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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.12

センスに左右されず完成度を上げる!
図形と配色にもう迷わないルール設定の大原則(2)

過度な装飾はNG。図形は情報とイメージを「シンプルに表現」

前回は、ルール設定の中でも基本となる「レイアウト」「文字」「矢印」のルールについて解説しました。今回は、「図形」と「配色」について説明します。

多くの人は正しい使い方を理解せずにフィーリングで図形を使ったり、センスや気分で配色を決めたりしているのではないでしょうか。一人歩きする資料の中でのバラつきを防いだり、実際に表現したいこととギャップが生じないようにするためにも、図形や配色にも事前にしっかりとルールを決めておきましょう。

まず、スライド作成で多用される「図形」から見ていきます。その時の気分で何となく決めるのではなく、こういう場合は四角形、こういう場合は楕円形といった具合に、情報とイメージを「シンプルに表現する」ことを念頭に置いて、それぞれの図形が持っている特徴を理解しておくことが大切です。

図形の中でもよく使われるのが「四角形」と「円・楕円形」で、それぞれ次のような特性を持っています。

  • 四角形
    「具体的なもの、実体のあるもの」を表すのに向いている。
    例:会社名、組織名など
  • 円・楕円形
    「抽象的なもの、概念的なもの」を表すのに向いている。
    例:ビジョン、アイデアなど
図形の使用例(四角形、円・楕円形)

そのほかに、よく使われる図形には「ホームベース」や「吹き出し」があります。

  • ホームベース
    「流れ」を示すのに向いている。
    例:スケジュール、物事のステップなど
  • 吹き出し
    「コメント」を示すのに向いている。
    例:セリフ、注釈など
図形の使用例(ホームベース、吹き出し)

四角形を使って資料作りをする際、一つの資料の中に鋭角四角形と角丸四角形を同時に使うことはできるだけ避けましょう。それぞれの図形が持っている印象が大きく異なるからです。また、図形のイメージを踏まえて、フォントを選ぶと統一感が出ます。図形とフォントの違いによって、受ける印象は変わってきます。

  • 鋭角四角形
    「真面目、堅い」印象を持ち、「フォーマルな資料」に向いている。おすすめのフォントは、MS PゴシックやMS P明朝。
    例:官公庁や金融などやや堅い業界向け
  • 角丸四角形
    「ソフトな」印象を持ち、「ややカジュアルな資料」に向いている。おすすめのフォントはメイリオ。
    例:アパレルやサービスなどややカジュアルな業界向け
図形とフォントが与える印象の違い

また、図形を使用するときは影を付けたり、立体化したりする必要はありません。影や立体などの装飾を施し目立たせる目的であったとしても、余計な装飾は資料を分かりにくいものにしてしまう上に、作業時間も余分にかかってしまいます。

色の数は少なめに! 知っておきたい配色の基準「色相環」とは

次は、「配色」です。配色は資料を作る上で最もバラつきが起こりやすい要素です。作り手のセンスや気分に委ねられることが多いので、あらかじめ配色のルールを決めた上で、資料作りを始めるようにします。特にチームで取り組む場合は、ルールの取り決めはマストと心得ましょう。

とはいえ、配色は資料作りでも悩ましいポイントの一つのため、「自分で配色を決めるのは苦手」という人や、「センスに自信がない」という人もいるのではないでしょうか。配色にはセンスが必要と思われがちですが、実は基準となるルールが存在します。それに従うことで、センスに頼らなくても適切な配色ができるようになるのです。

それが色相を円状に並べた「色相環」(しきそうかん)です。色相環を基に、資料の中で一貫して使用する「ベースカラー」と、その反対側に位置し、強調したい部分に使う「アクセントカラー」を決めます。決定したベースカラーの両隣の2色は類似色となるため、統一感のある配色ができます。ベースカラー1色、類似色2色、アクセントカラー1色の合計4色を資料の中で使うのがおすすめです。1枚のスライドで、多くの色を使い過ぎると統一感に欠けてしまうので気を付けましょう。

色相環とベースカラー・アクセントカラーの例

ですが、資料作りで最初にベースカラーを選択するときは悩むことも多いでしょう。そんなときは、企業イメージを表現するコーポレートカラーが参考になります。コーポレートカラーがない場合は、色が与えるイメージを考慮して選びます。

色が与えるイメージと業界別の使用例

小見出しや強調箇所などの図形に、青・赤・黄色などの原色を使っているケースがありますが、原色はとても強い色ですから、資料での使用は控えましょう。例えば、同じ赤色であっても、明るさや彩度を抑えた赤にすれば資料として読みやすくなります。

原色と明るさを抑えた例

また、スライドの背景に色が付いている資料をたまに見かけることがありますが、見やすさの点から背景は必ず「白」にしましょう。色が入っていると一見、華やかな印象を与えるかもしれませんが、肝心の内容が見づらくなってしまいます。

そのほか、文章全体に色を付けているケースも見かけますが、特にビジネス文書の場合、色付き文字はフォーマルな印象に欠け説得力を弱くする恐れがあります。強調したい箇所以外は、文字の色は黒かグレーを選ぶようにします。

いつでも見直せる「ルール表」を作成して、生産性と完成度をアップ!

ここまでレイアウト、文字、矢印、図形、配色のルールを決めてきました。一方で「せっかくルールを作っても守れない」「守ってもらえない」というのが、多くの人に共通する悩みではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが「ルール表」です。ルールを守るのが面倒だったり、ルール自体を忘れてしまったりするのを防ぐために、ここまでに決めたルールを1枚のスライドにルール表としてまとめましょう。次の3つの効果があります。

ルール表の効果

  1. すぐに参照できる
  2. 図形などをコピーして使える
  3. 他の人と共有できる

特に 3 は業務上とても重要です。作成したルール表を会社や部署単位で共有すれば、さまざまな人が作った資料の統合や、資料の活用がスムーズに行えるでしょう。次のものをまとめておきます。

ルール表にまとめておくもの

  • フォント
  • 図形
  • 矢印
  • タイトル
  • 箇条書き(次回解説予定)

特にフォント、図形、矢印、箇条書きは、そのままコピーして使用できるので、その都度設定する必要がなく手間も省けます。スライドを作成する際には、常にルール表を別ウィンドウで開いておき、いつでもコピーできるようにしておくと便利です。

ルール表の例

これで一人歩きする資料のベースとなる「ルール設定」が完了しました。次は、ルールに従って実際にスライドを作成していきましょう。スライドの表現方法には、「箇条書き」「図解」「グラフ」の3つがありますが、その中でも最も基本となるのが箇条書きです。

箇条書きは、ポイントがまとまっているため読み手にとって分かりやすく、作り手にとっても自分の頭の中を整理できるのがメリットです。このように便利な箇条書きですが、「どうやって書いていいか分からない」など、苦手な人も多いのではないでしょうか。

次回は箇条書きの苦手を克服し、誰でも箇条書きがうまくなるコツを3つのステップで紹介します。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2022年10月