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「一人歩きする資料」の作り方

対面やオンラインで説明をしなくても、読み手が内容を十分に理解できる
「一人歩きする資料」作成のためのテクニックや考え方を、元外資系コンサルタントが教えます。

vol.8

資料作成のスピード・完成度を左右する!?
情報収集を効率的に行う秘訣とは。

計画を立ててから情報収集するのが、効率化の基本ポイント

前回は、スライド情報の仮説作りを効率的に進めるための「ビジネスフレームワーク」や「時系列フレームワーク」の使い方を紹介しました。スライド情報の仮説が完成したら、次はそれを裏付けるための情報を集めていきます。今回は、質の高い情報を無駄なく収集するための方法を解説します。

情報収集は、資料作成のスピードや完成度を左右する重要な要素です。情報収集する前に、あらかじめどのような方法があるのか把握しておけば、効率的に進められるでしょう。

情報を集める上で大切なのは、必ず情報収集の計画を立てることです。計画を立てずに情報収集を始めてしまうと、多くの場合、あれもこれもとよりよい情報を求めて時間だけがどんどん浪費されてしまうことになります。情報収集をしていると、この情報もよさそうだ、こういう情報も使えるかもと、目移りして求めている情報から外れてしまったり、情報を集めること自体が目的になってしまったりすることもあるでしょう。しかし、情報を集める前に、何のための情報収集なのか、収集した情報をどう活用するのか、目的やアウトプットを意識して計画しておけば、あれもこれもと情報を集めてしまうことはないはずです。

「方法・時間・実行」。効率的に情報収集する3つのステップとは

情報収集といわれても、どうすればいいのか分からないという方も多いかもしれません。そこで情報収集を効率的に行うために、

(1)情報収集の方法を決める
(2)情報収集の時間を決める
(3)情報収集を実行する

という3つのステップを踏まえて解説していきましょう。

ステップ(1)情報収集の方法を決める

効率的に情報を集める上で避けたいのは、情報をただやみくもに探し始めること。インターネットや文献、専門家へのインタビューなどさまざまな方法から、自分が求めている情報を探し出すための最適なものを選ぶことが大切です。おすすめなのは、次の3つです。

1.社内の人に聞く

情報収集の方法として、まず実行すべきなのが「社内の人に聞く」ことです。探そうとしている情報をすでに知っている人や、詳しい人が社内にいないか確認してみましょう。かつて同じ情報を調べたことがある人がいれば、情報を提供してくれるかもしれませんし、どのような書籍やWebサイトを見ればよいか把握しているでしょう。同じ部署の先輩など身近な人に聞いてみたら、意外とすぐに、情報を得られたという経験をした人も少なくないはずです。

2.社外から情報収集する

「社内の人に聞く」を実行した後、さらに情報が必要な場合は、本格的に情報収集をスタートさせます。社外からの情報収集では、主に競合企業や市場情報を集めるために、次のような方法で行います。

社外から情報収集する方法

社外から情報を探すときの最もポピュラーな方法が、インターネット検索です。使い勝手のよい有料サービスもありますが、通常のインターネット検索でも、工夫次第で質の高い情報を得ることができます。

例えば、Googleなどの検索エンジンを使ったとしましょう。検索キーワードによっては、ブログの記事やSNSのニュースなど、それほど信頼性の高くない情報が上位に表示されるという経験をした人も多いのではないでしょうか。

そこでおすすめしたいのが、PDFやエクセルなどのファイル形式を指定して検索する方法です。やり方は簡単で、検索キーワードに「filetype:」というコマンドを加えるだけで、特定のファイル形式のみ検索できます。

filetypeコマンドの使用例
・コマンド:「filetype:」
・使い方 :「filetype:ファイルの拡張子 検索キーワード」
・検索例 :「filetype:pdf 電子書籍市場規模」
→ この結果、電子書籍市場規模に関するPDFファイルのみ表示されます。

ファイル形式を指定できる検索コマンドの例
・PDFファイルの検索:「filetype:pdf」
・エクセルファイルの検索:「filetype:xlsx」
・パワーポイントファイルの検索:「filetype:pptx」

さまざまなファイル形式がありますが、比較的質の高い情報を得られるのがPDFファイルです。PDFは専門家によるレポートや報告書が多く、信頼性の高い情報が多い傾向にあります。

また、インターネットで収集した情報は、表計算ソフトで整理しておくと、あとから引用元を確認できるほか、将来、同様のリサーチを行うときに参考にできて便利です。

インターネットで収集した情報を一覧表に整理した例

3.自社で得られる情報を活用する

必要に応じて、自社の財務データや商品・サービス情報、顧客情報などの資料を関係部署から入手しましょう。また、社内で関係者にヒアリングしたり、社員にアンケート調査を行ったりして情報を得る場合もあります。

集め過ぎは非効率? 情報収集はほどほどに
「適切な情報を選ぶ」という視点が大切!

情報収集の方法を決めたら、次のステップに進みます。

ステップ(2)情報収集の時間を決める

それぞれの情報収集を行うのにどれくらい時間を使うのか、次の図のように整理しておきましょう。時間の制約を設けておくことが、効率化するポイントです。

情報収集を計画表に整理した例

ステップ(3)情報収集を実行する

いざ情報収集を始めると、ついつい時間を忘れて没頭してしまうことがよくあります。タイマーなどを使って、時間を決めるのも一つの手です。もっとも、時間を区切っているからといって、中途半端に終わらせては本末転倒です。途中で時間切れとなった場合は、計画を修正し継続します。

ただし、何度も修正を繰り返しては、計画の意味がありません。「修正は一度まで」と決めておくといいでしょう。「もう少し探せば、よい情報が見つかりそう」くらいのところでやめておくことが、実は情報収集では大切です。

情報の集め過ぎは、非効率化を招くからです。情報は、集めたら終わりではなく、資料に落とし込む必要があります。情報量が多いと、読むにも選り分けるにも時間がかかります。また、集めた情報は使いたくなってしまうものですが、情報量の多過ぎる資料は、読み手にとって理解しづらくなります。分かりやすい資料を作るには、相手にとって適切な情報を選ぶという視点が欠かせません。情報収集は、ほどほどにしておくのが賢明です。

実際に情報収集にかかった時間は、計画表の横にメモしておき、最後に振り返りましょう。どの作業にどれくらい時間がかかるのかというタイムマネジメントの力も鍛えられ、計画の精度向上が期待できます。

情報収集にかかった時間を計画表にメモした例

情報収集に関するスキルやノウハウを社内で教えてもらう機会は、非常に少ないと思われます。そのため、身に付けられれば、逆に大きな武器になるはずです。フレームワークを使って仮説作りをしたあとは、できるだけ高品質かつ高効率に情報収集を行いたいものです。

ストーリーを作成し、スライド情報の仮説を作り、情報収集を行ったら、次は、いよいよ具体的な内容をスライドに落とし込んでいきます。次回は、スライド全体の構成とストーリーを明確にする「スケルトン」の作成方法などについて詳しく解説します。

PROFILE

松上 純一郎まつがみ・じゅんいちろう
同志社大学文学部卒業、神戸大学大学院修了、英国University of East Anglia修士課程修了。外資系コンサルティングファームからNGOに転じ、現在は株式会社Rubato代表取締役を務める。自身のコンサルティング経験に基づいて行う、資料作成の講座が好評を博す。著書に『PowerPoint資料作成 プロフェッショナルの大原則』『ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた』など。

記事公開:2022年4月