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What's this?

人類のまだ見ぬ“音空間”へ!?
音が出る極薄フィルムから
広がる未来の夢とは。

スマートフォンやタブレット端末、パソコン、テレビや
ラジオ、オーディオ機器……。私たちは、さまざまな
デバイスから出る音に囲まれて暮らしています。
もし、それらの音が、髪の毛ほど薄く、しかも折ったり
曲げたりできるフィルムを貼り付けるだけで出せるとしたら?
これまで誰も経験したことのないような空間を作ることも
決して夢ではありません。こんな未来を可能にする、
電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」を紹介します。

髪の毛ほど薄いフィルムから音が出る!?
電気音響変換フィルム「B.E.A.T. (ビート)」とは

ご存じのとおり、音は物体が振動することで発生します。私たちは空気や水、金属などの媒質を伝わってきた振動を鼓膜で受け、音として認識しているのです。

一般的なスピーカーは、振動板となるコーン紙を磁石とコイルで震わせて音を発生させています。最近では薄型スピーカーも登場していますが、機構上ある程度の厚み(容積)が不可欠です。

一方、富士フイルムの電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」 (Bendable Electro-Acoustic Transducer)は、フィルム自体が振動板となっており、全体の厚さは30~100μm。なんと髪の毛(50~100μm)とほぼ同じ厚さでスピーカーの機能を果たすことができます。

この「B.E.A.T.」が振動板の役割を果たせるのは、微粒子の圧電セラミックスと特殊な粘弾性ポリマーで形成された圧電コンポジット層を、電極層で挟む構造だから。この圧電セラミックスは「①電圧をかけると伸縮して振動」し、逆に「②圧力を加えると電圧が発生」するという性質を備えています。

①の性質を利用すれば、磁石もコイルも必要としない薄くて軽いスピーカーを実現できます。また、例えばディスプレイ素材等に「B.E.A.T.」を貼りつけることで、接触した素材を振動させて音を発生させるデバイス(エキサイター)に応用できます。 また、②の性質を利用すれば、振動を電気信号に変えるマイクロホンやピックアップセンサーなどへの応用も可能です。

「B.E.A.T.」の仕組み
「B.E.A.T.」の応用例

※ μmは、1mmの1000分の1

曲げても割れずに、音をしっかり伝導
多様な形状・環境で使えるエキサイター素材に

「B.E.A.T.」は、富士フイルムがこれまで写真フィルムで培ってきた粒子形成技術やナノ分散技術、精密塗布技術を活かして生まれた革新的な電気音響変換フィルムです。その最大の特徴は、巻き取ることも可能なフレキシブル性と、高い音響特性を両立していることにあります。

一般的に、圧電コンポジットでは、振動エネルギーをロスなく伝えるためにポリマーは硬い方が良いとされています。しかし、ポリマーが硬いと、曲げるなどした時にひびが入ったり割れたりしてしまい、自由な形状、デザインに応用しにくいという課題がありました。

そこで「B.E.A.T.」は特殊な粘弾性ポリマーを採用し、周波数(1秒間に振動する回数)に応じて硬さを変化させることで、この課題を解決しました。具体的には、折り曲げたりする際の「1秒に数回程度」というゆっくりとした周波数の振動に対しては柔らかい状態を維持することができます。これによりクラックなどの破損を防止し、曲げても壊れないフレキシブル性を実現しています。

一方、数10Hz~数kHzの可聴域(オーディオ帯域)では、圧電セラミックスの振動エネルギーをロスなく伝えるために必要となる硬さを維持します。そのため、エキサイターとしてしっかりと音圧を出すのに必要な剛性も実現しました。

「B.E.A.T.」は、圧電セラミックス製の固体素子にはない「非常に薄い」「曲げられる」という特徴を備えています。また、フィルム型素子であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン樹脂)よりも「音を鳴らす力(圧電性能)が大きく」、しかも「耐熱性に優れている」ため、貼り付ける素材や使用環境の自由度も広がります。

そのため、今までになかった場所やさまざまな形状のものに貼り付けて音を出すことが可能になり、アプリケーションの幅を大きく広げるエキサイター素材として注目いただいているのです。

電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」
30~100μmと薄く、剛性と柔軟性も備えたフィルムのため、折り紙のように自由な形状への折り曲げと十分な音圧を両立。エキサイターとしてもさまざまな形状の素材に貼り付けられます。

フィルムから生まれる可能性は無限大!
これまでにない“音空間”を実現

これまでは不可能だった場所から音を出すことができる「B.E.A.T.」。応用分野は、さまざまに広がります。

例えば、ソファのヘッドレストに取り付けて、席ごとに一人ひとり違う音楽を楽しむパーソナル空間を作ることも可能です。 また、自動車に応用し、シートのヘッドレストやシフトレバー、ハンドル、天井など、これまでスピーカーを取り付けられなかった場所から音を出すことも可能になります。自動運転レベル5の実用化も視野に入りつつあるなか、音環境も含めてキャビンデザインを革新する素材となり得るでしょう。

「B.E.A.T.」をさまざまな素材に貼り付けたエキサイター用途デモ

また、ランプシェードの内側に「B.E.A.T.」を貼り付けると、まるで頭の上から音が降ってくるような、パーソナルに音を楽しむ空間を創出できます。カフェやレストランで利用すれば、これまでにない、音に演出されたスペースをデザインすることも可能です。

さらに、これを応用すれば、CDショップでは、ヘッドホンやイヤホンを使わない非接触の試聴が可能になります。この利用法は、ポストコロナ時代にもぴったりです。また、博物館や美術館では、展示物の前に立つと解説などが聞こえる新感覚の音声ガイドも実現できるでしょう。

この他、デジタルデバイスのディスプレイなどに貼り付ければ、画面から音が聞こえるスマートフォンやタブレットが実現。さらに、音の出る服や音の出る絵・写真という新発想の商品の開発など、可能性はさまざまに広がります。

折り曲げられるフレキシブル性と優れた音響特性を備え、これまで不可能だった場所から音を出せる電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」。まだ世の中にない “音空間”のデザインも可能な、画期的な未来を作るフィルムです。

【取材協力/富士フイルム株式会社 B.E.A.T.担当】

記事公開:2021年3月