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5分でわかる 仕事効率化のツボ

アウトプットに圧倒的差を生む、仕事を効率化するポイントを紹介します。

vol.4

仕事の「Must」と「Want」、
見分けられてる?

どんな仕事も2種類のタスクに分けられる

多くのビジネスパーソンは、経験を積んでいくなかでポジションが上がり、責任も重くなっていきます。それに伴って、仕事の量も必然的に増えていくものです。第1回から述べている通り、すべての仕事を片付けながら残業をしないためには、ムダな仕事に時間を使わないことが重要です。

そのためには、自分の目の前にある作業が「必ずやらなければならないこと(Mustタスク)」と「やったほうが望ましいこと(Wantタスク)」のどちらであるかを、作業に取りかかる前にしっかりと見きわめて判断するのが重要です。

例えば、会議のための資料作成は「Must」である一方、Excelの機能を駆使して資料の見た目を美しくブラッシュアップする作業は「Want」です。同様に、会議の開催は「Must」で、会議のリマインドメールは「Want」となります。

「Must」か「Want」かの判断基準は、至ってシンプルです。「そのタスクをやめて困るかどうか」を考えましょう。

資料作成などに関して「丁寧に、完璧に仕上げるほうが見やすいに決まっている」と考える人がいます。この意見も決して間違いではありませんが、費用対効果に対する観点が欠落している、ともいえます。社内向けの資料を必要以上にきれいに作っても、会社の本業に与える影響は非常に微弱です。

さらに、仕事が遅い人のなかには、Wantタスクに時間をかけすぎてしまい、Mustタスクに手が回っていない人がいます。どんなにきれいな資料を作れたとしても、それが会議に間に合わなければ本末転倒です。業績アップや売り上げにつながらないムダな仕事となり、そういうことを繰り返している限り、いつまでたっても効率化は望めません。

第1回でも、効率化とは、「やめる」ことであると説明しました。Wantタスクに分別できたタスクは、積極的に「やめるべきこと」を探してみましょう。

「付随業務」のWantタスクから見直す

とはいえ、「Wantタスクをすべてやめてしまえ」と言いたいわけではありません。Wantタスクの効率化に取り組むうえで大事なのは、その優先順位を見きわめることです。

「優先順位とよく言うけど、どれもこれも同じくらい大事なんだ」と思ってしまう人も少なくないでしょう。このようなときにヒントとなるのが、「主業務」と「付随業務」という考え方です。

「主業務」とは、自分の仕事のメインとなる業務で、価値を生み出す仕事を指します。営業職であれば、取引先と商談を進めて売り上げにつなげることであり、プログラマーなら、プログラミングの作業が主業務です。

それに対して、「付随業務」とは、大まかにいえば「主業務」以外の仕事を指します。具体的には、会議、日報の作成、交通費の精算、送付状やあいさつ状の作成、社内回覧物の確認などです。

「主業務」「付随業務」のいずれにもMustタスクとWantタスクがありますが、効率化を進めるうえでは、付随業務のWantタスクから見直しに着手する必要があります。

例えば、「請求書の発行」は「付随業務」のMustタスクなので削減できませんが、それに丁寧な送付状を付けても利益につながらないし、付けなくても問題ありません。つまり、送付状の添付作業は「付随業務」におけるWantタスクであり、最優先で見直しの対象とすべきだということです。

真っ先に見直すべき業務とは?

部下に過度の「Want」を押しつけない

自分の仕事のMustタスクとWantタスクを見きわめて効率化を図っていく一方で、部下をもつ人が自戒しておくべきことがあります。それは、過度の「Want」を部下に押しつけることです。

例えば、部下の作成した社内文書などを見て、書体や文字サイズ、罫線などの用い方に関して、自らの「好み」で修正や変更を要求するケースがあります。
「何も指摘できない上司は無能」という強迫観念から、本筋とは関係ない文書の体裁ばかりを上司が指摘して、部下にムダな書き直しに時間を使わせているのです。

社内文書は、最低限読めれば十分です。社外向け文書ならまだしも、社内向けのものにそこまで時間をかけるのは、生産的とはいえません。電子メールでは、書体も文字の大きさも一種類しかないにもかかわらず、だれも困らないのが何よりの証拠だといえるでしょう。

自分がこれまで上司から指導されてきたという理由だけで、深く考えずに無意味な仕事を部下に押しつけることは、効率化の敵です。よかれと思ってやっていることが非合理的な結果を生み出していないか、部下に仕事を与える都度、振り返ることが重要なのです。

PROFILE

各務 晶久
各務 晶久かがみ・あきひさ
株式会社グローディア代表取締役。特定非営利活動法人人事コンサルタント協会理事長。中小企業診断士。大阪市人事に関する専門委員、大阪市特別参与、大阪商業大学大学院非常勤講師などを歴任。著書に『人材採用・人事評価の教科書』(同友館)、『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』(朝日新聞出版社)、『会社では教えてもらえないアウトプットがすごい人の時短のキホン』(すばる舎)など。

記事公開:2021年8月