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今日からはじめる「アンガーマネジメント」

怒りの感情と上手に付き合い、コントロールする方法を紹介します。
実践すれば仕事も人間関係もよりスムーズになるはず!

vol.7 つい、部下を怒りそうになったとき
試してみたい「言い換え」あれこれ。

突き放すのではなく、救いの手を差し伸べる言葉を使ってみる

前回までは、怒りの原因に対する許容範囲を広げ、“無駄に怒らない体質”になるためのトレーニング方法について紹介しました。

今回からは、より日常に即したアンガーマネジメントの方法を紹介します。相手に怒りをぶつけそうになったとき、その言葉をどんなふうに言い換えると気持ちを抑えられるのか、シチュエーション別に解説していきます。

今回紹介するのは、職場で部下を怒鳴りそうになったときの「言い換え」です。

例えば、部下が商談に遅刻し、取引先の人を怒らせてしまったというケース。若い社員は、いくら目を光らせていても、思いがけないトラブルを起こすものです。

取引先からクレームを受けても、部下がうっかりしたことなので、自分には責任がないと思い、つい、

「何とかしろよ!」

などと、怒鳴ってしまう人もいるのではないでしょうか。

しかし、これではあまりにも感情的ですし、部下に対する教育も上司の仕事に含まれるのですから、「責任逃れ」とも受け取られかねません。

「確かに僕が悪いんだけど、この人は何もフォローするつもりがないんだな」と、部下から見くびられる可能性もあります。同僚に言いふらされれば、社内での評判が下がってしまうことや、最悪の場合、パワハラとして処分に至ることも考えられるでしょう。

そこで、このような状況に遭遇したら、第1回で紹介したように、頭の中で6秒カウントして理性が働くのを待ちます。そして、「何とかしろ」という言葉を、次のような言葉に言い換えてみてはどうでしょうか。

「どうすればいいか、一緒に解決策を考えよう」

取引先の印象を悪くしたことで、おそらく部下はかなり動揺しているはずです。「何とかしたいけど、自分ではどうにもならない。誰かに助けを求めたい」と思っているに違いありません。そんなときに「自分で何とかしろよ」などと突き放すと、むしろ部下を追い詰めることになってしまいます。

逆に、「一緒に……」と手を差し伸べる言葉を投げ掛ければ、あなたに対する部下の信頼度もアップすることでしょう。

ポジティブな言葉に言い換えて互いの気持ちを和ませる

怒りの言葉を言い換えるときのポイントは、「互いがポジティブになれるような言葉」に換えることです。

先ほどの例でいえば、「何とかしろよ!」と怒鳴ることで、あなたの気持ちは一瞬すっきりするかもしれません。けれども、後から「何であんなに怒ったんだろう」と自己嫌悪に陥り、時間がたつほどモヤモヤが深まる人もいるのではないでしょうか。周囲の目が気になり、嫌な気持ちになる人もいるでしょう。

もちろん部下にとっても、怒鳴られるというのはとても衝撃的なことです。気持ちの弱い人なら、無気力や引っ込み思案になってしまう可能性もあります。

つまり、怒る側、怒られる側のどちらにも、何ひとつメリットはありません。

ポジティブな言葉に言い換えると、これらのことがすべて逆になります。

怒ったことへの後悔と、怒られたことへの恐怖がなくなり、むしろ、安堵とともに、互いへの信頼も深まるのです。「怒られた」という事実よりも、解決するべき内容に目が向きやすくもなります。

そもそもなぜ、アンガーマネジメントが必要なのかといえば、怒りをストレートに表現すると、人間関係が台なしになってしまうからです。怒鳴りたい気持ちをぐっと抑え、ポジティブな言葉に言い換えることは、人間関係を良好に保つための手軽な“妙薬”だといえます。

部下を怒りそうになったときの「言い換え」例

部下のミスのせいで仕事に影響が出たときには

もうひとつ、上司が部下に怒りがちなケースと、その対処法を紹介しましょう。

チームで行っている仕事で、部下がうっかりミスを起こしてしまうというのは、よくあることです。そんなとき、

「いままでの苦労がすべて台なしだよ!」

などと怒りをぶつけてしまったこと、もしくはそのような場面を見たことはないでしょうか。上司の立場としては、チームで注意深く進めてきた仕事のなかで一人の部下のミスが大きく見え、いらだってしまうのでしょう。しかし、部下の立場では「それほどのことかよ!」と、つい反発を覚えてしまうのではないでしょうか。

実際、それまでやってきた仕事がすべて台なしになるほど、致命的なミスを犯すということはめったにありません。冷静になればわかるはずですが、怒りに任せて、つい大げさな言葉が出てしまうのです。

この場合は、自分の怒りが収まるのを待ってから

「些細なミスでも全体に影響が出るから、次からは気を付けてね」

などと言い換えて伝えてみましょう。こうすれば、単なる感情の爆発から、次の機会の教訓につながる、建設的な指摘に変わります。部下は、あなたのことを「どんなときでも冷静に状況を判断して、適切なアドバイスをしてくれる人だ」と感じるはず。信頼関係の構築につながるのです。

「怒り」をコントロールするためのコツ

つい感情に任せて出そうな言葉を
「互いがポジティブになれる言葉」に言い換える

PROFILE

安藤 俊介
安藤 俊介あんどう・しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事、アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をアメリカから導入した日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナーなどを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、他多数。書籍は中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムなどでも翻訳され、累計発行部数は58万部を超える。

記事公開:2021年10月