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What's this?

未知の可能性に「光」を!
モノづくりを変える隠れた主役

今回の主役は、好きなタイミングで紫外線を当てれば
スピーディーに合成樹脂を固めてくれる「光塩基発生剤」。
モノづくりを革新する可能性を秘めたそのパワーを
お伝えするために、まずは樹脂の状態を表す
モノマーとポリマーという言葉についてご説明しましょう。

すべての合成樹脂製品は
モノマーが集まったポリマー!?

ペットボトルの素材であるPET(ポリエチレンテレフタレート)やポリエチレンなどの合成樹脂は、モノマー(単量体)が手をつないでポリマー(重合体)状態になったものです。モノは“一つ”、ポリは“多数”を意味する言葉です。エチレンというモノマーが「重合」という化学反応で固く結び付き、ポリエチレンというポリマーになります。身近なところでは、シルクや植物繊維の主成分・セルロースなどが天然のポリマーです。
モノマーがポリマーになるきっかけを作る「重合開始剤」の一つが、今回ご紹介する「光塩基発生剤」です。これを液体のモノマーの中に加え、紫外線(UV)を当てると、「塩基」という化合物が発生。この塩基が、重合をスタートさせ、液体だったモノマーが固体のポリマーに変わるのです。
半導体の製造では、内部の金属配線を作る際、合成樹脂が入った「フォトレジスト」という薬剤の中で起きる、重合反応を利用しています。今、この用途で使われている重合開始剤の主流は、光を当てて発生する「酸」でポリマーを作る「光酸発生剤」です。しかし、酸は金属配線の腐食(サビ)を起こすことが問題になっていました。これを解決するため、2000年ごろから開発されてきたのが「光塩基発生剤」です。

■ モノマーが重合により結合してポリマーに

■ 光(UV)の照射で強塩基が発生する化合物

酸をつくらない光塩基発生剤は
優れたコーティング剤や接着剤にも

光酸発生剤と比べ、金属腐食の心配がないうえ、固まった樹脂の劣化も少ないのが特徴の「光塩基発生剤」。ほかにも密着性や強度などの優れた特性や生産面でのメリットがあり、コーティング剤や接着剤、印刷用インキ、歯の接着材料など、多様なモノづくりへの利用が期待されているのです。
光塩基発生剤の開発元である富士フイルム和光純薬株式会社は、前身の和光純薬工業株式会社の時代から、光や熱で反応する多種多様な「重合開始剤」(アゾ重合開始剤、光酸発生剤)を作ってきた、業界でも屈指の“開始剤の総合メーカー”。2008年に光塩基発生剤を製品化し、2010年からはブレイクスルーを目指し、東京理科大学との共同研究を始めました。
その結果、光酸発生剤と比べて、金属や金属酸化物と非常に密着性が高い接着剤の製造や、より高い強度を発揮するポリカーボネートのコーティング剤の製造などへの応用が期待できるまでになりました。また、コーティング用途では、従来は熱と数日の時間が必要だったものが、光塩基発生剤ならなんと数十分で固まるなど、飛躍的な生産性アップの可能性が。酸性の条件では固まりにくかった樹脂が光塩基発生剤によって活用できるようになれば、画期的な新材料が生まれるかもしれません。

「光塩基発生剤」に関する情報はこちら

■ フォトレジスト工程

開発者の情熱と努力が結実した
「世の中にないものを創る」という夢

とはいえ重合開始剤は、業界全体で見ると、まだ熱や酸を使った重合が主流で、光塩基発生剤のシェアは小さなもの。そんな中で、富士フイルム和光純薬で光塩基発生剤を進化させたのは、開発者たちの「世の中にはない、新たな可能性を秘めたものを創りたい」というマインドと情熱です。
そして実は富士フイルム、80年以上にわたり銀塩写真事業を進める中で、多数の重合開始剤や、色素、各種モノマーなどの研究開発を行ってきました。2017年に富士フイルム和光純薬がグループの一員になったことから、シナジーを発揮して研究開発はさらに加速しています。
多種多様な開始剤や化合物の開発ノウハウを生かし、お客さまのニーズに合わせた技術的なコンサルティングや受託製造を行いながら、「お客さまと一緒に新しい製品を創り出せる」のが強みです。
また現在は、光の照射が届きにくい条件でも、樹脂を効率的に強く固められる光塩基発生剤の開発にも成功。複雑な形状の自動車用電子部品などの製造にも役立つと期待されています。
今後、社会全体がスマート化していく中で、エネルギー消費量が少なく、熱よりも重合の開始を制御しやすく、酸の影響もなくせる光塩基発生剤へのシフトが進むと予想されています。開発チームの次の目標は、ポリマーの重合プロセスにおける熱と光のシェアを逆転することです。

■ 光塩基発生剤による硬化の用途例

【取材協力/富士フイルム和光純薬株式会社 試薬化成品事業部ケミカル開発本部】

記事公開:2018年7月