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今日からはじめる「アンガーマネジメント」

怒りの感情と上手に付き合い、コントロールする方法を紹介します。
実践すれば仕事も人間関係もよりスムーズになるはず!

vol.4 言葉の力で、「毎日の怒り」を
コントロールしよう。

繰り返し練習して「無駄に怒らない自分」になる

前回までは、怒りを感じたときに、「衝動」のコントロール、「思考」のコントロール、「行動」のコントロールの3つのステップによって、イライラや感情の爆発を抑える方法を紹介しました。これらのステップは、怒りに直面したときに、とっさに行う“対症療法”のようなものです。

しかし、そもそも、「なんだかいつも怒っている気がする」「自分はどうしてこんなに怒りっぽいんだろう?」と悩んでいる方も多いと思います。普段から、ささいなことでイライラしたり、ついカッとなったりする自分を情けなく感じたりして、何とか改善したいと思っているのではないでしょうか。

そこで今回からは、「無駄に怒らない自分」に変わるための“体質改善法”について紹介していきます。

「怒りっぽい性格は生まれつきのものだから、一生直らない」とあきらめてしまう方もいますが、決してそんなことはありません。なぜなら、アンガーマネジメントは誰もができる“体質改善法”であり、ダイエットやトレーニングと同じように、繰り返し練習すれば、その練習量に応じて効果が表れるものだからです。

「自分と会話する」ことで気持ちをコントロールする

“体質改善法”の一つ目としてぜひ実践していただきたいのが、怒りを感じたら、相手にぶつけるのではなく、まず「自分と会話をする」習慣を付けることです。相手に何かを言われたとき、とっさに反論するのではなく、まずは心の中で自分自身に語りかけるのです。

例えば、上司から「どうして指示されたとおりに仕事をしないんだ!」と叱られたとします。

あなたからすれば、上司の指示があいまいだったので、何をどうすれば満足してもらえるのかがわからなかったのかもしれません。でも、そのことをストレートにぶつければ、上司との関係が険悪になり、禍根を残しかねないことは目に見えています。

そんなときに、心の中で「大丈夫、大丈夫」「気にすることじゃないよ」「ドンマイ」「落ち着こう」などとつぶやくのです。

こうした自分の気持ちを落ち着かせる言葉のことを「コーピング・マントラ」(以下、コーピング)といいます。コーピングは「切り抜ける」、マントラは「呪文」という意味です。つまり、「怒りの爆発を切り抜けるための呪文」といったところでしょうか。

上司に叱られたとき

自分の気持ちを落ち着かせる言葉なら、どんなものでも構いません。恋人や子ども、ペットの名前を繰り返しつぶやくというのでもいいでしょう。とにかく、相手から気をそらし、心を落ち着かせるために、自分自身に語りかけるようにするわけです。

怒りの場面は突然訪れますから、あらかじめ自分の心を和ませるコーピングを決めておき、いつでもつぶやけるようにしておきます。それを場面ごとに繰り返しつぶやくことによって、知らず知らずのうちに怒りの気持ちをコントロールしやすくなります。

前向きな言葉で自分を盛り上げる

怒りを切り抜けるために自分にかける言葉としては、もうひとつ「ポジティブ・セルフトーク」(以下、セルフトーク)があります。コーピングが気持ちを落ち着かせる言葉であるのに対し、セルフトークは、自分を励まし、盛り上げるための言葉です。

セルフトークは、尊敬する人の言葉、偉人の名言、映画や小説で感動したセリフなど、何でも構いません。自分が考えた言葉でもいいでしょう。

例えば、とんちで知られる“一休さん”こと一休宗純和尚は、亡くなる直前、心配する弟子たちに「大丈夫だ。心配するな、何とかなる」という手紙を残したといわれています。

また、幕末に活躍した勝海舟は、自分の行動について「おこない(行い)はおれのもの、批判は他人のもの、おれの知ったことじゃない」と語ったとされています。どちらも、相手の理不尽な物言いに対する怒りを忘れさせ、自分を励ましてくれる力強い言葉ではないでしょうか。

セルフトークは、力強い言葉であるほど、怒りを抑えてくれる効果が高いものです。コーピングと同じように、繰り返しつぶやくことを習慣付けてみましょう。

「怒り」をコントロールするためのコツ

イラっとする場面では、
コーピングで自分を落ち着かせ
セルフトークで自分を励ます

PROFILE

安藤 俊介
安藤 俊介あんどう・しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をアメリカから導入した日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナーなどを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、他多数。書籍は中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなどでも翻訳され、累計発行部数は58万部を超える。

記事公開:2021年5月