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分かりやすい!説明のコツ

分かりやすく説明する「型」やポイントを紹介します。

vol.06

OKがもらえるコツとは?
「オファー」「TAPS」の型でお願いや提案を通す!

相手に「動いてもらう」説明の秘訣とは?

本連載第1回で説明したように、この連載では、相手に「説明を聞いてもらう」だけでなく、その説明によって相手の「行動変化」を促し、変化した行動を「持続させる」ための方法について紹介しています。

今回紹介するのは、相手に「動いてもらう」ため、つまり「行動を促す」ための説明のコツです。説明の目的はいろいろありますが、相手を説得し、動いてもらうために、「なぜそうすべきか?」を説明するケースも少なくありません。

その場合、たとえこちらの思いや意図を理解してもらったとしても、相手に動いてもらわなければ、目的を果たせたとはいえません。では、どうすれば相手に「動いてもらえる」ように説明できるのでしょうか?

今回は、それを可能にする説明の型として、「オファー」の型と、「TAPS」の型の2つを紹介します。

お願いするときに便利な「オファー」の型

まずは「オファー」の型です。これは、自分から相手に対し、何らかのお願いをしたいときに有効な説明の型です。

例えば、次のようなステップで会話を進めてみましょう。

ステップ1 お願いするテーマを伝える
「会議の日程調整についてお願いがあります」
ステップ2 具体的なお願い事(結論)を伝える
「お願いというのは、日程調整アプリを使っていただきたいということです」
ステップ3 現状の問題点を、相手が自分のお願いを聞き入れる判断材料として提示する
「現状は参加者の日程を聞いて調整していますが、メンバーの日程がなかなか合わずここ数日間調整に努めています。まだ数名と確認中で、日程の確定にはもう少し時間がかかる見込みです」
ステップ4 自分が到達したい状態を伝える
「私は、もっと効率的に日程を決めたいと考えています」
ステップ5 相手の意向を聞く
「ご検討いただけそうでしょうか?」

ステップ1は、会話のテーマを示し、相手に心の準備をしてもらうためのステップです。

大切なのは、次のステップ2です。「どうしてほしいのか?」という結論を先に伝えます。この例では、「日程調整アプリを使ってほしい」という要望を、まず知ってもらうわけです。

ステップ3では、現状の問題点を、相手が自分のお願いを聞き入れる判断材料として提示します。なるべく客観性の高い事実を伝えることがポイントです。

さらにステップ4では、お願い事を聞き入れてもらうことで、自分が到達したいと考えている状態を伝えます。自分がどのような状態を目指しているのかを簡潔に伝えましょう。

最後のステップ5は、相手の意向や考えを聞くための問いかけです。

この「オファー」の型の説明をスムーズに進めるためには、先に会話の全体像を整理しておくといいでしょう。現状(ステップ3)と、自分の目指す理想の状態(ステップ4)を一枚の図として頭の中にイメージしておくと、より相手に伝わりやすく、順序立てて説明できるようになるはずです。

全体像を整理した例

相手に提案を通す「TAPS」の型

「オファー」の型は、自分の要望を相手に聞き入れてもらうための説明の型です。これに対し「TAPS」の型は、相手が抱える現状の問題点を指摘し、それに対する解決策を提示することで、相手自身に変化を促すための説明の型です。

「TAPS」とは、To be(あるべき姿)、As is(現状)、Problem(問題点)、Solution(解決策)の頭文字をとった言葉です。「TAPS」の型では、この4つの頭文字の順番どおりに説明を進めていきます。

ステップ1 相手のあるべき理想の姿(To be)を確認する
「当社の目指すべきところは、『これまでにない商品』をお客さまに提供することだったはずです」
ステップ2 問題を抱えた現状(As is)を指摘する
「しかし、昨年発売した商品の約○%は売れている製品を模倣したような商品が中心となっています」
ステップ3 問題点(Problem)を指摘する
「これは、商品の開発方法がマンネリ化しているためでしょう」
ステップ4 解決策(Solution)を提示する
「ですので、ユーザーを招待した開発会議をしたいと思います」

4つのステップの中で、特に注意が必要なのがステップ2です。なぜなら、問題を抱えた現状の指摘というのは、相手にとって最も耳の痛いことだからです。そのため、このステップではなるべく客観性の高い事実に基づいた情報を提示し、最大限簡潔に問題点を伝えるようにします。

相手の気持ちを尊重するような言葉を散りばめることも、空気を悪くしないためのコツです。私の場合、特定の個人や企業の方に提案する際には、「もったいない」というフレーズをよく使います。「御社が○○(問題を抱えた現状)になってしまうのは、非常にもったいないことだと思います」といったように付け加えることで、柔らかく受け取ってもらいやすくなるでしょう。

「TAPS」の型で説明をする際にも、「オファー」の型のときと同じように、頭の中に一枚の図を描いて話の順番や内容を組み立ててみるといいでしょう。

説明の順番や内容を整理した例

これらの型を意識することで、説明の説得力が増し、相手に「OK」をもらいやすくなるはずです。ぜひ、日常の仕事で試してみてください。

わかりやすい説明のコツ

分かりやすい説明のコツ

お願い事を聞き入れてもらうには「オファー」の型
提案を通したいときには「TAPS」の型が効果的

PROFILE

犬塚 壮志いぬつか まさし
(株)士教育 代表取締役。東京大学大学院学際情報学府を修了。駿台予備学校講師を経て独立。講座開発や教材作成のサポート、講師養成のプロデュース事業を開始。企業向け研修講師としての登壇実績も豊富で、「説明力」をテーマにした研修プログラムは官公庁や大企業から中小企業まで人気を博している。専門領域は、「学習」「知能」。言語化やコミュニケーション、思考法の指導を得意とする。著書に『説明組み立て図鑑』『頭のいい人の対人関係』など。
犬塚 壮志

記事公開:2025年3月