突き放すのではなく、救いの手を差し伸べる言葉を使ってみる
前回までは、怒りの原因に対する許容範囲を広げ、“無駄に怒らない体質”になるためのトレーニング方法について紹介しました。
今回からは、より日常に即したアンガーマネジメントの方法を紹介します。相手に怒りをぶつけそうになったとき、その言葉をどんなふうに言い換えると気持ちを抑えられるのか、シチュエーション別に解説していきます。
今回紹介するのは、職場で部下を怒鳴りそうになったときの「言い換え」です。
例えば、部下が商談に遅刻し、取引先の人を怒らせてしまったというケース。若い社員は、いくら目を光らせていても、思いがけないトラブルを起こすものです。
取引先からクレームを受けても、部下がうっかりしたことなので、自分には責任がないと思い、つい、
「何とかしろよ!」
などと、怒鳴ってしまう人もいるのではないでしょうか。
しかし、これではあまりにも感情的ですし、部下に対する教育も上司の仕事に含まれるのですから、「責任逃れ」とも受け取られかねません。
「確かに僕が悪いんだけど、この人は何もフォローするつもりがないんだな」と、部下から見くびられる可能性もあります。同僚に言いふらされれば、社内での評判が下がってしまうことや、最悪の場合、パワハラとして処分に至ることも考えられるでしょう。
そこで、このような状況に遭遇したら、第1回で紹介したように、頭の中で6秒カウントして理性が働くのを待ちます。そして、「何とかしろ」という言葉を、次のような言葉に言い換えてみてはどうでしょうか。
「どうすればいいか、一緒に解決策を考えよう」
取引先の印象を悪くしたことで、おそらく部下はかなり動揺しているはずです。「何とかしたいけど、自分ではどうにもならない。誰かに助けを求めたい」と思っているに違いありません。そんなときに「自分で何とかしろよ」などと突き放すと、むしろ部下を追い詰めることになってしまいます。
逆に、「一緒に……」と手を差し伸べる言葉を投げ掛ければ、あなたに対する部下の信頼度もアップすることでしょう。