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今日からはじめる「アンガーマネジメント」

怒りの感情と上手に付き合い、コントロールする方法を紹介します。
実践すれば仕事も人間関係もよりスムーズになるはず!

vol.3 正義感と現実がぶつかったら?
見ず知らずの人のマナーとの上手な付き合い方。

家族の「許せない」行為に出会ったら、互いの“意識合わせ”で解決する

日常生活において、特に怒りの感情が生じやすいのは職場と家庭です。上司や部下、配偶者や子どもなどは、普段から接する機会が多いだけに、つい些細な言動にイラッとしてしまいがちです。

前回は、職場におけるアンガーマネジメントの事例を紹介しましたので、今回は、家庭での怒りへの対処法から紹介しましょう。

新型コロナウイルスの感染拡大とともに、在宅で仕事をする機会も増えたのではないかと思います。日中は顔を合わせることがなかったのに、一緒にいる時間が長くなって、つい夫や妻の言動が気になるようになったという方もいるのではないでしょうか。

典型的な怒りのタネのひとつが、家族が家で仕事をすることで「部屋が片付かなくなった」というもの。リビングにパソコンや書類などを持ち込み、仕事が終わっても、ついほったらかしにしてしまうというのはよくある話です。

「終わったら、ちゃんと片付けてよ」と何度も言っているのに一向に改善されないと、ついイライラしてしまいそうですが、まずは6秒間じっと待つ「衝動のコントロール」で、怒りの爆発を防ぎましょう。

ただし、それでもイライラが募って抑えきれないとすれば、それは、あなたにとって「許せない」行為だからなのだと思います。その場合は、無理に我慢し続けると、マグマのように蓄積された怒りが一気に噴き出してしまうかもしれないので、「思考のコントロール」によって怒りに振り回されないようにする必要があります。

そこで大切になるのが、互いの“意識合わせ”です。何度も「片付けてよ」と言っているのに一向に改善されないのは、「“片付いている”とはどんな状態なのか」という互いの認識にズレがあるのかもしれません。

例えば、あなたは仕事が終わったらパソコンや書類をテーブルの上に置かないようにしてほしいのに、相手はテーブルの隅に追いやれば「片付いた」と思っている可能性もあります。「言われたとおりにやっているのに、なんで怒るのだろう」と理不尽に感じていたかもしれません。

大切なのは、相手にとって“片付いている”とはどんな状態なのかということを理解し合い、互いに納得できる“片付いている状態”のイメージを共有することです。

この例に限らず、行動に関する双方の認識の相違が、怒りの原因となることはよくあります。怒りをぶつける前にしっかりコミュニケーションを取って、認識のギャップを埋めることをお勧めします。

電車の中で電話をしている人が気になる… どうするのがよい?

外出先で、見ず知らずの人の言動につい怒りを感じてしまうということもあるものです。典型的な例のひとつは、電車の中での公共マナー違反でしょう。

携帯電話の利用が禁止されているのに大声で通話をしていたり、大音量で音楽を聴いている人のイヤホンから耳障りな音が漏れていたりすると、つい「迷惑だなぁ」と感じてしまうものです。こんな場合は、どうすればいいのでしょうか。

結論からいえば、見ず知らずの人の迷惑行為には、かかわらないのが無難です。

見ず知らずの人の行動は「変えられる」かどうか分からない

アンガーマネジメントの手順でいえば、まずは6秒間待つ「衝動のコントロール」を行い、次に、相手の行為が「許せるか・許せないか」を判別する「思考のコントロール」を行うことになります。

そして、「許せない」と思ったときは、次のステップとして、その許せない言動が「重要か・重要でないか」、「変えられるか・変えられないか」によって対処を決める「行動のコントロール」を行います。

ところが、見ず知らずの人の場合、その人の行動を「変えられるか・変えられないか」という情報を持ち合わせていないので、そもそも対処のしようがないわけです。

正義感が強い人ほど注意をしたくなると思いますが、相手の態度が改まるかどうかも分からず、むしろ逆効果を招きかねないことは、やらないに越したことはないといえます。

「電車でマナー違反をしている人」への行動は?
「怒りをぶつけても意味がない」と考えて、気にしないよう努め、感情を落ち着けるのが望ましい対処法ではないでしょうか。
「怒り」をコントロールするためのコツ

「変えられる」かどうか分からない
見ず知らずの人の行動には
「怒りをぶつけても意味がない」と考える

PROFILE

安藤 俊介
安藤 俊介あんどう・しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をアメリカから導入した日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナーなどを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、他多数。書籍は中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなどでも翻訳され、累計発行部数は58万部を超える。

記事公開:2021年3月