蓄積された「アンガーログ」を眺めると、自分はどんな言動に怒りを感じるのか、という傾向が見えてきます。その傾向を「べきログ」に整理してみましょう。
「べきログ」とは、起きたことや人の言動に対する「~べき」「~べきではない」という自分の現在の考え方を記録するものです。
先ほどの例では、タクシーの運転手に怒ったのは、「プロなのだから道ぐらい覚えておくべき」という考え方があったからだと言えます。
同じように、「会議中はメモをとるべき」「夫婦でも互いの秘密を探ろうとすべきではない」といった「~べき」「~べきではない」を書き並べ、怒りの背景にある自分の信念や価値観、考え方などを明確にするのです。アンガーマネジメントでは、これらの「~べき」「~べきではない」を、「コアビリーフ」と呼んでいます。
コアビリーフが見えてきたら、次は、それに反する言動に直面したときに、どこまで「許せるか」「許せないか」という心の許容度合いを評価します。
この連載の第1回で紹介した「思考」のコントロールと同じように、「許せる」「まあ許せる」「許せない」の3段階に分けて、それぞれのコアビリーフがどれに当てはまるかをマッピングしてみるのです。
実際に分けてみると、意外に「まあ許せる」の範囲や、「許せない」と「まあ許せる」の境界など、微妙な位置にあるコアビリーフが多いことに気付くのではないでしょうか。
もともとの出来事、言動に直面したときは、あれほど強い怒りを感じていたのに、客観的に自分の心を見つめ直すと「それほど怒ることでもなかったんだ」と気付くことが多いものです。この作業を繰り返すと心の許容量は大きくなり、衝動的な怒りは少しずつ減っていきます。2種類のログをつけて自分の怒りを客観視することで、「怒りやすい体質」が改善されていくのです。