今や生活の一部になった、液晶ディスプレイを用いた家電製品。
そこに用いられているのが、光を曲げずにまっすぐに運ぶ
「フジタック」というフィルムです。
1970年代後半より用いられ、現在でも圧倒的シェアを誇るフジタック。
液晶ディスプレイの仕組みを交えながら、
選ばれ続ける理由をお話しいたします。
What's this?
「光をまっすぐ運ぶ」技術、
あなたの液晶画面にも!?
テレビやパソコン、スマートフォン。
液晶ディスプレイ製品の普及を支えるフジタック。
かつてリビングに置かれた家電製品の主役といえば、重厚なブラウン管テレビでした。しかし現在その姿を見る機会はほぼなくなり、代わりに登場したのが「液晶テレビ」です。高嶺の花だった液晶テレビもエレクトロニクス技術の進歩により、誰もが購入できる時代へ。同時にノート型パソコンやスマートフォンなども次々と登場、液晶ディスプレイを用いた製品は、今や生活の必需品となっています。
そんな液晶ディスプレイ製品の急速な普及に貢献してきたのが、富士フイルムの「フジタック」というフィルム製品です。タックとは、セルロースという天然の高分子の加工技術によってつくられた化合物、TAC(tri acetyl cellulose:トリアセチルセルロース)のこと。このフジタック、もともとは液晶ディスプレイのためではなく、写真フィルムの支持体(写真フィルムの基底となる透明で薄い膜)として製造されてきました。最大の特長は、光をまっすぐに運ぶ透明性と平滑性です。そこに目を付けたのが、液晶パネルメーカー。1970年代後半、急速に普及を遂げた液晶画面搭載型の電卓を皮切りに、フジタックは様々な液晶ディスプレイに製品に用いられるようになります。ではなぜ、光をまっすぐに運ぶフィルムが液晶ディスプレイにとって不可欠だったのでしょう?
液晶ディスプレイの要の「偏光板」は弱く、
保護する膜が必要だった。
くねくねと波のように体を曲げて前進するヘビ。光もヘビと同じく波のように振動しながら前進しています。ただしヘビと違うのは、光はタテ・ヨコ・ナナメとあらゆる方向に振動しながら進んでいること。液晶ディスプレイは、この光の波を巧みにコントロールする技術によって生み出された製品です。その構造を簡単に説明すると、バックライトから照射された光が、「偏光板A」→「液晶装置」→「カラーフィルター」→「偏光板B」という順に通過し、画像や文字を映し出すというもの。「偏光板」とは縞模様状に細かい切れ目が入った板のことで、光が偏光板に当たると縞に平行な波だけが透過できます。この原理を応用し、2種類の偏光板を上手に組み合わせることで、一定方向の光の波だけを前面のカラーフィルターに届け、画面上に文字やカラー画像を表示しているのです。
このように偏光板は、光の波をコントロールするとても重要な役割を担っていますが、薄くて弱いため補強する膜が必要でした。しかし保護膜が少しでも曇っていたり凸凹であったりすれば、偏光板を通る光が屈折してしまい、画像に影響が出てしまいます。もう、お分かりですよね。偏光板をしっかり守りながら、光もまっすぐに運んでくれる。その素材に、フジタックが最適だったのです。
原料のセルロースは天然素材であるために異物が混入しやすく、透明性や平滑性を実現するのは非常に難しかったのですが、富士フイルムは異物を除去する技術を確立し、クリアで均一なフィルムを製造することに成功しました。これと同レベルのTACフィルムは、世界でも数社しか作ることができることができません。まさに富士フイルムのお家芸であるフジタック、国内外の液晶パネルメーカーに高く評価され、世界シェアは実に70%*にものぼります。
■ 「フジタック」の特徴を詳しい情報はこちら
独自のTAC技術から、
高機能液晶関連フィルムが次々登場。
富士フイルムはフジタック以外にも液晶ディスプレイの品質向上に貢献するフィルムを複数製造しています。一つ目が、液晶画面が正しく表示される範囲、すなわち視野角を拡大する「WV(ワイドビュー)フィルム」。パソコンのモニターを斜めから覗き込んだら画面が暗くなって困った、という経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。その原因は「偏光板」からわずかに漏れた光。これにより、画面上のコントラストが低下してしまうのです。WVフィルムには、そんな光の漏れを補正する円盤状の特殊な液晶がコーティングされており、視野角は160度まで拡大されました。このWVフィルムの世界シェアは、現在なんと100%*。圧倒的な独自技術で、世界の液晶ディスプレイの品質向上に貢献しています。
また、フジタックに特殊な層をコーティングした反射防止フィルムが、「CVフィルム」です。明るい外光の下での映り込みを抑え視認性が向上、黒をよりリアルに表現できるようになりました。汚れが付着しにくく摩擦にも強いため、ディスプレイ表面のふき掃除も安心して行うことができます。この2つのフィルム、どちらも「コーティング」という技術が用いられていますが、原点にあるのが厚さ10マイクロメートル以下の薄い層を均一にコーティングする写真フィルム製造技術。富士フイルムが長年培ってきたミクロレベルの技術が、ここにも応用されているのです。
テレビやパソコン、スマートフォンを始め、液晶画面を用いた家電製品は、今後ますます増え続けていくことでしょう。こうした時代の流れに対応すべく、富士フイルムは液晶ディスプレイ用フィルムの生産体制を継続的に強化してきました。2005年にはフジタックの生産拠点を熊本県菊陽町に設立、2012年にはフジタックの高速生産技術が高く評価をされ、日本化学工業協会より「日化協技術賞 総合賞」を受賞しました。2016年の熊本地震でも本社と連携しながら迅速に復旧作業を行い、わずか2週間で生産を再開させました。多くのパネルメーカー、そして消費者が私たちのフィルムを待っている、という強い思いが現地スタッフを勇気付け、行動へと促したのです。
ユーザーには決して知られることのないフジタック。しかしそこには、「高品質の製品を供給し続ける」という富士フイルムの強い使命感が込められているのです。
■ 「WVフィルム」の特徴をもっと詳しく
* 公開時点当社調べ
記事公開:2017年1月
情報は公開時点のものです