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今日からはじめる「アンガーマネジメント」

怒りの感情と上手に付き合い、コントロールする方法を紹介します。
実践すれば仕事も人間関係もよりスムーズになるはず!

vol.6 相手への理解や配慮を深める「3コラムテクニック」で
怒りっぽさを根本から解決!

“3つの箱”で整理して、許せる範囲を広げてみる

前回は、「自分が何に怒りやすいのか?」を客観的に見るために、「アンガーログ」と「べきログ」を付けることを紹介しました。今回はその続きとして、「べきログ」で明らかになった“怒りの原因”を見つめ直し、“心の許容範囲”を広げる方法について解説します。

まず、ノートの1ページ分に3つの箱(コラム)を作ります。1つ目が「出来事」、2つ目が「べき」、3つ目が「書きかえ」の箱です。

次に、「べきログ」の中から、自分が怒りを感じた出来事を1つ選びます。そして1つ目の箱(出来事)に、選んだ出来事と、それに対して「自分がどう感じたか?」を書きます。

例えば、

「仕事でささいなミスをしただけなのに、上司に厳しく叱られた。『そこまで怒らなくてもいいじゃないか』と思った」

「タクシーの運転手が道を間違えて、到着が10分も遅れてしまった。腹が立った」

 といったような感じです。

“心の許容範囲”を広げる3コラムテクニック STEP1

その考えは「健康的」? 「べき」を書き込んでチェックしよう

「出来事」の箱を書き終えたら、その下の「べき」の箱に、怒りの元となった「コアビリーフ」を書き加えます。

コアビリーフとは、前回も説明したように、物事に対する「~べき」「~べきではない」といった自分の考え方です。

先ほど書き込んだ出来事でいえば、ささいなことで上司に叱られ、怒りを感じたのは、「誰にでもうっかりミスはあるのだから、上司はもっと寛容である『べき』だ」というコアビリーフを持っているからかもしれません。タクシーの運転手に対して腹を立てたのも、「プロなんだから、道はしっかり覚えておく『べき』だ」という考えを持っているからではないでしょうか。

“心の許容範囲”を広げる3コラムテクニック STEP2

いずれにしても、自分が出来事に対して率直にどう感じ、どのように考えたのかを2つ目の箱に書き記します。そのうえで、書き終えたコアビリーフを見て、「この考えは長期的に見て、自分や周りの人にとって健康的なのか」を客観的に考え直します。

アンガーマネジメントでは、この「Long term healthy(長期的に見て健康的か)」ということをとても重要視しています。

大切なのは、「正しいかどうか」だけでなく、自分にとっても、相手にとっても、長期にわたって心身ともに健全でいられる考え方なのかどうか、を見つめ直すことです。

あなたが、その出来事に対する「~べき」「~べきではない」にこだわることで、自分や相手の心身に害を及ぼしかねないと思うなら、それは「不健全な考え方なのかもしれない」と、とらえ直す必要があるかもしれません。

3つ目の箱で価値観を書きかえる

「べき」の箱に書き込んだ内容が「健康的なのかどうか」を評価したら、3つ目の箱に「価値観の書きかえ」を行います。

「どう考えれば怒らずに済んだのか」「その出来事をプラスの方向にとらえるためには、どう考えればよいのか」「そのために必要なコアビリーフは何か」と考え、書いていきます。

ささいなミスにもかかわらず、上司が厳しく叱責したのは、「どんな仕事であろうと、常に緊張感を持って臨んでほしい」という思いがあったからなのかもしれません。「自分の成長のために叱ってくれたのだ」とプラスにとらえれば、怒りを感じたことが「不健全だった」と思い直せるようになるはずです。

また、道を間違えてしまったタクシーの運転手は、地方から上京してきたばかりで、まだ道がよくわかっていなかったのかもしれません。

“心の許容範囲”を広げる3コラムテクニック STEP3

このように、「書きかえ」の欄に書く内容は、必ずしも事実でなくてよく、「~かもしれない」といったものでかまいません。「~べき」「~べきではない」という枠を外し、「~だったのかもしれない」という自問自答を繰り返せば、自分の価値観が書きかわり、怒りの境界線を広げられるようになるはずです。

以上が、怒りの原因を客観的に見つめ直し、価値観の書きかえによって“怒りにくい体質”に変える3コラムテクニックです。

“怒りにくい体質”への改善は、エクササイズやダイエットのように継続すればするほど結果が表れるもの。毎日少しずつでも、ぜひ続けてみてください。

「怒り」をコントロールするためのコツ

「~べき」「~べきではない」の枠を外し、「~だったのかもしれない」と自問自答すれば、価値観が書きかわり、怒りの境界線が広がる

PROFILE

安藤 俊介
安藤 俊介あんどう・しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をアメリカから導入した日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナーなどを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、他多数。書籍は中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなどでも翻訳され、累計発行部数は58万部を超える。

記事公開:2021年8月