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5分でわかる 仕事効率化のツボ

アウトプットに圧倒的差を生む、仕事を効率化するポイントを紹介します。

vol.8

ペーパーレス時代にあえて紙?
アナログが非効率とは限らない理由。

紙ファイルの読みやすさを侮ってはいけない

例えば、上司から以前の業務に関する資料を用意するよう指示されたとき、プリントアウトしたものを持っていくのが当然のようになっているということはないでしょうか。本来なら、サーバーにアクセスして該当するフォルダを見つけ、その資料データのありかを伝えればいいだけの話では?と思ってしまいますよね。

ところが、ベテラン上司はなぜか紙のファイルを欲しがります。紙の資料をめくって読んでいる姿は、若手社員からすれば、「アナログ感全開」な印象かもしれません。もっと言えば、「時代遅れで非効率なやり方」に感じられてしまうかもしれません。

しかし、よく観察してみてください。紙のファイルを受け取った上司がパラパラと資料をめくったかと思うと、それをもとに部下に直ちに指示をしたり、すぐにあなたに質問を投げかけたりしてくるといった経験がある人も多いのではないでしょうか。

これはどういうことかといえば、「アナログ=非効率」と一概に決めつけられるものではなく、紙ファイルの書類が実は、デジタルデータに比べて「一覧性」の点で優れているという一例を表しています。

つまり、紙の資料なら素早く自由にめくり一気に何十ページも、時には何百ページも飛んで次々と目指す情報を感覚的に探すことができるのです。これに対して、デジタルデータだとサーバー内の該当するファイルを探して、目的の部分を見つけるたびにいちいちクリックして開かなければならず、手間がかかります。

特に調べものをする場合、一覧性に優れていることから、重要な箇所同士を手軽に行き来しながら確認しやすい紙ファイルは、デジタルデータよりも効率的といえます。

紙ファイルは仕事の流れを把握しやすいというメリットも

また、仕事全体の流れが理解しやすい点も、紙ファイルの大きなメリットとして挙げられます。

例えば新しい仕事を引き継ぐ際には、紙のファイルならページをめくりながら読んでいけば、業務の大まかな流れはつかみやすいでしょう。これをデジタルデータでやろうとした場合、ファイルを一つずつクリックして開いては、画面をスクロールしつつ読んでいかなくてはなりません。実際にやってみると、思っているよりも根気のいる作業です。

しかもデジタルデータの場合、時系列に沿ってデータが保存されていなかったり、どのファイルが最終版なのか分からなかったりというケースも起きやすく、全体の流れがますます分かりにくくなります。ファイル名が適切でないと、目的の資料にたどり着くのも一苦労です。紙ファイルなら瞬時にできる読み飛ばしも、デジタルデータでやろうとすると手間がかかります。

そういった意味で、「○年度展示会」や「○年度新商品発表会」といったひとまとまりの業務に関しては、紙の資料でファイリングしておくと大幅な時短が可能になります。

もちろん、デジタルデータにもメリットはあります。例えば、キーワードや書類作成日などからファイルを探せる「検索性」、物理的な保管場所を必要としないことによる「保管コストの抑制」、サーバーに保管するため「紛失や劣化に関して低リスク」などが挙げられます。

誤解のないように申し添えておくと、「何でもかんでも紙で保管するのがよい」と言うつもりはありません。その一方で、「ペーパーレス=効率化」とも言い切れません。どちらかに絞るのではなく、それぞれの長所を見極めながら併用するのが得策なのです。

本連載vol.5で述べたように、電話と電子メールの対比にしても「電話は連絡手段としては古い。メールの方がよい」などと考えがちですが、口頭連絡にも優位性があり、状況に応じてメールと使い分けをする方がよいのです。

仕事の効率化を考える上で最も避けなければならないのは、「時代遅れだから、非効率」などと、よく考えもせずに決めつけてしまう態度だと心得ましょう。

紙ファイルとデジタルデータの特性の違い

昨年の手帳は効率化に大いに役立つ

個人のスケジュール管理には、パソコンやスマートフォンで管理する場合も多くなっていると思いますが、「手帳」を使っている人も多いのではないでしょうか。

仕事の効率化という観点からいえば、昨年のスケジュールを確認して効率化に役立てているかどうかが大切です。ログとして、1年単位で残しておける昨年の手帳には時短のヒントがつまっています。

例えば前年のスケジュールを確認してみたとしましょう。人事部門であれば、入社式、新入社員研修、会社説明会、社会保険の年次更新手続きなどは、必ずといっていいほど次の年の予定にも入ってくるはずです。1年の流れが理解しやすくなるので、毎年決まっている予定はあらかじめ入れておくといいでしょう。予定が見えていればスケジュールに追われなくなります。

「営業職なので昨年のスケジュールは関係ない」と思っている人でも、それを確認するだけで、自分自身の繁忙期や閑散期の目安が見えてくるはずです。昨年、何が原因で忙しかったのかを見つめ直す機会があれば、事前に準備ができるので業務を効率化できるチャンスになるのではないでしょうか。

例えば、昨年の個人スケジュールについて月を追って見返す際に、手書きの手帳の方が振り返りやすいという人は、効率化の観点から手帳を活用してみるのも一つの手です。

スマホ時代にあえて手書きの手帳?と疑問に思うかもしれませんが、前述の紙ファイルと同じように、手書きの手帳は俯瞰(ふかん)しやすいことが大きなメリットです。一覧性に優れているので全体の姿や流れをつかみやすく、ページをめくりながら、月間スケジュールを確認しつつ1カ月単位や1日単位で予定を記入できるといった使い方ができます。

また、自分の字で書くことによって、頭の中が整理されたり、記憶に残りやすかったりするほか、全体を見渡せるので直感的に使えるでしょう。電話をしながらスケジュールを確認したり、メモや予定を書き込んだりする場面は多いはずです。こうした使い方ができるのも手書き手帳のよさといえるでしょう。

PROFILE

各務 晶久
各務 晶久かがみ・あきひさ
株式会社グローディア代表取締役。特定非営利活動法人人事コンサルタント協会理事長。中小企業診断士。大阪市人事に関する専門委員、大阪市特別参与、大阪商業大学大学院非常勤講師などを歴任。著書に『人材採用・人事評価の教科書』(同友館)、『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下』(朝日新聞出版社)、『会社では教えてもらえないアウトプットがすごい人の時短のキホン』(すばる舎)など。

記事公開:2022年2月