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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.6

相手の理解を深めるための情報収集に欠かせない「仮説」とは?
前提知識は「マンガ入門書」でゲット!?

情報収集は、まずは仮説を立ててから

前回までは、資料の目的を明確にした上で、それを相手にしっかりと伝えるために必要なスライドの構成やタイトルの付け方、スライドメッセージなどを決める手順をお伝えしてきました。ここからは、スライドの内容を根拠づけるために必要となる“情報収集”について考えていきましょう。

ここでいう「収集したい情報」とは、資料を読む相手に、スライドメッセージ、つまりスライド一枚一枚の主張を理解してもらうために必要となるデータや根拠のことです。ここではこれを「スライド情報」と呼びます。

「スライド情報」を集める際に最初に重要になるのが、一体どのようなものを集めればよいか、という仮説を立てることです。

「情報収集なら、まず資料をあたってみればいいじゃないか」と思われがちですが、どのような分野でも玉石混交の情報があふれているもの。手当たり次第で資料を探すと、時間ばかりがかかってしまいます。対して、仮説を立ててから情報収集を開始すれば、情報を効率的に集めて取捨選択することができ、時間の短縮にもつながります。

ただし、最初に立てた仮説のとおりにデータが入手できない場合ももちろんあります。そんなときは、仮説に修正を加えて他のデータを収集するか、スライドメッセージを修正して進めていくようにします。

なお、情報収集中、スライド情報の出所は必ず記録し、表計算ソフトなどで整理しておきましょう。データの出所がはっきりしない資料は、情報の信ぴょう性が低く、説得力が弱くなってしまいます。

仮説立てのためのインプットは、まずはマンガ入門書から!

前述のとおり、効率的な情報収集には仮説が欠かせませんが、適切なものを設定するのは簡単ではありません。特に、提案する分野の知識や理解が乏しい場合、仮説作りはなかなかうまく進まないはずです。

そのため、まずは仮説の検討のために、前提となる知識を身につける必要があります。以下のような流れで仮説作りに必要な知識を身につけるとよいでしょう。

(1)市販されているその業界の入門本を読み、知見を得る
まずは『だれでもわかる〇〇の本』というような入門本を複数読んで、その分野に対する知見をさらいます。仕事に関して調べ物をするときには、つい難しい本を選びたくなってしまうものですが、最初はマンガ形式の入門書など平易な本がおすすめ。3冊ほど並行してざっくりと読んで同じ内容を反復することで、理解と定着が促されます。

(2)証券会社のアナリストレポートを読み、現在の業界トレンドなどを把握
入門書は素早く業界の知識を得るのに最もおすすめの方法ですが、情報の鮮度が高くない場合があります。そこで、次に行うのは、(1)で得た知識を最新の情報でアップデートする作業です。業界の最新動向は、証券会社のアナリストレポートが信頼性も高く、おすすめです。

(3)経験者へのヒアリングで、業界の内部情報を理解する
同僚やその友人などをたどって、その分野での業務従事経験者や、プロジェクト経験者にヒアリングをすることで、業界の内部情報を把握します。

(4)エキスパートへのインタビューで、今後の業界動向などへの理解を深める
可能であれば業界に精通しているエキスパートにヒアリングを行い、今後の業界動向などへの理解を深めましょう。専門家を探してアポイントがとれるネット上のサービスなどもあります。

仮説作りの前に知りたい、スライド情報の2つの型

入門書などを読み、情報収集する分野についてざっくりとした理解を持ったら、スライド情報の仮説作りに進んでいきます。このとき知っておくとよいのが「2つの型」です。

スライド情報は、スライドメッセージの下、「ボディ」と呼ばれる部分に配置されるものです。ボディに入るスライド情報には、「詳細情報型」と「根拠型」の2種類があります。2つの型と、それぞれどのようなスライド情報が入るのかについて見てみましょう。

(1)スライドメッセージを詳細に説明するための「詳細情報型」
スライドメッセージをより詳しく説明するために必要な情報のこと。主に計画書や報告書といった説明に使う資料に多い。

「詳細情報型」の例

(2)スライドメッセージの根拠を説明するための「根拠型」
スライドメッセージを根拠づけるために必要な情報のこと。主に企画書や提案書といった提案に使う資料に多い。

「根拠型」の例

どちらの型になりそうか見当がついたら、次のステップに進みます。

「ロジックツリー」でスライド情報を整理、理解する

スライド情報を収集する際は、情報と各スライドメッセージとの関係を整理していく必要があります。その際は「ロジックツリー」で整理しましょう。前述した2つの型では、それぞれ構造が少し違います。

「詳細情報型」と「根拠型」のロジックツリーの違い

特に、「根拠型」のロジックツリーでスライド情報を整理する際は、第2階層の情報が第1階層の情報をしっかりと根拠づけているか、きちんとチェックするようにします。大事な情報が漏れてしまっていると、スライドメッセージに説得力が欠ける結果になることもあります。

このようにロジックツリーを用いながらスライド情報の仮説作りを進めていくうえでは、どのような切り口でツリーを構成するかが重要になります。

切り口の設定の仕方としておすすめしたいのがフレームワークの活用です。フレームワークとは、いわば「考え方の枠組み」のこと。この多くが「MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)」、つまり、「お互いにダブリがなく、全体にモレがない」ように作られています。フレームワークに基づいて仮説を立てていけば、資料作りの経験が浅い人であっても過不足ない情報を効率的に収集し、比較的簡単に「スライド情報の仮説」を作ることができるというわけです。

そこで次回は、スライド情報の仮説作りには欠かせないフレームワークの活用方法について、より詳しく解説していきます。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2022年1月