健康な生活を続けるために多くの人々が受診している、人間ドック。
実はビルや船舶などの構造物や機器も、本来の耐久性や機能を維持するために
検査を行っています。その一つが、「非破壊検査」。
今回のWhat’s thisでは、分厚い鋼やコンクリートに覆われていても
対象物の内部を正確に現像する、検査のプロの強い味方、
工業用X-レイフィルムの価値をご紹介します。
What's this?
くっきり、はっきり映し出す。
たとえ鋼が立ちふさがっても。
構造物を壊すことなく、内部を鮮明に。
その上、接触せずに撮影可能。
多くの人が、人間ドックで体の内部を検査したことがあると思います。検査には目的や部位に応じて様々な方法がありますが、肺や心臓を調べる際に最もポピュラーなのが「X線検査」、また、臓器を調べる際は「超音波検査」が一般的です。
実はこの2つの検査方法は本記事冒頭のイメージ画像でご覧いただいた飛行機※や、船舶、ビル、橋などの内部を調べる非破壊検査の分野においてもスタンダードな手法として広く用いられています。そして、富士フイルムは工業製品の放射線透過検査に用いるX-レイフィルムを60年以上製造。国内トップクラスの実績を誇っているのです。
非破壊検査では、放射線透過検査と超音波検査が対象物や目的に合わせ、適材適所で使い分けられています。放射線透過検査が用いられるのは、何と言っても鮮明な画像が求められる場合。高解像度のX-レイフィルムであれば医療用X線検査と比較して10倍近い解像度を誇り、詳しく検査したい際に最適です。
もう一つ、放射線透過検査が適しているのは、「非接触」で検査をする必要がある場合です。
超音波による検査の場合、検査機と検査対象を接触させる必要があり、長い配管を検査する場合は、保護膜をはがすなどのひと手間がありますが、放射線透過検査であれば、空気中の減衰が非常に少ないため、空気や保護膜などを透過して、しっかり撮影することができるのです。
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※ 飛行機の透過画像ははめ込みによるイメージです。
失敗できない撮影だから、
フィルム一枚まで徹底した品質管理。
人体検査を例にご紹介した工業製品の放射線透過検査ですが、違うのは使用する放射線量。鋼やコンクリートを透過させるには、人体とは比べ物にならないほど高い量の放射線を照射する必要があり、極めて高い専門性が必要とされます。また、立ち入り禁止区域を設定し、特殊なシールドでオペレータを防護するなど、撮影には細心の注意が払われます。しかし、いくら準備を万全に進めても、肝心のX-レイフィルムの品質にムラがあっては、正しい検査画像を得られず、全てが水の泡。そうならないために、富士フイルムの製造工場では非常にシビアな検査基準を設定、どの製造ロットでも同じ仕上がりになるよう、フィルムの均一化に努めています。
またX-レイフィルムでは写真のフィルムと同様、感度と解像度が反比例の関係になります。つまり、感度が高いと短時間で作業が終わりますが解像度は粗くなり、逆に高解像度を求めるに従い感度は下がる、ということ。こうした特性を踏まえ、富士フイルムでは、感度と解像度のバランスを変えた多彩なラインナップを製造。「高画質か、それともスピード重視か」。お客様は用途や目的に応じて最適なX-レイフィルムを選択することができます。
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■ 富士フイルムの処理剤
60年以上、日本のモノづくりに貢献。
今、そのフィールドは世界へ。
富士フイルムのX-レイフィルムの歴史は、創業間もない1930年代までさかのぼります。戦前戦後の時代、社会問題となっていたのが劣悪な公衆衛生。とりわけ人々に恐れられていた病気が「結核」でした。その検査に必要不可欠だったのが、X-レイフィルムを用いたレントゲン撮影でした。当時の社員たちはこうした社会のニーズに応えるため、医療用のX-レイフィルムの生産数増加、品質面向上の双方に全力で取り組んだのです。
一方、戦後の日本は、衛生面の改善と同時に、大型船舶の建造など、工業国家としての再起を図ります。安全性の高い工業製品を作るには、ネジ一本・溶接一箇所でも不具合がないよう、内部構造を調べるいくつもの厳しい検査を課す必要がありました。そこに着目したのが、先行して医療用X-レイフィルムを製造していた、当時の富士フイルム。1952年に工業用フィルムの研究を本格的に着手、そのわずか2年後の1954年には、「富士工業用X-レイフィルム」を発売。以来60年以上にわたってモノづくりを支えてきました。
そして、現在。工業用X-レイフィルムの新たなフィールドは、経済成長が著しい新興国へと拡大しつつあります。これからも私たちはX-レイフィルムの普及を通じ、建設ラッシュに沸く国々の安全を支えていきます。
記事公開:2017年3月
情報は公開時点のものです