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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.5

ストーリー作りの大原則(2)
資料の「スライドタイトル」と
「スライドメッセージ」の決め方とは?

スライドタイトルは「主張なし」で簡潔に!が鉄則

前回は一人歩きする資料作りに必要な「ストーリー作り」のうち、構成、枚数を決めるコツや手順を紹介しました。今回は各スライドの「スライドタイトル」と「スライドメッセージ」、そして「スライドタイプ」の決め方を紹介します。

スライドタイトルとは、スライドの最上部に配置し、スライドの内容を簡潔に相手に示すものです。適切なスライドタイトルがついていると、相手は一瞬でそのスライドの内容を理解することができます。

そして、スライドメッセージは、スライドタイトルの下に入れるテキストのこと。そのスライドが主張していることを相手にわかりやすく伝える役割を持っています。

つまり、具体的でわかりやすいスライドタイトルとスライドメッセージをつけることは、「一人歩きする資料」作りの第一歩といえるのです。

わかりやすいスライドタイトルのポイントは、「(1)短くまとめる」「(2)主張しない」「(3)体言止め、または名詞で終わる」「(4)主語を明確にする」の4つです。

(1)短くまとめる
スライドの内容を一瞬で理解してもらえるように、スライドタイトルは短く簡潔にまとめます。詳細な情報は、スライドタイトル以外の部分で伝えるようにしましょう。

悪い例:当社製品の売上数量推移(2021年1月~12月)
良い例:当社製品の売上数量推移

この場合は、集計期間「(2021年1月~12月)」はスライドの中で示せばOK。スライドタイトルからは外しましょう。
(2)主張しない
スライドタイトルには主張を入れないようにするのがポイントです。

悪い例:当社製品の売上数量の減少
良い例:当社製品の売上数量推移

悪い例では、「減少」という言葉に主張が含まれています。たとえ明らかに売り上げの減少が見えていても、「推移」という言葉をタイトルに使った方が客観的な分析を行ったように見えるため、スライドタイトルに適しています。
(3)体言止め、または名詞で終わる
体言止めもしくは名詞で終わるようにすることで、1つ目のポイントとして挙げた簡潔さも実現できます。

悪い例:売上減少は3つの要因で説明できる
良い例:売上減少の3要因

悪い例の方が一見丁寧ですが、文章が長く冗長です。名詞で終わる形にすれば、簡潔でわかりやすい表現になります。
(4)主語を明確にする
スライドタイトルでは主語を明確にし、読み手が理解しやすくなるよう、スライド間でできるだけ主語をそろえます。主語がそろえば、2枚目以降のスライドタイトルの主語は省略可能になり、より簡潔にすることが可能です。主語が変わったら改めて明記します。

悪い例:
(スライド1)当社製品の売上数量の減少
(スライド2)当社製品の売上減少の3要因 →1と同じ主語「当社製品の」は省略できる
(スライド3)購買行動の変化 →2とは主語が変わったが、省略され、誰の購買行動か不明

良い例:
(スライド1)当社製品の売上数量推移
(スライド2)売上減少の3要因
(スライド3)顧客の購買行動の変化

スライドメッセージは50文字以内で「主張する」のがポイント

スライドタイトルが決まったら、次はスライドメッセージを考えましょう。

スライドメッセージなしの資料が使われるケースも多く見られますが、「資料で何を言いたいのかわからない」といったフィードバックを受けたことがある場合は、スライドメッセージの記載を強くおすすめします。スライドメッセージを作成することで、自分の要約力が磨かれる効果も期待できるでしょう。

スライドメッセージを作る際は、原則として、1スライドにつき1つの文章にまとめます。「(1)主張を含める」「(2)文章で表現する」「(3)50文字以内にまとめる」という3つのポイントを押さえて作成しましょう。

(1)主張を含める
先ほど、スライドタイトルには主張はいらない、とお伝えしましたが、スライドメッセージはその逆です。基本的に自身の主張を端的に表します。
ただし、この主張とは、自分の主観的な意見ではありません。事実に基づいて相手に伝えたい内容のことを指します。
(2)文章で表現する
スライドタイトルは体言止めや名詞を使用しますが、スライドメッセージは必ず文章として表現します。主張の時制や確度を明確にするために有効だからです。
(3)50文字以内にまとめる
スライドメッセージに長文はNG! スライドの内容を相手に簡潔に伝えることが目的なので、目安として50文字以内にまとめましょう。

悪い例:
・過去5年間の当社製品の売上数量推移は以下の通りである →主張がない
・5年前と比較して当社製品の売上数量は10%減少 →名詞で終わっている
・当社製品の売上数量の推移を過去5年間にわたってデータをもとに検証すると、売上数量は10%減少していることが判明した →50文字を超えている

良い例:
5年前と比較して当社製品の売上数量は10%減少している

また、スライドメッセージに込める主張をより説得力のあるものにするためには、「比較対象」と、その「差」を明確にすることを意識しましょう。人は客観的な評価をもとに、その主張が妥当かどうかを判断するものです。

例えば、「当社製品の売上数量は減少している」というメッセージでは、評価が主観的で説得力に欠けます。そこで「5年前と比較して当社製品の売上数量は減少している」とすると「5年前」という比較対象が生まれて客観性が増し、説得力が高まります。

しかし、まだ「どのくらい減少しているのか」という「差」の部分で曖昧さが残るので、数字を使ってみましょう。「5年前と比較して当社製品の売上数量は10%減少している」とすることで、より説得力が増します。

スライドタイプは「箇条書き」「図解」「グラフ」の3つを使い分ける

スライドタイトルとスライドメッセージを決め、資料ストーリー作りの最後に行うのが「スライドタイプ」の決定です。スライドタイプには、「箇条書き」「図解」「グラフ」の3種類があり、それぞれ前回ご紹介した「背景」「課題」「解決策」「効果」のスライド構成と、以下のように対応しています。

スライドタイプとスライド構成の対応

なかには「グラフ」と「図解」というように、複数のスライドタイプを組み合わせて説明する場合もあります。効果を定性面、定量面の両方から示すというときは図解とグラフの両方を使う方がわかりやすいこともあるので、内容に合わせて自在に使い分けられるようになるとよいでしょう。

「図解」と「グラフ」のスライドタイプを組み合わせたイメージ

スライド全体のイメージをノートにラフスケッチしてみよう

ここまで2回にわたって資料ストーリー作りの原則について紹介してきました。スライド構成、スライドタイトル&スライドメッセージ、スライドタイプまで決まったら、いよいよプレゼンテーションソフトの出番……の前に、スライド全体のイメージをラフスケッチとしてノートなどにざっと描いてみましょう。

それぞれにスライドタイトルとスライドメッセージを記入したら、図解やグラフのイメージを手書きで描いていきます。図解やグラフはあくまでイメージ。ざっくりとしたもので構いません。

面倒に思われるかもしれませんが、これは、実は時短にもつながる作業です。いきなりプレゼンテーションソフトでスライドを作り始めてしまうと、図解やグラフの仕様に迷って時間が余計にかかることが少なくないからです。スライドの全体構成とイメージをあらかじめ確認しておくことで、PC上での作業に移ったとき、より無駄なくスムーズに作業を進めることができます。

スライド全体のストーリーが決まったら、次は、スライドの内容をより根拠づけ、人を動かす一人歩き資料にするための「情報収集」が必要です。次回は、「効率的に情報を収集するために仮説を立てる方法」などを詳しく解説します。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2021年12月