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What's this?

ダブルのレーザー光が
隠れた容疑者を照らし出す!

日本におけるがん罹患率の1位と2位を占める大腸がんと胃がん。
それらの早期発見に貢献しているのが内視鏡検査です。
内視鏡の精度を高めて、胃や大腸の粘膜に潜むがんや炎症を
探し出すためは、どうすればいいのか――
今回のWhat’s thisでは、レーザー光源を搭載した次世代内視鏡システムの
2つのレーザー光がコンビネーションを発揮して
がんや炎症を見えやすくする、その捜査方法を公開します。

見えにくいがんを
早期発見したいというニーズに応えて。

胃や大腸の内部を画像化してモニター上で確認する内視鏡検査では、小さながんや見えにくいがんでも早期に発見する必要があります。診断に際しては、胃の場合は粘膜表層の血管模様が正常か異常かを見極めることが、大腸の場合はポリープ表層の血管模様を見て良性か悪性かを判断することが重要だといわれています。しかし、血管と粘膜は色味が似ているため、通常の白色光による画像では、血管模様を詳細に捉えて判断することが難しいケースもありました。

「精度の高い検査を行えるように、内視鏡の性能を高めてほしい」という医療現場からのニーズに応えて、富士フイルムは2種類のレーザー光源による照明を採用した次世代内視鏡システムを開発しました。2012年にデビューしたこの内視鏡システムが好評を得ている理由は、光源にレーザーを採用しただけでなく、主に白色光観察に用いる白色光用レーザーと主に狭帯域光観察に用いるBLI用レーザーという、波長の異なる2種類の光源を搭載したことです。この2つのレーザーは、あたかも事件の謎を解くホームズとワトソンのように、それぞれの持ち味を生かしながらコンビで大きな力を発揮します。では、個性の違う2つのレーザー光が、どのようにがんという容疑者を追い詰めていくのか。そのプロセスを追ってみましょう。

内視鏡システムの構成例

個性の異なる光のコンビネーションが
内視鏡の機能を大きく進化させた。

2つのレーザー光は個性も役割も大きく異なります。
白色光用レーザーは、エネルギーを光に変える性質を持つ蛍光体に投射して、白色光を得るために使います。蛍光体から出る白色光は、自然な色の画像をモニター上に明るく描出できます。さらに白色光は、紫・青・水色・緑・黄色・橙・赤という異なる波長の光の成分がすべて含まれているため、粘膜の表層の血管はもちろん、中層や深層の血管も描出することが可能です。しかし、表層から深層までの血管がすべて重なって見えてしまうことと、血管の色が粘膜の色と近いため識別が容易でない、という弱点があります。もう一方の波長の短いBLI(Blue LASER Imaging)用レーザーは、その名が示す通り青紫色の光です。胃の粘膜に当たると、ごく表層で跳ね返る性質を持っています。しかも、血液中のヘモグロビンに強く吸収されるため、血管を濃い色で映し出します。がんなどの病変の診断には、粘膜表面の微細血管や微細構造の変化を詳細に観察することが必要だといわれており、BLI用レーザーは詳細な観察には重要な光です。しかしながら、青紫色の光は暗いために遠景が見えにくいという弱点があります。
本内視鏡システムは、2つのレーザー光の発光比率を変えて照射することで目的に応じた画像を取得、観察することを可能にしました。個性の違う光のコンビネーションが、今まで見えにくかったがんなどの病変の捜索をサポートします。この内視鏡システムの登場によって、富士フイルムの内視鏡は大きな進化を遂げたのです。

次世代内視鏡システムの詳しい情報はこちら

■ レーザー照明の概念図

■ BLI(Blue LASER Imaging)画像

短波長狭帯域光観察BLIは、表層血管観察に適した短波長レーザー光を照射することで得られる高コントラストな信号に画像処理を施し、血管や表面構造の観察に適した画像を表示します。

さらなる技術革新により目指すのは、
患者にも、医師にもやさしい内視鏡。

さらに本内視鏡システムは、BLIに加えてLCI(Linked Color Imaging)という観察モードも備えています。LCIはまず、白色光用レーザーで明るさを保ちながら、BLI用レーザーの比率を高めて粘膜表面の情報をより詳細に取得します。そこに粘膜付近のわずかな色の差をわかりやすくする画像処理を加え、赤い色をより赤く、白い色をより白く描出して、炎症などをより見えやすくします。このように、2つのレーザーを用いた光源というコンセプトと、診断を支援する特殊な観察モードを実現できたことには、富士フイルムがカメラや写真プリント機器、デジタルX線画像診断システムなどで培ってきた、レンズ設計技術、レーザー制御技術が大きく貢献しており、これらの技術の融合から生まれたハイブリッド製品といえます。

さらに、レーザー光源を採用するメリットとして、メンテナンス性のよさも見逃せません。従来の内視鏡に使用されていたキセノンランプは、累積点灯時間500時間ごとに交換が推奨されています。年間1,000時間使用した場合、キセノンランプは6年間で12回交換する必要がありますが、レーザー光源ではその必要がありません。消費電力もキセノン光源の300Wと比べてレーザー光源は10Wと、省エネルギーで長寿命です。
2つのレーザー光により、内視鏡検査の進歩に大きな貢献を果たした富士フイルムの次世代内視鏡システム。今後は、「患者にやさしい内視鏡」、「医師にやさしい内視鏡」をより高い次元で両立させるために、さらなる技術革新を目指していきます。

■ LCIタイプによる画像の変化


※国立研究開発法人国立がん研究センター「がん登録・統計」より

【取材協力/富士フイルムメディカル株式会社 関 正広】

記事公開:2017年4月
情報は公開時点のものです