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今日からはじめる「アンガーマネジメント」

怒りの感情と上手に付き合い、コントロールする方法を紹介します。
実践すれば仕事も人間関係もよりスムーズになるはず!

vol.10 部下から「イライラワード」を言われたとき
関係を悪化させない「言い返し方」あれこれ。

「言い過ぎてしまった」と後悔しないために

前回までは、相手に怒りをぶつけそうになったときの「言い換え」のテクニックを紹介しました。

今回からは、相手から投げかけられた「イライラワード」に、どのように言い返せば関係がまずくならないか、職場の「部下に対する言い返し方編」「上司への言い返し方編」と、「家族への言い返し方編」の3回にわたって紹介します。

職場や家庭で、相手からの不満やぐち、無神経な言葉に対し、つい強い言葉で言い返してしまうのはよくあることかもしれません。

湧き上がった怒りを抑えきれずに相手をののしると、その瞬間はフラストレーションが解消されるかもしれませんが、時間がたつにつれて「言い過ぎてしまった」と後悔するのではないでしょうか。

たった一言、強い言葉を返しただけで、相手との関係がギクシャクし、仕事や生活に大きな支障を来してしまうこともあります。そうならないように、たとえイラっとするような言葉を言われても、お互いが嫌な思いをするだけの結果にしてしまうのではなく、むしろ相手との建設的なコミュニケーションにつながる「言い返し方」をしたいものです。

今回は、部下から「イライラワード」を言われたときの「言い返し方」編です。

頭ごなしに怒るのは逆効果 自分でやり方を考えるように仕向ける

上司と部下は、価値観や考え方などの違いからコミュニケーションに齟齬(そご)が生じやすいもの。これは、職場における永遠の課題といえるでしょう。

価値観や考え方の違いは、ちょっとした言葉遣いに表れるものです。
例えば、部下に何かを指示したときに、次のような返事をされた経験はないでしょうか。

「でも、このやり方じゃできませんね」

「でも」「だって」「どうせ」といった言葉を聞くと、つい「やる気があるのか!」と怒りを覚えてしまうのも無理はないかもしれません。ですが、

「『でも』とか『だって』とか、言い訳をするんじゃない!」

などと、頭ごなしに怒鳴るのはむしろ逆効果です。
怒りの感情を部下にはっきりと示し、気持ちを改めさせたいという思いがあったとしても、受け止めてくれるとは限りません。むしろ頭ごなしに怒られたことで、ふてくされ、やる気まで失ってしまう部下もいるものです。

こんなときは、次のような言い返し方をしてみてはどうでしょうか。

「では、あなたはどうやったらできると思う?」

「できません」というのなら、「どうすればできると思うのか」と部下に考えさせるわけです。上司からの押し付けではなく、自分の裁量でやり方を決められるのであれば、部下は前向きな姿勢になれるはずですし、関係がギクシャクすることもないはずです。

世代のギャップをあからさまに指摘されたときは

上司と部下との間では、ジェネレーションギャップ(世代間のズレ)が言い争いの種になることも珍しくありません。

例えば、世代の異なるメンバーが集まって企画会議を行っているときに、自分のアイデアを話したら、部下が、

「部長、それもう古いですよ」

といった「イライラワード」を投げ掛けてきたとします。その言葉に一瞬で怒りが湧いて、

「古いとはなんだ! 失礼な」
「バカにしているのか!?」

などと、つい言い返してしまう人もいるのではないでしょうか。

口に出してしまってから、「大人げなかったな」と反省しても後の祭りです。このようなときは、以下のような言い返し方をしてみてはどうでしょうか。

「では、逆にあなたの意見を聞いてみたいな」

「古い」と言われると、カチンと来るのはよくわかりますが、そこは大人の寛容さで受け流しましょう。そのうえで、相手に意見を求めてみるのです。

このように言い返せば、部下も「いけない。失礼な発言をしてしまったな」と反省するかもしれませんし、バカにしたような言葉を投げ掛けても、軽く受け流してくれた態度を見て、尊敬の念を抱いてくれるかもしれません。

また、

「古いアイデアにも使えるものはあるよ」

と、自分の経験をもとに、具体的にアイデアの長所を伝えてみるのもいいでしょう。第一印象で「古い」と感じたとしても、よくよく中身を聞いていくうちに、若い部下にとっては思いも寄らなかった長所があることに気付くかもしれません。このようにして、「古い」イコール「時代遅れ」といった先入観を改めさせることもできるはずです。

部下から「イライラワード」を言われたときの「言い返し方」例

売り言葉に買い言葉で不毛な言い争いをするのではなく、大人の対応で軽く受け流し、実のあるコミュニケーションを実現したいものです。

「怒り」をコントロールするためのコツ

売り言葉に買い言葉では、関係がギクシャクする
何を言われても、大人の態度で軽く受け流そう

PROFILE

安藤 俊介
安藤 俊介あんどう・しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をアメリカから導入した日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナーなどを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、他多数。書籍は中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなどでも翻訳され、累計発行部数は58万部を超える。

記事公開:2022年2月