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What's this?

息を吹きかけても曇らない!!
写真フィルムの技術が生かされた
“曇り防止フィルム”とは

冬場の結露したガラスは風情があります。
しかし、外からも店内をはっきりと見せたい店舗や
ガラス越しの商品を見たいお客さまにとっては困りもの。
この自然現象を抑える技術を富士フイルムが開発しました。

ガラスや鏡の曇りはどうして発生するのか?

「結露」で曇った窓ガラスのイメージ

スーパーやコンビニエンスストアの冷凍庫のガラスが結露で見えなくなっていたり、浴室の鏡が湯気で曇ったりという光景は誰もが見たことがあるのではないでしょうか。この「結露」は、空気中の水蒸気が冷やされたことで液化し、ガラスや壁などの表面に水滴として付着する現象です。

このガラスの曇りを防ぐにはいくつかの方法があります。1つは複層のペアガラスや真空ガラスによって温度差を遮断するというもの。これは、防曇(ぼうどん)効果は高いものの、コストがかかるうえ、ガラス自体が重く複雑な構造となってしまいます。もう1つはガラスの表面に水を弾く素材などをコーティングする方法です。これは施工が簡単な一方で、洗剤などの影響を受けるため耐久性が弱いという難があります。また、ガラス自体の透明度を少し下げてしまうという欠点もあるため、ショーケースやガラス張りの建物などでの利用には適していません。

このような状況のなか、手軽に使用できて防曇効果が高く、耐久性や透明度の問題を克服した第3の方法として脚光を浴びているのが「防曇フィルム」です。富士フイルムでは、写真フィルムで培った技術をもとに、新たなアプローチで防曇性を高めた曇り防止フィルムを開発しました。

写真フィルムの技術が不可能を可能に
「2つの曇り防止」に成功

実はガラスの曇りには、結露のできはじめと、時間がたって表面の水分が多くなった段階の、2種類の曇りがあるのをご存じでしょうか? 富士フイルムの曇り防止フィルムは、これまでは難しかった、この両方を防ぐ「初期防曇性」と「長期防曇性」を兼ね備えた画期的製品なのです。

初期防曇性とは、ガラス上で結露ができはじめる段階で曇りを防ぐことです。富士フイルムの曇り防止フィルムは、基材自体に吸湿性があるのが特徴です。フィルムに機能材料をコーティングするのではなく、特殊な表面処理で防曇層を設け、この層の働きで結露した水分をフィルム内に吸収するため、表面の結露を防ぐことができます。また、コーティング方式と違って直接フィルム表面を処理しているため、性能が長期間持続し、中性洗剤や漂白剤などで洗浄しても防曇効果が維持されるのです。

そして、もう一方の長期防曇性とは、時間の経過によって表面の水分が増え、水滴が大きくなる段階での防曇性能です。防曇加工がなされていないガラスでは、表面の水分が集まって大きな水滴となり「雨垂れ」跡を残したり、乾燥した際にウロコ状の水あかが残ったりと、ガラスの透明度や美観を損なってしまいます。しかし、富士フイルムの曇り防止フィルムでは、表面に水となじみやすい処理(親水化)が施されているため、これを貼ることで表面に水分が増えても水滴が大きくならず、フィルムの全体に水分を膜のように広げ、ガラスのクリアな見た目を保つのです。

初期防曇性と長期防曇性

この新しい曇り防止フィルムは、写真のリバーサルフィルム(ポジフィルム)の技術を応用したフィルムを使用しています。このフィルムは、写真技術で培った光学設計を応用しており、不燃性や透明度の高さなどの優れた特性で評価をいただいています。私たちは、このフィルムにナノテクノロジーで多様な機能を付加し、液晶ディスプレーの視野角を広げるフィルムなど産業用の高機能フィルムにも応用しています。こうした高度なフィルム技術により、今回の曇り防止フィルムを実現することができました。
そのため、この曇り防止フィルムは透明度も高く、0.21mmのフィルムを3mm厚の透明ガラスに貼り付けた場合でも、可視光線の透過率は92%という高水準を誇ります。加えて、反射光が写り込んだ際に赤や緑色の変色や虹彩模様が出にくいところも、写真技術の蓄積を生かしたこだわりです。

※当社防曇フィルム評価結果、試験室における測定結果の一例であり保証性能ではありません。ご使用の際は必ず十分なテストを行ってください。


耐薬品性が高く、水あかがつきにくいためメンテナンスにも優れている
透明度が高いだけでなく、虹彩模様も出にくい

景色を楽しみたい観光列車や医療用ゴーグル、
建機のガラスの曇り止めも、貼るだけ簡単!

初期防曇性と長期防曇性を兼ね備えた曇り防止フィルムは、冬場の住宅やオフィス、店舗の窓の曇り止めに活用され、見た目の良さだけでなく、防犯の効果も期待されています。景色を楽しみたい観光列車やバスの窓での活用のほか、浴室や洗面台の鏡や窓に後から貼り付けることで、曇りを防ぐこともできます。さらに医療用のゴーグルやフェイスマスク、メガネといった装着時の視認性が求められるものにも適しています。他にも変わったところでは、屋外の現場で使用される建設機械のガラス面に貼っておけば、デフロスターなどの曇り止め機構を頻繁に利用しなくても結露を防げるので、省エネにも貢献できる可能性があるのです。

「イノベーションの実現には2つの相反する要素を克服していくことが必要」と言われることがありますが、富士フイルムの曇り防止フィルムもまた、実現不可能とも思われた2つの防曇性能を併せ持った特色ある製品です。

現在、富士フイルムでは主に建材用途の「ウインドウフィルム」として3種類の製品を取りそろえています。UVインクが強く密着し、ガラスの多彩なデザイン表現が可能なガラス装飾フィルム「MF-100」、夏場の省エネ効果を期待できる、透明性の高い遮熱フィルムとして「MF-400」をすでに販売していて、今回ご紹介した曇り防止フィルムは「MF-600」として販売を開始しました。今後もさまざまな場所での採用が大きく期待されています。

【取材協力/富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 イメージテック事業部】

記事公開:2019年8月
情報は公開時点のものです