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今日からはじめる「アンガーマネジメント」

怒りの感情と上手に付き合い、コントロールする方法を紹介します。
実践すれば仕事も人間関係もよりスムーズになるはず!

vol.11 上司が浴びせてくる「イライラワード」に
角を立てない「言い返し方」あれこれ。

仕事で失敗して上司に怒鳴られたときは

前回に続いて、職場で「イライラワード」を言われたときに、相手との関係を壊すことなく、上手に言い返すコツを紹介します。今回は、「上司への言い返し方編」です。

上司は、部下を指導しなければならない立場ですから、仕事のやり方に間違いや失敗があれば、それを正そうとするのは当たり前です。

しかし、中には、ただでさえ自己嫌悪に陥っている部下に、間違いや失敗を厳しく追及し、言い訳でもしようものなら、怒りをますますエスカレートさせて怒鳴り散らしてくるような上司もいます。

また、怒鳴りはしないものの、あからさまな嫌みを投げ掛けてきたり、トゲでのある発言をしたりする上司も少なくありません。こちらが仕事に真摯(しんし)に取り組んでいるときに、「イライラワード」を聞かされると、ついカッとなって言い返したくなるものです。

でも、それによって上司との関係がギクシャクすると、どうしても職場での居心地が悪くなってしまいます。最悪の場合、仕事への意欲や成績にも悪影響が及び、「これ以上、上司と顔を合わせたくない」といった後ろ向きの理由で、会社を辞めざるを得なくなるかもしれません。

そんな状況に自分を追い込まないために、上司から何を言われたとしても、上手に言い返せるようになりたいものです。

前向きな姿勢を見せて、相手の怒りを期待に変える

「どうして教えてもできないんだ!」

上司が部下の間違いや失敗を怒鳴るときに、よく発する言葉の1つではないでしょうか。

上司にすれば何度も教えていることなのかもしれませんが、慣れない仕事や難しい仕事だと、期待どおりにできないことはあるものです。

だからといって、「自分には無理です」とか、「頑張ってもうまくいかなくて」などと諦めや言い訳のような言葉を返すと、かえって上司の心を逆なでしてしまいます。

「自分がうまくできないのは、あなたの教え方が悪いからだ」と上司を責めたくなるかもしれませんが、それもよくありません。失敗したのは自分の未熟さにも原因があり、相手のせいにしても何の解決にもならないからです。

では、上司から「どうして教えてもできないんだ!」と怒鳴られたら、どのように言い返せばいいのでしょうか。

例えば、

「ご期待に応えられるよう努めますので、具体的なご指導をお願いします」

というのは、上手な言い返し方の一例だと思います。

返す言葉に「努力する」のようなワードを盛り込めば、上司は、「前向きな姿勢だな」と受け取ってくれるはずです。これなら、上司は、「済んだことは仕方がない。もう一度教えるから、今度は間違えるなよ」という気持ちになってくれるでしょう。

しかも、「具体的な」というワードを入れておくと、より細かな指導が期待できるようになります。上司の怒りを静められるだけでなく、自分の成長も促せるのですから、一石二鳥です。

嫌みな言い方をする上司への返し方とは

次に、上司から、嫌みやトゲのある言葉を投げ掛けられたときの言い返し方を紹介しましょう。

嫌みを言われたときのイライラは、むしろ、怒鳴られたときよりも抑えきれないことが多いものです。

例えば、企画のプレゼンや業務の説明をしても、上司から、

「あなたの話はさっぱり分からないね」

と言われたら、あなたはどう反応しますか? 

「ですから、これは……」

といった言葉で返すのは、あまりおすすめできません。

どれだけこちらが一生懸命説明しても、まず「否定」から話に入る人は大勢います。そこで、「ですから」や「でも」といった言葉で返しても、「話にならないね」「ダメだね」と、さらにこちらを否定してくる可能性もあります。これではせっかくの企画も通らず、上司に対して、一時的な怒りにとどまらず、この後も嫌悪感を抱いてしまうかもしれません。

自分の企画や説明を否定されると、ムッとしてしまいますが、ここは一度我慢しましょう。感情に任せるのではなく、「分からない」という相手の言葉を思い起こし、相手に理解されるために努力する方向に意識を移してみるのです。その上で、

「私の説明不足でした。分からない点を具体的に教えてください」

と返してみてはどうでしょうか。

どこがどのように分からないのか、相手に答えを求めるのがいいでしょう。言い回しや言い方については受け流し、具体的なアドバイスを素直に求めるようにしてみてください。相手が質問してきたら、一つひとつ丁寧に説明しましょう。そうすることで、仕事への真剣さを上司にアピールできます。

また、改善しようとする熱心な姿勢を見せることで、上司も自らの発言を省みて、嫌みな言い方をしなくなるのではないでしょうか。もちろん、上司の性格によりけりですが、感情に任せて怒りをあらわにしたことで生まれる気まずさや、不毛な言い争いを避けることはできるでしょう。

上司から「イライラワード」を言われたとき「言い返し方」例

「イライラワード」にいちいち反応するのではなく、むしろアドバイスを求め、前向きに改善を図ることで、上司の見る目も変わるかもしれません。

「怒り」をコントロールするためのコツ

上司から嫌みを言われても、
反発するのは禁物
アドバイスを求め、
自分の成長につなげよう

PROFILE

安藤 俊介
安藤 俊介あんどう・しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をアメリカから導入した日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナーなどを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、他多数。書籍は中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなどでも翻訳され、累計発行部数は58万部を超える。

記事公開:2022年4月