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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.2

人を動かす資料を作れ!
「一人歩きする資料」5つのポイント。

「人を動かす」資料を、いかに「早く」作れるかが勝負!

前回、「一人歩きする資料」とはどのようなものかについてご紹介しました。今回はより具体的に、「“人を動かす”ための、一人歩きする資料」のポイントを解説していきましょう。

一部復習にもなりますが、1万枚以上の資料を作ってきたコンサルタントとしての私の経験から、資料作成に重要な要素は、次の3つに要約されていると思います。

  1. 人を動かすこと
  2. 一人歩きすること
  3. 早く作ること

1、2については、前回も紹介しました。社会人が資料を作るうえで目指すべきなのは、自分の代わりに伝えたいことを伝え、より多くの人に自分の提案を現実化するために動く「一人歩きする資料」です。

さらに、ビジネスではこうした資料を「早く作る」ことが重要です。この「早さ」の本質的なメリットについては後ほど詳しく説明します。

実際に資料を早く作成するために必要なのが「仕事の進め方の合理化」です。成果物イメージを最初に明確にする「ゴール志向」、仮説をベースに進める「仮説思考」などのスキルを駆使することで、仕事を合理的に、早く進めることができるようになります。

もう1つ大切なのが「操作の合理化」です。これはショートカットキーの利用や各種ツールの設定最適化、マウスを極力使わない、といったことの積み重ねが重要です。1作業につき、ショートカットやツール設定最適化の有無で生じる時間の差はたった10秒でも、それが積み重なれば1日30分〜1時間近いロスになっていきます。自分が仕事で使うショートカットなどの知識を常にインプットし、実践しながら身に付けていくのがよいでしょう。

「一人歩きする資料」を実現させる5つのポイント

資料作成に重要な3つの要素を押さえたうえで、「一人歩きする資料」を実現させるための資料の内容とは、どのようなものでしょうか。私は具体的に以下の5つのポイントを挙げています。

1. メッセージが明確である
相手に対するメッセージが曖昧なものであってはいけません。資料を作る前に伝えたいメッセージを決めておくことがポイント。データがたくさんあったとしても、「伝えるメッセージ」はシンプルかつ明確に。
2. パッと見てわかる
資料を見た瞬間にわかるようにするためには、「ほとんど読まなくてもメッセージが伝わる」ということが重要です。文字量を減らし、図解やグラフを使って大事な部分を強調するようにしましょう。
3. 根拠が述べられている
4. 情報が整理されている
いくらわかりやすく、はっきりとしたメッセージが記載されていても、それが根拠に乏しいものであっては、説得力がありません。つまり、人を動かせないのです。根拠となる情報がきちんと述べられているうえで、わかりやすく整理されている必要があります。
5. 読者のアクションが明確である
読み手に期待するアクションが明確であることも大事です。単に「ご協力をお願いします」だけでは、相手は具体的にどんな行動をしたらよいのかわかりません。「営業会議で議題として取り上げてください」というように、何をすればよいかが明確になるように伝えます。

「早い=雑」は間違い!
早く作って「考える時間」を増やし、資料・仕事の質をアップ

さて、前述の5つのポイントを押さえたうえで、資料は早く作ることが重要だと、冒頭でも述べました。「早い作業だと成果物の質が下がるのでは?」と思われるかもしれませんが、実は逆なのです。早く作業をするということは、資料の質の向上につながります。

資料の質とは、さまざまな情報を組み合わせて何度も繰り返し考えることによって向上するもの。つまり、資料の質を向上させるためには、「考える量」が絶対的に必要になるのです。

下図のようにピラミッドにたとえてみると、底辺の「考える量」が増えれば増えるほど、より高いピラミッドが作られるようになり、「高い仕事の質」につながります。もちろん「仕事の質」=「資料の質」です。

考える量と仕事(資料)の質の関係

このピラミッドの底辺を支える考える量は、いわゆる頭のよい人の方が絶対的に有利だと思われる方も多いでしょう。しかし、考える量は「考える速さ×考える時間」に分解できます。考える時間次第で、考える量は増やすことができるのです。

考える量と考える速さ、考える時間の関係

考える速さというものは、人によって異なります。いわゆる才能に依存する部分もあるでしょう。しかし、時間は皆に平等です。資料作成の単純作業をスピードアップすることが考える時間を捻出し、それが読み手の立場や資料の目的を踏まえメッセージを明確に伝えるための考える量を増やし、資料の質を上げるのです。

以前所属していたコンサルティング会社では、私は同僚と比較すると、頭の回転も速い方ではありませんでした。しかし、作業の効率化を徹底し、作業スピードを速くすることで考える時間を捻出し、考える量を増やして仕事の質を高めることで、コンサルタントとしてこれまで働いてこられたのだと思っています。

次回以降も、人を動かして「多くの人を巻き込める」資料作りを行うために、事前にしておきたい準備や、理解しておきたい基本の考え方などについて解説していきます。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2021年7月