなレンズを、富士フイルムは創り続けているのです。
特に近年、業界から大きな注目を集めているのが、焦点距離1000mm、60倍の高倍率を誇り、遠距離監視用として世界で初めて光学防振機能を搭載したフルHD対応モデルの「D60x16.7SR4」。精密機器でありながら、過酷な環境の下で使用しても、常に安定した画像を撮影できる遠距離監視用レンズです。一般的なカメラ向けのレンズとは異なるレベルのスペックを備えた遠距離監視用レンズの世界を、そっと教えましょう。
遠距離監視用レンズとして世界初の
光学防振機能でぶれない画像
遠距離監視用レンズには、富士フイルムの誇る先進技術の数々が集積されています。その撮影距離は、なんと数km以上先、通常の一眼レフレンズ用35mm判の焦点距離に換算すると5000mm以上にもなります。このような超長焦点・高倍率ズームレンズを実現するための大きな課題のひとつが色収差。光は色によって屈折率が異なるため、レンズを通過した光が結像する際、色ごとに結像位置がずれることで色のにじみ(色収差)が発生します。通常、色収差は焦点距離が長くなればなるほど、拡大し、高倍率になればなるほど、広い範囲の焦点距離で発生しやすくなります。
「D60x16.7SR4」では拡大しがちな色収差の補正のため、Super ED(Extra-low Dispersion)ガラスを採用し最適な箇所に配置しています。また、高度な光学設計に基づき、多様なレンズを組み合わせることにより、高倍率ズーム全域で色収差を抑えているのです。
加えて、一般的なデジカメのレンズの倍近い枚数のレンズを精緻に支えるメカ機構と、それを正確に組み上げる製造技術も不可欠です。これらの技術を結集することで、超長焦点かつ高倍率ズームレンズが実現されています。
また、レンズ枚数の増加により大型化してしまうと既存の監視用システムの筐体に入らなくなってしまうことを配慮し、従来の焦点距離750mmレンズとほぼ変わらない大きさで1000mmまでのズーム全域でフルHD画質を達成しています。
中でも特筆すべきは、風や振動による映像のブレを防ぐために、60倍監視用ズームレンズとしては世界初となる光学式防振機能(OIS=Optical Image Stabilization)を搭載していること。超望遠時には、風などによる微細な振動が画像の大きなブレとなって表れがちですが、「D60x16.7SR4」はレンズ内のセンサーでブレを検知し、補正用のレンズを自動的に動かしてブレを抑えます。レンズ自体が光学的に補正するため、リアルタイムで安定的な映像を保持できるのです。さらに、気温が大きく変化するとレンズとメカが微細に膨張・縮小し、レンズの屈折率も影響を受けるため、ピントずれにつながります。これらの現象への対策として、温度センサーの情報に基づいてレンズの位置を最適化する「温度補正機構」を搭載しています。
昼間は可視光、夜は近赤外光で
変わらずクリアな映像を確保
一般的なカメラのレンズであれば、写真作品としての芸術性を高めるためいわゆる「ボケ味」のようにあえてピントを不鮮明にするテクニックなどもありますが、監視用レンズにとって、不鮮明さは極力排除しなければならないもの。さらに、一瞬を切り取るカメラと違って、監視用カメラは24時間365日、休まず安定した画質の動画を撮り続けなくてはなりません。しかも昼間は可視光で撮影できますが、夜間は肉眼では見えない近赤外光を照明として用い、その環境下で撮影する必要があります。可視光と近赤外光では光の波長が異なるため、そのままでは、焦点面がずれてしまいます。そのため、「D60x16.7SR4」には、「光学デイナイト設計」を導入。特殊光学ガラスの採用により、光源の波長が変化しても常に焦点面がずれないよう補正します。こうした性能があるからこそ、国土や公共機関の安全を守る施設から高く評価されているのです。
遠距離監視用レンズを企画・開発する難しさは、お客さまの使用条件を見通しながら商品開発を進めなければならないところにあります。国境や港湾などの監視は、国家の安全保障に関わる案件のため、機密性が高く、使用条件などの詳しい情報は開示されませんが、サプライヤーとしての高い信頼性を保たねばなりません。そうした状況でも富士フイルムは、お客様が使用される場所、距離、天候、監視対象を想定して、レンズに求められる機能、性能、サービスを先取りし、厳しい撮影条件でも、監視対象をよりクリアに捉え続けるためのソリューションと信頼性を提案、実現することで、国や社会の安全に貢献しているのです。
■ 「監視カメラ用レンズ」に関する情報はこちら
【取材協力/富士フイルム株式会社 光学・電子映像事業部】
記事公開:2017年12月
情報は公開時点のものです