第38回 天然ガスの採掘現場で活躍する富士フイルムの「ガス分離膜」
- 資源の乏しい日本にとって、エネルギーは常に大きな問題です。石油、石炭と並んで輸入エネルギーの一角をなす「天然ガス」ですが、実は、天然ガスの採掘現場で富士フイルムの技術が使われているのだとか。いったいどんな役割を果たしているのか、そのヒミツに迫ります!
「ガス分離膜」という名前からは
想像できないカタチにびっくり!
お話を聞きにやって来たのは、産業機材事業部です。よろしくお願いします!
富士フイルムと「天然ガス」。正直あまりピンと来ないのですが、どんな形をしているのでしょう?
「これが『ガス分離膜』という装置です。天然ガスの採掘現場で活用されています。長さは1メートルほどの筒状になっています」
膜という言葉から想像するものと、少しギャップがあるのですが、どのあたりが“膜”なのでしょう?
「中心にガスが通るパイプがあり、その周りに富士フイルムが開発した特殊なポリマーを塗布した “膜”を巻き付けてあるんです。
実は天然ガスは二酸化炭素などの不要な気体と混ざった状態で採掘されます。この膜によって目的の天然ガス以外の成分を除去して、純度の高いガスを得ることができるようになります」
なるほど! 膜を巻き付けてあるから筒状だったんですね。
メンテナンスが容易で稼働に電気や熱を必要としないため
僻地や小規模のガス採掘プラントでも使いやすい
「これが実際の採掘現場(プラント)で使われている、ガス分離膜です。ガスが通るパイプの中に入れられていますね」
おお! さすが採掘現場。スケールの大きさを感じます。これ1本でガスを分離するんですか?
「いいえ。分離膜を使ったシステムを採用するプラントは比較的中~小規模なことが多いのですが、それでも採掘プラント1台に300本程度のガス分離膜が使われています」
300本! やっぱりスケールが大きいですね。ちなみにそのようなプラントで産出するガスの量はどのくらいになるのでしょうか。
「平均的な都市ガスに換算すると、数十万人分に相当するエネルギーを処理できるプラントに採用されているケースもありますよ!」
中核都市のエネルギーを賄えるほどなのですね! 先ほど、比較的小規模のプラントというお話がありましたが、ガス分離膜以外の分離方法もあるのでしょうか?
「産出量の多い大規模プラントでは、ガスを薬品の液体に通して不純物を吸収させたりする方法もありますが、中~小規模のプラントに採用するには稼働コストやメンテナンスに課題もありました。そのような課題を克服するとともに、大規模なプラントでも採用してもらえるよう、処理量に応じてシステム設計の自由度が高い分離膜の開発を始めたのです。
富士フイルムのガス分離膜は、頻繁なメンテナンスが不要で、数年間にわたって性能を発揮することができます。また、採掘設備が大幅にコンパクト化できるため、これまで開発が遅れていた天然ガス田の開発が大きく進む可能性があるんです」
世界、そして日本のエネルギーにとっても、大きな役割を果たしてくれそうですね!
大事故につながりかねない採掘現場
ガス分離膜の欠陥は許されない
ガス分離膜に活かされている、富士フイルムの技術について教えていただけますか?
「天然ガスの採掘現場は、砂漠やジャングルの中、さらに洋上など、過酷な自然環境の中にあることがほとんどです。そういった現場でも安定した性能を発揮するために、品質には最大限の配慮が必要になります。
また、ガスは一歩間違えれば爆発事故につながる危険さもはらんでいます。万一ガス分離膜に穴が空いていたりするとガスがうまく分離できず、事故につながる可能性もあります。
富士フイルムが長年の研究開発で培ってきた『塗布技術』『ポリマー設計技術』が、最先端のガス採掘現場でも活かされているんですよ。“薄く塗る”という意味では、ナノオーダー(10億分の1メートル)レベルの薄さで正確に塗布するという、極めて精密な技術が必要です」
写真フィルムから始まった技術の積み重ねが、天然ガス田で使われるなんて、なんだか不思議な気がしますね。本日はありがとうございました!
“ガス分離膜生まれ”のガスが届く?
現在は北米、南米を中心に活用が進んでいるという、富士フイルムの「ガス分離膜」。今後は東南アジアや中東などでも活躍の場を広げていく予定だそうです。日本に届き、皆さんが使うガスの中にも、富士フイルムのガス分離膜を通ってきたガスがあるかもしれませんね。
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