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5分でわかる 仕事効率化のツボ

アウトプットに圧倒的差を生む、仕事を効率化するポイントを紹介します。

vol.5

都合の悪いことほど口頭で?
「電話連絡=時代遅れ」の罠。

連絡手段の優先順位、メールを一番にしていない?

「メールの処理に追われて次の仕事にかかれない!」
「メールでやりとりをしているうちに午前が終わってしまった……」
こんな経験をしている人は少なくないはずです。

私がコンサルティング業務で、ある会社の営業職の作業時間を分析した結果、メールに費やす時間が在社時間(外出を除く)の4分の1、管理職にいたっては3分の1にもなっていることがわかりました。きっと、あらゆる職場でも、驚くほど多くの時間をメールに奪われているに違いありません。

では、なぜビジネスパーソンは、それほどメールを多用するのでしょうか?
実際にオフィスで働く人たちに聞き取り調査をしてみたところ、2つの主な理由が判明しました。

1つ目は、相手と接しなくても済むため。
社内外を問わず、顧客であれ、上司であれ、対人接触は緊張を伴うものです。相手の反応が気になる交渉や報告などの場面において、「できれば直接的な対話は避けたい」という心理が働き、口頭や電話より、メールでの連絡を優先してしまうようです。

そして、もう1つは、「仕事をしている気」になるため。
電話連絡は、長引くと早く切り上げるように周囲から注意されかねません。しかし、メール作成に時間をかけていても、表面的には問題なく仕事をしているように見えるので、文句を言われることはまずないでしょう。自分自身もメールにたっぷり時間をかけたことで、どこか仕事をした気になってしまうのだと思われます。

前回お伝えした通り、連絡業務は多くの職種にとって「付随業務」です。自身の仕事としての価値を生むものではありません。
何かとメールを使うのをなんとなく習慣化してしまっている人ほど、自らの行動が、本当の意味で価値を生むもの、会社に貢献するものになっているのかを振り返るべきなのです。

まずは口頭連絡の有効性を知って、活用を心がけよう

仕事の効率化を進めるうえで、口頭による連絡の活用がいかに有効か見てみましょう。

一般的に、口頭で3分間話すと、1000字程度の文字数になります。一方、文字を入力するタイピングの場合、早い人でも1分間に100文字程度が限界です。口頭による3分間の報告を文字に起こすとなると、10分程度の時間がかかる計算になります。
さらに、微妙なニュアンスを表現に入れながら、全体の構成を考え、きちんと意図が伝わるものになっているか推敲していたら、優に20分程度は文章作成にかかると考えられます。

つまり、すべてメールで連絡している人は、口頭なら3分で済ませられることを、20分かけているわけです。「一向に仕事が片付かない」といった状況が生まれるのも無理はありません。

さらにいえば、メールで報告した内容に対して、「詳しく聞きたい」などと上司に呼ばれ、再び口頭で伝える結果になり、メールにかけた時間が完全にムダになるおそれすらあります。

昨今「メールのほうが連絡手段として新しくスマートで、電話連絡は古い」というイメージを抱きがちですが、謝罪が必要な状況や、込み入った事情が絡むケースなど、複雑な内容ほど、文字だけで的確に伝えることが難しくなるのです。

仕事の効率化を進めたいと思ったら、ぜひメールに費やす時間を見直して口頭に切り替えてみてください。習慣として身に付いてしまった行動を改めるのは簡単ではありませんが、やる価値はあります。

メール習慣を見直すポイントは、3点挙げられます。

1つ目は、受信ボックスをチェックして、込み入った内容のものから順に口頭連絡(電話連絡も含む)すること。

2つ目は、上司への報告を口頭に切り替えること。
報告内容を文章にまとめるとか、他の人と共有するよう指示されたら、その時点で文書を作成するようにします。この場合も上司への報告でポイントとなった箇所を重点的に書けばよいので、ゼロから書き上げるよりずっとスムーズです。

3つ目は、メールより先に口頭連絡から始めること。
ついついメール作成や返信から着手してしまいがちですが、口頭で連絡が可能なのは基本的に相手の勤務時間内に限られます。まず口頭連絡から始めるようにしましょう。

連絡の優先順位としては、次の通りです。
①社外への電話連絡 ②社内の他部門への電話連絡 ③自部門への口頭連絡 ④メール

また、もしも電話で相手がつかまらない場合でも、すぐにメールに切り替えるのは我慢しましょう。急ぎの用件でなければ、電話をかけ直すようにします。
相手に折り返しの電話を依頼できる立場であれば「電話で伝えたいので、何時頃に電話をしてほしい」と伝言を頼んでもよいでしょう。

メールの時間を削減するには?

どんなときでも、目的に合ったコミュニケーションツールを選び取ろう

時短という点に関しては口頭連絡より不利なメールですが、もちろん活用メリットはあります。

  • 一度に多人数に送信できる
  • 日時、金額などの連絡に関して、伝達ミスを防げる
  • 地図や画像などを添付することで、口頭では伝えにくい内容を示せる
  • 添付ファイルで大量の文書を一気に送れる
  • やりとりの記録(証拠)が残せる

上記のメールならではの特性を生かせる状況であれば、メールの活用は有効ですし、効率的でもあります。

また、打ち合わせは口頭で行い、そこで決まった内容を、自身の覚書や関係者との共有のためにメールで後から送る、といった具合に、口頭とメールのよさを組み合わせるのも手です。

要は、一つの手段に固執せずに、目的に合わせて連絡手段を使い分ける、あるいは組み合わせるのが肝心といえます。効率化を進めるにあたっても、柔軟な考え方と、臨機応変な行動は常に心がけましょう。

また、このところのテレワークの推進で、オフィスでの口頭連絡が難しくなるなど、これまでとは勝手が異なる場面も増えてきました。あわせて、チャットツール、Web会議ツールの利用も一気に広まった感があります。

こうしたツールとの付き合い方に困惑している人も多いかもしれません。「なんでもチャット」「なんでもWeb会議」になってしまっている人もいるでしょう。しかし、効率化の基本の考え方は変わりません。連絡内容に一番適したツールを、適切に使うこと。これが第一です。どんな環境でもコミュニケーションを円滑にとるために、適切なツールの選択と活用を目指していきましょう。

PROFILE

各務 晶久
各務 晶久かがみ・あきひさ
株式会社グローディア代表取締役。特定非営利活動法人人事コンサルタント協会理事長。中小企業診断士。大阪市人事に関する専門委員、大阪市特別参与、大阪商業大学大学院非常勤講師などを歴任。著書に『人材採用・人事評価の教科書』(同友館)、『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』(朝日新聞出版社)、『会社では教えてもらえないアウトプットがすごい人の時短のキホン』(すばる舎)など。

記事公開:2021年9月